90年代に入ると、バブル経済の崩壊や湾岸戦争など経済的な不安定要因が増し、景況は芳(かんば)しいとはいえなくなった。しかし、そういう時代こそ航空機メーカーの“腕の見せ所”なのである。

マクドネルダグラスMD-11。巡航速度884km/h、航続距離1万1,480km。座席数233-235席。機体ごとに「タンチョウ」「ライチョウ」など鳥の名がつけられた

マクドネルダグラス社のMD-11は、ジャンボほど高需要ではない区間の需要に対応する、経済的な旅客機として登場した。かつてのベストセラー機であるDC-10の発展型であり、エンジンが両翼にひとつずつと尾翼にひとつ、計3つある3発機である。日本航空では「Jバード」を愛称がつけられ、国内線・国際線の両方で使用された。

777は一流エアラインの証

しかし、この後すぐにより優れた旅客機をボーイング社が製造する。777型機である。777型機は、ボーイング社がユーザーである航空会社の意向を取り入れる「ワーキング・トゥゲザー」のコンセプトで開発された旅客機。双発機としては画期的なサイズと推力、それに燃費効率を有した。

ボーイング777-200。巡航速度905km/h、航続距離4,740km。座席数389席。機体ごとに「シルウス」や「アルタイル」といった星の名がつけられた。「7」が3つ、縁起の良さを連想させる機材でもある

直径が小型のボーイング737型機の胴体部分に匹敵するほど巨大なエンジンは、従来はなかった強い推力と効率の良さを生み出した。燃費の良さに加え、騒音も従来機に比べると大きく抑えられたため、「環境にやさしい」という後の旅客機開発には欠かせないコンセプトを成功させた機材でもあった。

こういった多くの優れた性能を持つ777型機は、当初の200型と後に開発されたより大型の300型とともに、「777を保有していることがすなわち一流エアラインの証」とまで言われるほど高い信頼性を持っており、今日でもその評価は変わっていない。

地球にも人体にも優しい旅客機

日本航空が777-200型機を就航させたのは1996年。「スタージェット」の愛称がつけられ、大型のエンジンに8つの光を放つ星が描かれた。また、同じ年の6月20日搭乗便より、電話予約するだけで搭乗日当日に空港でチェックイン済み航空券が受け取れる、国内線JALチケットレスサービスが開始された。

一方で、この頃から機内のインテリアも大きく様変わりしていく。日本航空は日本の美を強調するようなインテリアから一転、シンプルなデザインへと移行した。座席もシャープでシンプルなデザインへと変化し、「ふかふかのソファ」に代表される飛行機が贅沢(ぜいたく)な乗り物だということを強調する座席も減っていった。

では、座り心地も悪くなったのかといえば、そうではなかった。むしろ逆だった。ふかふかした柔らかい座席よりもより硬い座面の方が実は身体にやさしい。また、ランバーサポート(腰の部分が凸形に出た)デザインで腰の負担を軽くするなど、人間工学(身体への負担を和らげる工学)に基づいた座席を設置する航空会社が増えたのも90年代だった。

航空会社は営業効率を良くするため機内の座席をより効率的に配置し、見た目にはスペースに余裕がなくなった感があったが、一方で乗客の座り心地や健康面への配慮を高めていったのである。