「こんな女性上司がいたら、どんなに生きやすいだろう!」

韓国には日本以上に男性優位の家父長制度が根強く残っていて、2018年以前の韓ドラに登場する女性は、男性にも社会にも従順であることが求められていました。しかし2018年、韓国で#MeToo運動が一気に広まって以降、ドラマで描かれる女性の姿は変化し、社会的地位があり、意見をはっきり言える登場人物が増えたように思います。

  • イラスト/みつほし

社会の動きを即座に反映するスピード感はさすがです。そのおかげで、それまでは母親役としてドラマを支えていた世代が、当然のようにかっこいい社会人として活躍しているのも昨今の韓ドラあるあるです。

例えばキム・ヘス。2016年の「シグナル」でのキリッとした刑事役も印象的でしたが、2022年の「未成年裁判」では芯のある判事役として少年犯罪に真っ向から向き合いました。上司である判事の不正からも目をそらさず、過ちを正すよう意見する姿がかっこよかった。ちなみに韓国の#MeToo運動は法曹界がきっかけを作りました。2018年に女性検察官が性被害を訴えたことから一気に広がったのです。

キム・ヘスは2022年の「シュルプ」にも出演しています。「シュルプ」は現代の受験戦争を時代劇に落とし込んだフィクション時代劇。その中でキム・ヘスは、立場にあぐらをかくことなく側室たちに心を配り、権力にしがみつく姑とは真っ向から対立する型破りの王妃を演じています。組織の上に立つ人物としての理想的な立ち振る舞いが痛快です。

ソウル市長の選挙を巡る社会派ドラマ「クイーンメーカー」も、主要人物は女性が多かった。その中でもムン・ソリは人権弁護士として弱い立場の人たちのために権力と戦っています。ソウル市長を目指して清濁併せ呑む必要を迫られても信念を曲げることなく、理想的な指導者の姿を見せてくれました。ひとりの人間として、家庭を持つものとしての弱さや揺れも描きながら、社会的責任も果たそうとする強さが印象的です。

ムン・ソリは、2023年放送の「私たちの人生レース」では米国で活躍する広報業界最高の専門家として登場。体質の古い大企業で奮闘する主人公のロールモデルとして、明るい未来を見せてくれる頼もしい存在です。

設定は少し違いますが、2014年の「ミセン—未生―」でのカン・ソラ演じるアン・ヨンイは、どれだけ優秀でも男性社会の大企業で出世していくのは絶望的に難しかった。それを思うと、女性のパワーが大企業の体質を変える物語が生まれること自体に、時代の流れを感じます。

現実はまだ追いついてはいなくても、単なるファンタジーではなく、手が届きそうな理想として、韓ドラの世界で女性が活躍していくのです。

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