今期(2016年3月期)の業績予想がほぼ出揃った。日本企業は保守的(低め)に予想を出す傾向があるが、それでも主要企業718社で約10%の経常増益が見込まれている。原油安や円安が、日本企業の利益を拡大させる。

会社が予想する利益を前提として計算した、東証一部上場株式の平均PER(株価収益率)は17倍である。PERから見て、日本株は割安との見方もある。

(1)平均PER17倍の意味

PER17倍とは、株価が、1株当たり利益の17倍で評価されているという意味だ。この倍率が小さいほど、株価は割安と言える。日本株は、かつて平均PERで20~25倍まで買われていた。PERが17倍に低下した今、日本株は割安と見ている。

ところで、PER17倍は、益利回り約5.8%と同じである。

PERと益利回りの関係

日本株を株価1000円の株にたとえると、PER17倍ならば、1株当たり利益は約58円ということになる(上の図の黄色の部分)。

  • <1株当たり利益58円>×<PER17倍>=<株価1000円>

1000円の投資に対して、1年で58円の利益が得られるので、益利回り(利益÷株価)は5.8%になる。

  • <1株当たり利益58円>÷<株価1000円>=<益利回り5.8%>

益利回りと配当利回りの関係

日本企業は、現在、連結純利益の約30%を配当金として、株主に支払っている。利益の30%を配当にまわしている状態を、配当性向30%という。

東証一部を1000円の株にたとえると、1株当たり利益は58円であった。利益の30%を配当に回すので、1株当たり配当金は約17円になる。したがって、配当利回りは1.7%である。これが、日経平均約2万円での日本株の平均的イメージである。

長期金利が0.375%まで下がった今日、日本株の配当利回り1.7%は魅力的と考える。

(2)日本株は割安、長期国債は割高と考える

長期国債と日本株、どちらの投資魅力がより高いか。5月18日時点で、新発10年国債利回りは0.375%。これに対して、東証一部の益利回りは6.8%、配当利回りは1.7%だ。日本株は割安、長期国債は割高と考えられる。

もちろん、株の配当利回りは確定利回りではない。株価が短期的に大きく下がったり上がったりすることもある。それでも日本株は割安で、価格変動のリスクを負って投資していく価値があると判断している。

なお、1993年までさかのぼると、長期金利は5%もあった。この時、日本株の配当利回りは1%もなかった。この時は、長期国債が割安で、日本株は割高であったことが明瞭だ。

東証一部配当利回りと長期金利推移:1993年5月~2015年5月18日

(注:東証一部配当利回りは加重平均、長期金利は10年もの新発国債利回り、楽天証券経済研究所が作成)

執筆者プロフィール : 窪田 真之

楽天証券経済研究所 チーフ・ストラテジスト。日本証券アナリスト協会検定会員。米国CFA協会認定アナリスト。著書『超入門! 株式投資力トレーニング』(日本経済新聞出版社)など。1984年、慶應義塾大学経済学部卒業。日本株ファンドマネージャー歴25年。運用するファンドは、ベンチマークである東証株価指数を大幅に上回る運用実績を残し、敏腕ファンドマネージャーとして多くのメディア出演をこなしてきた。2014年2月から現職。長年のファンドマネージャーとしての実績を活かした企業分析やマーケット動向について、「3分でわかる! 今日の投資戦略」を毎営業日配信中。