「毎日のように怒ってしまう」「言うことを聞いてくれなくて困る」「夫(妻)と育児方針がかみ合わない」……などなど、育児に悩みは尽きません。特に、毎日忙しく過ごしている共働き夫婦なら尚更でしょう。

ここでは、育児中のマイナビニュース会員に"育児の悩み"についてアンケートを実施。寄せられたお悩みに対して"どのようにすべきか"を、NHKの育児番組でキャスターを務めた経験を持ち、現在は育児のセミナー講師や書籍執筆なども行っている天野ひかりさんに、アドバイスしてもらいます。

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  • 子どもの習い事を選ぶときに大切なことは?


新年度に向けて、習い事選びに悩む方も増えているようです。親としては、口コミやネットで調べても子どもがやらなかったらどうしようなど、なかなか決断するのが難しいですね。

そこで今回は、「将来のことを考えると子どもにいろいろ習わせてあげたいと思うのですが、自分が小さい頃習ったことは結局身になっていない気がします。どのように選んだらいいのでしょうか」というご相談に、親子コミュニケーションアドバイザーがお答えします。

習い事の目的は「努力の方法を学ぶ」ため

お子さんに何が最適な習い事なのか、もしかしたらすごい才能を見逃すことになったら申し訳ないなど、習い事の悩みはつきものです。でも、安心してください。本当に才能のあるお子さんは、親が何もしなくても自分でその道にのめり込み、努力し続けるものだからです。

私は職業柄、世界で活躍するアスリートや芸術家にインタビューする機会が多いのですが、子どもの頃の話を聞くと、その頃から違うのだとわかります。

「小学生の時にラジオから流れてきたバイオリンの音色に雷を打たれたような衝撃を感じ、親を半年かけて説得して始めた」とか、「中学まで別の種目のスポーツをしていたのに、憧れの選手を見て転向して努力を続け、遅咲きで成功した」といった小さい頃に親に習わされたかどうかは関係ない方がほとんどでした。

こういった話を聞くと、子どもの将来のために習わせなきゃと親が焦る必要はなさそうですね。そこで、習い事をする目的を変えてみましょう。

"そのスキルを身につける"というより、"できるようになるための努力の方法を習うため"と考えれば、少し気が楽になるのではないでしょうか。努力する方法を身につけられれば、生涯にわたって何にでも発揮できるようになります。

何を習うかよりも"誰に習うか"が重要

つまり、何を習うかよりも"誰に習うか"の方が重要です。なぜなら、努力したいと子どもが思えるような魅力的な講師や仲間に恵まれるかによって、習得できるかどうかが変わるからです。

例えば、ピアノを習うとします。
(1)ピアノを弾けるようにする技術を厳しく教え込んでくれる先生
(2)ピアノの楽しさを一緒に共有して好きにさせてくれる先生

みなさんならどちらの先生を選びますか。子どもを一流のピアニストにするなら(1)かもしれませんが、そもそも才能のある子どもならどちらでもスキルアップするでしょう。そして、私もそうでしたが、一般的には叱られながら指の体操をしても、好きにはなれない気がします。まずは、楽しさ・奥深さ・自分にもできると思わせてくれる先生に習いたいですね。

親と講師がタッグを組んで役割分担できる場合は、(1)を講師、(2)を親が請け負うこともできるかもしれません。どちらにせよ、子どもが「楽しい」「続けたい」と思えるようにスタートできるところを選びましょう。

子どもがピアノの楽しさがわかっても、家で地味に練習することが苦手な場合は、課題曲を先生が順番通りに決めるのではなく、子どもが弾きたい曲を決めて取り組めるような柔軟性のある教室を選ぶといいと思います。

決められた課題曲では練習しないお子さんも、好きな曲なら努力を惜しまずに頑張れるはずです。続けていけば、子どもは努力する方法を身につけ、その後の課題曲も練習して弾けるようになっていくでしょう。

習い事を親が決めない

習い事を選ぶうえでしてはいけないことは、親が決めることです。社会人を対象に子どもの頃の習い事について聞いたところ、親に決められた習い事については後悔している人が多い結果になりました。

「嫌だった」「時間の無駄だった」「身になっていない」「大嫌いになった」など習わせてくれたことに感謝はしているとのことですが、なかなか良い印象はお持ちでないようです。

一方で、良い印象で共通しているのは、自分(子ども)自身が決めた習い事の場合です。とはいえ、小さい子どもが自ら「◯◯したい!」ということは、あまりないかもしれません。

まずは、発表会や試合を見に行ったり一緒に体験してみたりして、お子さんの気持ちを確かめるところから始めましょう。親が習わせたいものや評判がよい教室に行かせるよう子どもを誘導したりせず、お子さんの気持ちを聞きましょう。

親「A先生のピアノ素晴らしかったね!」
親「B先生はあなたのお話をたくさん聞いてくれたね」
親「C先生は発表会に力を入れてるんだって。」
子「うん」
親「どの先生と練習したい?」
子「C先生が優しかったし、面白かった」
親「C先生はあなたの好きな曲を弾けるようにしようっておっしゃってたね」
子「うん!」
親「歩いて行けるし曜日も選べるから学校が終わってから行けるね」

上記の会話のように、子どもが選ぶポイントを整理してお話しできるといいですね。

お子さんが決めたとしてもうまくいかない場合もあります。しかし、努力する方法を模索するためだと思えば、やらせてできるようにするよりも、どんな時に子どもがやる気になるのかや、どんな言葉で乗り越えられるようになるのかを知ることができ、有意義なものとなるでしょう。

親子でいっしょに努力できるようになる、それこそが身に付けたい力なのではないでしょうか。