三菱自動車工業が2021年12月に発売する新型「アウトランダー」のPHEV(プラグインハイブリッド)モデルは、立派な(けっこう大きな)見かけであるにもかかわらず俊敏かつ軽快に走る気持ちのいいクルマだった。ただ、このクルマの特徴となる「3列目シート」と「充電」については、購入前によく確認しておく必要がありそうだ。

  • 三菱自動車の新型「アウトランダーPHEV」

    三菱自動車が12月に発売する新型「アウトランダー」のPHEVモデル。新色の「ブラックダイヤモンド」(中央)が追加となった

PHEVはゴージャスかつ便利な乗り物だ

アウトランダーは2001年に三菱自動車が発売したクロスオーバーSUVで、2013年にはPHEVモデルが追加となった。PHEVは世界累計で約29万台が売れているそうだ。

PHEVというのはエンジンもバッテリー(普通のハイブリッド車よりは大容量の)もモーターも積む贅沢なクルマだ。ガソリンを給油してエンジンで走ることも、エンジンで発電した電気で走ることもできるし、バッテリーを事前に充電しておけば、電気自動車(EV)のように電気だけで走ることもできる。つまり、買い物や通勤はバッテリーに溜めた電気だけで走って済ませ、遠出する際には電気+ガソリン(ハイブリッド)で走る、といったような使い方ができるのだ。新型アウトランダーPHEVはフル充電だとバッテリーだけで83~87キロ(WLTCモード)を走行可能。フル充電でガソリン満タンだと計1,000キロくらいは走れるらしい。

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    ボディサイズは全長4,710mm、全幅1,860mm、全高1,745mm。これだけ横幅があると、狭い道路では少し気になるかも?

新型アウトランダーPHEVのプロトタイプには袖ヶ浦フォレストレースウェイ(千葉県袖ケ浦市)というサーキットで乗らせてもらったのだが、感想メモには「EVみたいに俊敏。2トンちょいのクルマが軽々と走るのは驚き!」と書いてあった(自分で書いた)。EVのように回生ブレーキの効き具合を自分で調節できて、強めの設定にすればアクセルペダルを戻すだけでググっと減速してくれるのも楽だった。ブレーキとアクセルを踏みかえる回数が大幅に減るからだ。

ちなみに、淡白な感想になってしまった理由としては、クルマの走りを「味わう」ほどの知見と腕前が自分にないせいもあるが、たったの1周しか走っていないことも大きい。というのも、サーキットで試乗する場合、2~3台が間隔を十分にとってコースインすることが多いのだが、同時に試乗する人たちはモータージャーナリストの皆さんや自動車メディアの方々なので運転がうまくて速く、私も頑張ってはいるのだが渋滞の原因になりがちなので(追い越し禁止なので)、とてもではないが気が引けて、サーキットを何周もする気にはなれないのだ。サーキット走行自体はとても面白いのだが……。なので、試乗の印象については自動車ライターさんに書いていただいた記事もご覧になっていただきたい。

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    この記事の写真は全て、三菱自動車が用意してくれたオフィシャル素材です。それと、写っているクルマを運転しているのは紙ドライバーではありません

充電環境の有無と3列目の使用頻度は要チェックだ!

試乗後に開発陣に話を聞いた中で、気になる点が2つあった。PHEVで大事な「充電」に関することと、ユーザーから期待する声も多かったという「3列目シート」に関することだ。

まずは「充電」について。新型アウトランダーPHEVは普通充電と急速充電に対応しており、ガソリンが入っていればエンジンを回してバッテリーを充電することもできる。ただ、自宅でクルマを充電できない人は、このクルマの恩恵を存分に受けられないのではないだろうか。というのも、「普段は電気、遠出は電気+ガソリン」というPHEVならではの便利な乗り方は、自宅に充電環境があってこそのものだと思うからだ。

