子どもを授かると考え始めるのが、将来のための教育費。大学進学までの費用を調べてみると、「結構かかる」と感じるのではないでしょうか。金額の大きい出費であるからこそ、後々の負担が少しでも減るように子どもが小さいうちから備えておきたいものです。では、教育費は一体いくらくらいかかるのでしょうか。教育費の貯め方や資金が捻出できない時の対処法などもあわせてまとめてみました。

子ども一人当たりにかかる教育費

子どもの教育費は、公立と私立どちらを選択するかによって大きな差が生じます。特に、「幼稚園から高校まで全て公立」と「幼稚園から高校まで全て私立」では、教育費に3倍以上もの開きがあると言われています。文部科学省の「平成28年度子供の学習費調査」によると、幼稚園から高校卒業までの15年間の学習費総額は、以下のようになっています。

・全て公立…5,400,716円
・幼稚園だけ私立…6,163,984円
・高校だけ私立…7,159,185円
・幼稚園および高校が私立…7,922,453円
・小学校だけ公立…10,468,884円
・全て私立…17,699,339円

大学にかかる学費はどうでしょうか。国立大学の場合、4年間の授業料等(設備施設費を含む授業料、入学金)は2,425,200円、公立大学では2,549,149円となっています(※1)。一方、私立大学文系学部は3,427,425円、私立大学理系学部は4,733,013円。私立大学医歯系学部にいたっては6年間で19,277,168円です(※2)。仮に幼稚園から高校まで全て公立に通い、大学は私立文系学部に進学したとしても900万円近くかかる計算となります。

ただし、実際に子どもを育ててみると、データ以上にお金がかかると感じる局面があるでしょう。たとえば、夫婦共働きのため、幼稚園ではなく保育園に預けるケースです。子どもを1歳から保育園に入れるとすると、3年保育の幼稚園よりも2年分多く保育料がかかることに。小学校へ入学してからも、塾や習い事、受験にかかる費用などを考慮すると、家庭によっては教育費の平均から大きく乖離することも考えられます。

また、大学に入学して親元から離れて暮らすとなれば、一人暮らしや下宿の費用もかかります。とはいっても、教育費は子どもの歩む進路によって左右される要素が大きいため、「いくらかかるか」を正確に予測することは難しいでしょう。大まかに幼稚園から大学卒業までに800~1,000万円程度かかると心得ておき、そのうち大学進学後にかかる教育費として300~500万円を準備しておくことができれば安心です。

※1文部科学省「国公私立大の授業料等の推移」を参考に計算
※2文部科学省「平成28年度 私立大学入学者に係る初年度学生納付金平均額」を参考に計算

家計に対する教育費のバランスはどうする?

「子どものために」と考えると、際限なく膨らんでしまうのが教育費です。将来の学費はもちろん、小さいうちから塾や習い事に通わせたり教材や書籍を購入したりすれば、家計に対しての出費はどんどん大きくなっていきます。その他の必要な支出を削ってでも教育費を捻出してしまう家庭もありますが、生活費と教育費は切り離して考えましょう。家族が生活するのに支障をきたすことがないよう、家計とのバランスを取り、決めた以上には教育費をかけないような工夫が大切です。

幼稚園~高校までにかかる教育費が500万円とした場合、子どもが生まれてから15歳までは月々2万8,000円ほど教育費の枠を設ければいいことになります。月の上限を決めておけば、教育費がむやみに多くなっていく心配はありません。教育費を抑えるコツとしては、まず、月の予算や子ども一人当たりの上限を決めておくことです。習い事や塾は、地域の格安教室やインターネットで学べる塾などを情報収集してみましょう。そして、家計の状況によっては無理に私立を目指さないことも大切なポイントです。

教育費を貯める方法、学費の支払いが難しくなった時の対処法

特に第一子の場合は、張り切ってあれこれお金をかけてしまいたくなりがち。ですが、それが災いして将来のための蓄えができないといった事態に陥らないよう気を付けましょう。

月々の教育費を捻出しながら大学進学に備えるお金を用意するのは大変そうですが、仮に、児童手当を全て貯金すると、その総額は約200万円にもなります(所得制限がない場合)。大学進学費用を500万円とし、残り300万円を子どもの誕生から大学入学までに準備するとなると、月々約1万4000円を上乗せで貯めていく計算です。将来の学費に使うお金は、家計の補てんなどに使ってしまわないよう、生活費とは口座を分けて貯金していきましょう。

また、子どもが就学する前までの時期は「教育費の貯め時」と言われています。共働きで保育園の保育料がかさむ家庭なら、小学校入学から習い事の出費が多くなる中学年頃までが貯め時となります。後々、出費がかさむ時期に余裕を残せるよう、貯められるうちに頑張っておくと負担が少なくなります。

それでも万が一、大学の学費を支払うのが難しい状況になった時はどうすればいいのでしょうか。入学前であっても、奨学金や国の教育ローンである日本政策金融公庫の「教育一般貸付」などが利用できます。また、入学後には、多くの大学で学費の延納や分納、または学費免除や減額等の救済制度を設けています。大学の学生課に相談してみましょう。ただし、これらに頼らず学費が捻出できるに越したことはありません。後から慌てることのないよう、家計とのバランスを取りながらもしっかり貯めていきましょう。

「子どもができるとお金がかかる」とはよく耳にしますが、実際に月々どのくらい負担が増すのか試算してみると、その負担の大きさが身に染みるものです。とは言え、無理のない範囲でできる限りのことはしてあげたいもの。自分たちの老後資金や住宅資金も考慮に入れながら、子どもの将来のために備えていきたいですね。

筆者プロフィール: 武藤貴子

ファイナンシャル・プランナー(AFP)、ネット起業コンサルタント

会社員時代、お金の知識の必要性を感じ、AFP(日本FP協会認定)資格を取得。二足のわらじでファイナンシャル・プランナーとしてセミナーやマネーコラムの執筆を展開。独立後はネット起業のコンサルティングを行うとともに、執筆や個人マネー相談を中心に活動中。FP Cafe登録FP。