独立・開業には勇気がいります。そして人それぞれの理由があります。もちろん稼ぐことを目的に開業する人もいるでしょう。しかし、それ以上に「思い」を持ってビジネスに取り組まれている人が大勢おられます。ここではそんな人々にスポットを当てて、独立・開業への思いや、新しい人生の価値観などを伺っていきます。

第6回は、2015年から東京都豊島区でアイシングクッキーのアトリエを経営されている、アイシングクッキー作家のサワタリユウコさんにお話を伺いました。

  • アイシングクッキー作家のサワタリユウコさん

まずはできることから! お教室から始まったアトリエへの道

――最初はアイシングクッキーのお教室からのスタートだと聞きました。そこからなぜアトリエを作るまでになられたのですか?

サワタリさん:もともとアイシングクッキーは、パート主婦の趣味として作り始めたものだったのですが、いつしか「この楽しさを多くの人と共有したい!」という想いが生まれるようになり、お教室をスタートしました。

そのお教室を開講する中で、ありがたくも企業さまがお声がけをくださり、福利厚生の一環として、社内でセミナーを開催させて頂きました。またテレビ・新聞・雑誌等、メディア出演の機会もいただいて、活動の場が増えていきました。

最初はお教室の形態でも良かったのですが、企業さまの周年記念イベントなどでノベルティ制作の依頼もいただいても、販売許可が無いために断らざるを得なかったり、作家として自分自身のデザインを販売してみたいという思いが強くなったりしたことで、営業許可を取り、お店を開く決心をしました。アイシングクッキーの活動を始めてから2年程が経った頃ですね。

実はちょうど離婚を決意したタイミングでもあり、いよいよ本腰を据える覚悟ができたのだと思います。

  • サワタリさんのアトリエ

アトリエの経営で大切なのはバランスの取り方

――なるほど、そのような経緯があったのですね。アトリエをオープンされるだけでもすごいことだと思うのですが、オープンされたあとは問題なく運営されてきたのでしょうか。

サワタリさん:いえ、全然そんなことないですよ。見込み違いだったというか、考えが甘かったと思い知ったのは、バランスの取り方についてです。

例えばクッキーの制作時間と、お客さま対応の時間の切り替えや、作家としての作りたい作品とお客さまが求める商品との差、店舗運営に割く時間とプライベートのバランス、などなど。

好きなことを仕事にして楽しくやっていたつもりだったのに、今までのは所詮、趣味の延長でしかなかったのかも、と悩みましたね。

――なんと、バランスの取り方ですか! 意外ですが確かにこうしてお聞きすると、すべてはバランスの上に成り立つのだなと感じます。そんな中、これまで運営されてこられた思いや、やりがいなどをお聞かせいただけますか?

サワタリさん:そうですね、例えばフルオーダー品の打ち合わせをされる中でお客さまが泣いてくださったり、後日ご友人にお贈りした際のエピソードをご報告くださったり、そういったコミュニケーションにやはり一番心が満たされますね。

また、作家として活動する中で、たくさんの芸能人やアーティストの撮影に使うクッキーの制作依頼をいただいて、実際にその撮影にも立ち会わせて頂く機会が何度もありました。そこでは様々な「プロの仕事」を拝見する機会に恵まれて、緊張感も大きいですが、とても刺激的で学びも多く、その度に身を引き締める良い機会になっています

  • サワタリさんの作品

お客さまのその先を考える

――芸能人の撮影に立ち会えるのは、うらやましい限りです(笑)。アイシングクッキーがそのような場面でも使われているということですね。とても興味深い話をありがとうございます。ちなみに今後の展望などはございますか?

サワタリさん:例えば、お客さまが仮に参加者100名のパーティを開くとすると、101人の方を幸せにする機会をいただいたことになります。

関わる人の幸せを願う根本的な姿勢は変わらないのですけど、今までは私の作品やお店をどう広めていくか? という視野で物事を捉えていましたので、「関わる人=お客さまとその先」としての絶対数が少なかったように感じています。

今後は、コーチングやコンサルティング業務を強化して、例えば独立開業したい方のサポートをすることで、チャレンジの後押しをし、より多くの方に幸福を届ける形を築いていけたらなと思っています。

――最後に、読者の方へメッセージをお願い致します。

サワタリさん:何歳からでも始められますし、どんな人にも強みはあります。より自分らしく満足度の高い人生を歩むために大切なことは、少しの勇気と行動力だと実感しています。

行動というと、すごく頑張らなければいけないと大変そうに感じる方も多いと思いますが、私も行動力ややる気は薄い方なので大丈夫ですよ(笑)。 自分の可能性を開くには、他者の目線を気にした人生設計ではなく、「どう在りたいか」から逃げない選択にかかっていると思います。実は私も「自信はあとからついてくる」と言い聞かせて、今日も恐る恐る新しいドアを開いています。