ボーイング767-200。巡航速度862km/h、航続距離6,280km。座席数230席。それまでキャプテン、コ・パイロット、航空機関士の3名から航空機関士を除く2名での乗員編成が可能な「ハイテク機」だ

ボーイング747型機は「ジャンボ」の愛称がついた大型機であり、正式にはワイドボディ機と呼ばれる。欧米などの長距離便で主に使用された。一方で、より近距離用の旅客機として開発されたのがボーイング767型機だ。

操縦席を一変させたグラスコクピット

日本航空はジャンボの多くに400を超える座席を設置したが、767はセミワイドボディ機と呼ばれ、見た目にもジャンボよりずっと小さい。日本航空が1985年に導入した767-200型機の客席数は230で、もちろん2階席はない。767の構想段階でオイルショックが起き航空燃料の価格が2~3倍と高騰。そのため経済性が重視されたのも767の特徴で、ジャンボのエンジンは4つ(4発)だが、767は2つ(双発)である。今で言えば、「地球に優しい飛行機」の誕生である。

ただ、「ジャンボ」の派生型である「ハイテクジャンボ」こと、747-400(ダッシュ400)型機が生まれた80年代は、グラスコクピットに象徴されるように、旅客機がアナログからデジタルへと移行した時代。767-200の操縦室もグラスコクピット化で見た目も操作性も一変した。

それまでは指針がずらりと並んでいたが、少数のモニターに集約されすっきりとした。またそれにより、パイロットが機材から提供される情報を読み取る作業は楽になった。モニターはその後、ブラウン管から液晶へと変わり、最新機材のボーイング787などでは、パイロッットの視野空間に情報を映し出すヘッドアップディスプレイも採用されている。

「90秒」を大幅に下回る画期的な記録

ボーイング767-300型機は乗客集客力を増すために、767-200の胴体を約6.4m延長したストレッチタイプである。日本航空は1986年に導入。同時に767-300を世界で最初に受領したローンチカスタマーでもあった。

ボーイング767-300ER。巡航速度862km/h、航続距離9,400km。座席数227~237席。日本航空を含め他社でも使用され、国内線や近距離路線でおなじみの旅客機である

767-300は86年の9月にボーイング社から納入されたが、その直前に日本航空の運航及び客室乗務員はシアトルにあるボーイング社で、同機の脱出デモ訓練を行った。旅客機には地上での緊急時に、90秒以内に乗客と乗務員が脱出しなくてはならないという「90秒ルール」があるが、この時の訓練で日本航空の乗務員たちは78秒での脱出に成功した。

訓練とはいえ、客席は満席にし、通路には枕や毛布、手荷物などの障害物が散らばるなど想定は本格的。82年に同業他社が767-200で同じ訓練を行ったのだが、記録によると、その際は2度目のトライで86秒かかっている。それでも問題ないわけだが、78秒というのは画期的だったのだ。

新しい旅客機の受領は、新しい路線の開設につながるケースが多い。767-300のピカピカの機体も、名古屋~福岡など日本航空の新しい路線に就航した。なお、リゾート旅行でおなじみの子会社である南西航空(現トランスオーシャン航空)も、1990年に東京~宮古、那覇~宮古線に767-300を就航させている。日本航空から機材と乗務員を借り受ける「ウエットリース」と呼ばれる形態での運航だった。