「あとで食べようと思っていたのに、またない……」。冷蔵庫の中身が気づけば消えている。何度「やめて」と伝えても繰り返される“食い尽くし”行動に、強いストレスを抱いている人も少なくありません。食い尽くし系被害は一見「食べ物の問題」に見えて、その実態はもっと根深いものかもしれません。
食い尽くされる側は本当に困っているのに、怒っても懇願しても話し合っても、食い尽くし系にはその切実な困り感や怒り、悲しみなどが伝わりづらいものです。それが続くと、される側があきらめたり疲弊してしまったり、相手との関係全体が悪化したりすることもしばしばです。
この問題は、なぜ何度言っても伝わりにくいのでしょうか?
実際の「食い尽くし系」体験をもとにした人気マンガ連載『身近な“食い尽くし系”生態記』(みつほし・画)をもとに、臨床心理士の視点から、このタイプの行動原理を読み解いていきます。
■なぜ「悪いと思っていない」のか? 食い尽くし系の認識
食い尽くし系は自分の行動にそれほど問題があるとは思っていません。悪いことをしている自覚があれば相手の反応も理解できますが、こうした行動が指摘されてもなかなかピンと来ないのは、そもそも自らの行動には問題がないと捉えているからです。
悪気がなかったとしても、相手の反応を見て行動を省みることができればいいのですが、このタイプの人は自分の価値観以外の判断基準に視点を動かすことが苦手であるため、他者との間に葛藤が起きた場合、自分の視点を変えるのではなく、問題の所在を自分から相手に置き換えることで状況を理解しようとします。
つまり、悪いのは自分の食い尽くし行動ではなく、そんなことで怒る相手であり、そんなに大した問題ではない、と捉えます。当人の中ではこれで整合性が取れてしまうため、相手の事情や気持ちには配慮できないまま、食い尽くし行動が続くことになるのです。
■「食い尽くし系」の被害エピソード
実家の冷蔵庫では、「食べないで」「●●のもの」と貼り紙を貼っておくのが鉄則です。それをし忘れると、夜中に父親が勝手に食べ尽くしてしまうから……(※『身近な食い尽くし系生態記16話より』)
✅この、母のひとことは? →→続きは漫画で読む
■「やめて」が届かない―食い尽くし問題のすれ違い
食い尽くされる側としては、後で食べるはずだったものがなくなってしまい、食事メニューの変更や再度の買い物を余儀なくされるなどの具体的な困りごとはもちろんですが、食べる楽しみを奪われる、何度やめてと伝えても同じことが繰り返されるという、こちらの気持ちや存在を軽視されているような被害感を抱かされます。これはとても苦しいものです。
一方、食い尽くし系にとっては、自分が食べたいから食べる、ただそれだけであり、「みんなも食べたければ食べればいいのに」とか、「残っていたから傷む前に食べておいてあげた」とさえ思っていることもあります。
これだけ大きな認識の差をふまえると、「やめて」「食べないで」と伝えるだけでは改善は難しく、これは食べ物だけの問題ではなく、他者との間にあるはずの境界線を侵害しているという人間関係の問題なのだと理解してもらう必要があります。
■食べ物だけの問題でなく、“境界線の問題”として考える
このように、食い尽くし行動には、単なる食欲やマナーといった食行動だけの問題ではなく、人間関係の境界線や認識のズレが関わっていると考えられます。
表層的な行動の問題ではなく、それまで培ってきた価値観や対人関係の持ち方も大きく関連しているがゆえに、簡単な指摘では改善しがたい問題でもあります。もう諦めるしかないのだろうかと悩んでいる被害者も少なくないことと思いますが、特定の疾患や特性に直結する行動ではなく、一方的に諦めや理解を示さなくてはならないわけでもありません。
では、どうしたら、こうした行動を見直していくことができるのでしょうか。次回は、食い尽くし行動を見直すための具体的な対策について考えていきます。

\他人の食べ物まで食べ尽くす…/「 食い尽くし系」の実態とは!? ✅『身近な「食い尽くし系」生態記』全話を一気読み

