私の独立・開業ストーリー(8) 会社を退職し専門学生へ……紆余曲折を経て29歳で開業したリラクゼーションサロン

独立・開業には勇気がいります。そして人それぞれの理由があります。もちろん稼ぐことを目的に開業する人もいるでしょう。しかし、それ以上に「思い」を持ってビジネスに取り組まれている人が大勢おられます。ここではそんな人々にスポットを当てて、独立・開業への思いや、新しい人生の価値観などを伺っていきます。

第7回は、神戸市北区で『リラクゼーションサロンHOWL(ハウル)』を経営されている、辻本雅英(つじもとまさえ)さんにお話を伺いました。

辻本雅英(つじもとまさえ)さん

26歳で退社し専門学校へ、ヘアメイクの世界を志したものの……?

――もともとはヘアメイクアーティストを目指されていたとか。

辻本さん:はい、もともと19歳からエステティシャンとして働いていたのですが、ただ漠然と「美容の仕事を極めたい!」という思いだけでそのお店を退職しまして、26歳でトータルビューティの専門学校に入学したんです。

ただ、学んでいく過程で『ヘアメイク』という響きと職業のカッコ良さに惹かれ、プロのヘアメイクアーティストを目指して美容サロンに入社しました。でも、たった3カ月で業界の現実を知りまして……仕事の厳しさに打ちのめされ、自分の覚悟の甘さを知りました。

――その後リラクゼーションサロンを開業されるに至った理由は何だったのでしょう。

ヘアメイク時代に美容サロンのオーナーに言われた「やりたいことと、向いてることは違うってことを自分で分からなきゃいけないんだよ」という一言から、本当にやりたいことは何なのか、出来ることは何なのかと自分自身を見つめ直したんです。

そうしたら、エステティシャンとして働いていた頃、マッサージをしたあとのお客様のすっきりした顔や、その後に頂く「本当に気持ちよかった～ありがとう!」の言葉が自分にとってとてもうれしく、幸せだったことを思い出しまして。疲れている人の心にゆとりをつくり、また明日から笑顔で頑張れるような癒やしのお店をつくりたいと考えるようになりました。

その後2年の修行を経て、29歳の時に『リラクゼーションサロンHOWL(ハウル)』を立ち上げまして、いまは神戸市谷上駅の構内にお店を構えてから4年目を迎えました。決して大繁盛というわけではないけれど、お客様一人一人との時間を大切にしながらのんびりと営業しています。

『リラクゼーションサロンHOWL(ハウル)』

「経営者は孤独」「周りはみんなライバル」なんてことは全くない

――リラクゼーションサロンを開業したあと、お店は順調に進んだのでしょうか?

辻本さん:いえいえ! とにかくお金を無駄使いしちゃったかなぁと思っています。初めて自分のお店を持つということもあって、インテリアや商材にこだわり過ぎて、貯金を使いまくっちゃいました(笑) 。開業後の運転資金のために取っておくべきだったといまは大反省しています。

――でもそこからオープン4年目に入られるのはすごいです!

辻本さん:いやもうとにかくお客様の笑顔に何度も何度も救われました! 来店された時にはもう、ヘトヘトで今にも倒れそうなお客様が、施術後には「うわぁーほんっとに気持ち良かったーありがとう!」と笑顔になられるんです。そんな瞬間を見ると、自分がこの方を笑顔に出来たんだ! とめちゃくちゃ幸せな気持ちになります。

それから、色んな方との出会いやご縁に救われています。HOWLを開業していなければ出会うことがなかったであろうパートナーや、大切なスタッフ、お客様、取引先の方々……。よく経営者は孤独だとか、周りはみんなライバルだなんて耳にするんですが、私は全然そんなことなくて。孤独どころか、どれだけ周りの皆さんに助けてもらっていることかと思います。

スタッフに平気で慰めてもらうオーナーですし(笑)、お客様の中には「まさえちゃんお腹すいてるでしょ」って野菜をいつも持ってきてださったり、お弁当を持ってきてくださったりする方もいらっしゃるくらい(笑)。反省点は沢山あるんですが、後悔していることは1つもなくて、この道を選んで良かったなぁと本当に思います。出会いに感謝です。