連載コラム『あなたの家計簿見せて! "給料減少時代"の家計診断』では、相談者のプロフィールと実際の家計簿をもとに、5人のFPが順番に、相談者の家計に関する悩みについての解決策をアドバイスします。


【相談内容】
パートの勤務先から、今年の4月から正社員にならないかと声をかけられ、現在は夫の扶養範囲内で働いていますが、正社員になると扶養から外れなければならず、どうしようかと迷っています。子どもがまだ小さいこともあり、正社員になったからといっても私(妻)の年収が極端に増えるわけではないのですが、このまま夫の扶養を外れて正社員になっても大丈夫でしょうか?

相談者プロフィール

相談者の家計状況


【プロからの回答です】

  • 社員になった場合のメリットは何でしょうか? 手取りがそれほど増えなくてもボーナスがでたり、有給の日数が増えたり、将来の年金額も増えてきます。想定にボーナスは加算していませんが、それでもパートでずっと働くよりも余裕のある計算になりました。夫の扶養から外れる分、三澤さん自身の税金や社会保険料の負担が増えます。夫の給与に配偶者の手当が上乗せされていれば、その手当もなくなってしまうかもしれません。しかし手取りが12万円ということはおそらく年収にすると160万円くらいだと思われるので、負担分も補えているのではないでしょうか。

(※詳細は以下をご覧ください)


家計管理が上手にできています

とても堅実に生活されていますね。総務省の家計調査の平均(2014年1月-二人以上の世帯)と見比べても、通信費以外どれも下回っています。きちんと貯蓄もされているので立派です。月々は余った金額しか貯蓄に回せていないとのことですが、3歳以下の子どもがいるときは保育料も一番高い時期ですし、貯蓄できないのは仕方ありません。ボーナスからきちんと貯蓄もしていますし、今は月々の収支が赤字に陥らないように気を付ければ充分でしょう。

社員とパート、どっちがいい?

収入がそれほど変わらないのであれば、税金の面では配偶者控除があり、社会保険料の面では負担もなく、急な休みにも対応しやすいパートのままでもよいかなと相談者の三澤さんは迷われているようですね。

現状をもとに、パートのまま61歳まで働いた場合と、社員で60歳まで働いた場合でお金の流れを見てみました。上のお兄ちゃんがスイミングに通っているとのことでしたので、妹さんも5歳からスイミングに通い、二人とも小学校~高校までは公立、私立の四年制大学文系に進学、280万円の車を2回目の車検時に買い替えたと仮定しました。

その結果、パートのままだったとしてもギリギリではありますが、貯蓄が底をつくことなく、生活していくことは可能です。ただし、60歳で辞めると赤字になってしまうので、61歳まで働いたと仮定しています。パートを60歳で辞めるとしたら、車検をもう一度通すとか、もう少し安い車に変えるなどすれば、クリアはしていけるでしょう。

社員になった場合であれば、70歳まで15万円の旅行を年に2回行ったとしても、経済的にゆとりのある生活を送ることができます。

社員か? パートか?

では、社員になった場合のメリットは何でしょうか? 手取りがそれほど増えなくてもボーナスがでたり、有給の日数が増えたり、将来の年金額も増えてきます。想定にボーナスは加算していませんが、それでもパートでずっと働くよりも余裕のある計算になりました。

夫の扶養から外れる分、三澤さん自身の税金や社会保険料の負担が増えます。夫の給与に配偶者の手当が上乗せされていれば、その手当もなくなってしまうかもしれません。しかし手取りが12万円ということはおそらく年収にすると160万円くらいだと思われるので、負担分も補えているのではないでしょうか。

サポート体制の充実を!

三澤さんの場合、家計診断シートを見る限りお金の問題というよりは、子どもの病気などで急に休まなくてはならない時のサポート体制がとれるかどうか、というところが心配のように感じられます。

近所に実家や親族がいて、園からの急なお迎え要請や休園のときでも、対応できるなら良いのですが、そういった人がいない場合、どうしても仕事を休めないときに、保育園とは別に一時保育してくれる施設や病児保育をやっている場所、ファミリーサポートセンターなども登録しておくとよいでしょう。ファミリーサポートセンターでは1時間700円程(自治体により異なります)で託児してもらえますが、事前登録が必要ですので早めに登録して、援助会員さんとの相性も見ておくとよいでしょう。

保険を見直そう!

ちなみに、家計診断シートでは詳細まではわからなかったのですが、現在加入されている保険はおそらく一生涯死亡保障が3000万円保障されるという保険ではないと思います。いつかの保険会社で試算し比較しましたが、35歳男性が一生涯3000万円の保障をするのに65歳まで保険料を払うと仮定したら、月々の保険料は6万円を超え、1万8000円では収まらないと思いました。おそらく3000万円の保障は65歳までか、場合によっては10年更新で保険料が上がっていくタイプに加入されていると思います。わかりづらいようであれば、一度保険内容を見直してみることをオススメします。家の近くで無料の保険相談窓口などを探してみましょう。

また、夫婦型の保険に入っていた場合、夫が万が一の時、妻の保障はどのように残るのかも確認しておきましょう。収入保障保険・家計保障保険など保険会社によって名称が異なりますが、保険料が割安で、年金や月給のように受け取れるタイプの保険もありますので、死亡保障についてもう一度検討されるとよいと思います。医療保障は65歳の時に更新したければ都度払っていくタイプとのことでしたが、そうなると、医療保障の計算は65歳時での病気になるリスクを計算して算出されますので、保険料がとても高くなります。今のうちに、ご夫婦それぞれが一生涯保障できるものに入っておくほうが割安です。

繰り上げ返済について

今はまだ住宅ローン控除を使われていると思うので、控除がなくなるまでは「繰り上げ返済をするための貯金」をしておいて、控除がなくなってから繰り上げ返済をしていきましょう。月々の返済額を下げるよりは期間を短くする期間短縮形の繰り上げ返済のほうが利息節約のメリットは大きいですが、教育費や家の修繕費など、将来大きな支出があることを頭に入れつつ、無理のない金額で返済していくといいでしょう。

お金の流れだけを見ると、社員になった方が経済的に豊かな生活を送れますが、三澤さんの家計データを見る限り、パートでも社員でも、収入に合わせた生活をしていけると思います。小さいお子さんともう少し一緒にいられるしあわせと、もう少し稼いで、旅行などお金のかかるレジャーも一緒に体験していくしあわせ、三澤さんにとっての一番の「しあわせ」を考えて社員になるかどうかを検討されてはいかがでしょうか。

<著者プロフィール>

(株)プラチナ・コンシェルジュ ファイナンシャルプランナー 内田まどか

「万が一」のためだけではない、生きていくための保険の入り方から、住宅取得、転職、早期退職など、夢や希望を叶えるためのライフプランニングなど、シミュレーションを活用してアドバイス。個人相談を中心に活動している。