マンションや社宅などでは勝手に充電設備を取り付けられないと聞くので、そこらがネックになる気がする。「このクルマの見た目や走りが気に入ったけど、自宅に充電設備は設置できない。だから、ガソリンエンジンのみを搭載するモデルが欲しい」と考える人もいると思うが、日本でガソリン仕様は販売されない。

この点について開発陣は、「そこは正直、悩ましいところです」と率直に認めつつ、「戸建てにお住まいの方やガレージをお持ちの方にとって、(充電設備の設置は)そんなにハードルは高くないと思うのですが……。ただ、会社の規模、客層、現行車の販売実績(先代モデルの販売は、PHEVの割合がかなり大きかったそう)などを踏まえて、こういうグレード構成に決めました」と話していた。

「チャージモード」にすればガソリンを使ってエンジンが発電し、バッテリーを80%まで充電してくれる。なので、自宅で充電できなくてもEVのような走りは楽しめるのだが、これだとなんとなく、二度手間のような気がしなくもない。新型アウトランダーPHEVを買ったらどんな使い方、乗り方ができるかについては、お住まいのことも含め、事前によく考えておいた方がよさそうだ。

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    充電中の新型「アウトランダーPHEV」。クルマに蓄えた電気は家電を動かすことにも使えるし、専用の機器を使えば家まるごと1軒に給電することも可能だという。ガソリンさえ入れておけば発電できるわけだから、災害時などには「動く蓄電池」としての活躍も期待できそうだ

次は「3列目シート」について。先代アウトランダーはガソリンエンジン車とPHEVをラインアップしていたが(ガソリンモデルは途中で販売終了)、3列7人乗りの仕様はガソリンモデルでしか選択できなかった。開発陣によれば、「PHEVが欲しいけど、7人乗りがないから……」という理由でアウトランダーをあきらめる(潜在)顧客がいたそうなので、今回の新型を待ち望んでいた人は結構いるのではないだろうか。

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    新型「アウトランダーPHEV」のグレードは上から「P」「G」「M」の3種類(462.11万円~532.07万円)。Pは7人乗り、Mは5人乗りで、Gはどちらか選べる。写真はPで標準となる「セミアリニンレザー(ブラック&サドルタン)」の内装。先代アウトランダーは内装が一部で不評(?)だったらしいが、新型の内装は質感が高く、この色づかいはオシャレだった

その3列目なのだが、実際に座ってみると、身長174cmの紙ドライバーは頭がつかえてしまった。これを開発陣に伝えると、以下のような話が聞けた。

「体格にもよりますが、160cm位までの人だと余裕をもって座れるんですけど、それ以上だと頭がつかえることもあるかと思います。常に6人以上で乗ったり、3列目を使うというよりは、普段は2列目までを使用していて、例えば子どものサッカーチームの友達であるとか、親戚の子どもなどを乗せる際に、3列目を出して使っていただくことを想定しています。常に使うシートではないという前提なので、床下に収納できて、邪魔にならないように作ってあります。いざといういう時に取り出すシート、というイメージですね」

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  • 三菱自動車の新型「アウトランダーPHEV」
  • 左が3列目シート。床下にしまえば、普段は右の写真のように床下にしまっておけば、広い荷室を使うことができる

3列目シートのあるSUVに試乗する際は必ず座ってみるようにしているのだが、これまでの経験上、3列目に余裕で座れるケースは稀で、ましてや足を組むなどということは思いもよらなかった。だから、新型アウトランダーの3列目が、とりわけ狭く作ってあるのだとは思わない。それに、3列目があるとないとでは、やはり便利さが大違いなのだろうということも容易に想像できる。なので、「3列目が狭い!」と文句をいうつもりは全くないのだが、かなり頻繁に6人以上でクルマに乗るという人は、3列目に乗るであろう人に実際に3列目を体験してもらってから、新型アウトランダーを買うかどうかを考えたほうがいい気がする。常に多人数で乗る人は、三菱自動車の愛されミニバン「デリカ D:5」を選ぶという手もある。