入社1年目で知っておきたい「ビジネススキル」とはどのようなものでしょうか? 時間管理やコミュニケーション、PCスキルなど、会社や業界を問わず、身に着けておくと役立つスキルをチェックしていきましょう。
デロイト トーマツ コンサルティング合同会社 ディレクターであり、社内外でビジネススキルに関する研修やセミナーを行う木部智之氏の著書『入社1年目のビジネススキル大全』(三笠書房)より、一部を紹介します。
第12回は、「議事録で『ロジカル・ライティング』の腕試しをする」です。
議事録で「ロジカル・ライティング」の腕試しをする
若手のうちは、会議の議事録を作成する機会が多いと思います。私も、20代の頃はたくさんの議事録を書いてきました。
しかし、今にして思えば後悔していることがあります。
それは、議事録作成を「雑務」としてとらえていたことです。
気持ち次第で議事録作成が有効なトレーニングになる
議事録作成は「雑務」ではありません。「ロジカル・ライティング」「資料作成」の有効なトレーニング機会です。
あなたが議事録を担当することになったら、まず、そのような意識を持って取り組んでみてください。意識をするかしないかで、得られるものが全く違います。
次に、議事録を作成する際のポイントを整理します。
1.要素を漏らさない
まず、重要なのは議事録に書くべき要素の洗い出しです。ここで、MECE(ミーシー)の考え方で洗い出しをします。
基本的な要素は、
- 日時
- 場所
- 出席者
- 決定事項
- 要対応事項
- 会議内容
- 次回会議日程
といったものです。これをベースに会議や議事録の目的に合わせて、要素の追加・削除を考えるといいでしょう。要素がMECEであるか、過不足ないかをチェックするには、ほかの人が作成した議事録も参考にするといいでしょう。
2.ピラミッド構造で書く
会議で議論された情報を、構造化しましょう。
議事録での構造化は、下図のようにピラミッド構造で整理するとわかりやすくなります。情報の詳細度と要約度で構造化します。
それらを見出し、小見出し、説明文というように記していきます。そして、縦のピラミッドで構造化したものを議事録という文書に書くときに、それを横向きにするのです。これで、構造化されたわかりやすい議事録を書くことができます。
3.要素は読み手にやさしい順番に並べる
議事録を読む人が読みやすい、理解しやすい順に要素を並べましょう。例えば、開催日時や議題といった基本情報が最後に書かれていると、議事録を読みはじめてもすぐに頭に入ってきません。
いい議事録とは、読み手が、
- すぐに読める
- そして、すぐに理解できる
ものです。
自分が読み手だったら、とイメージして、洗い出した議事録の要素を脳にやさしい順番に並べましょう。
先ほど、横にしたピラミッドをそのままの順番で書くのではなく、読みやすい順序、項目として重要な順序などに並び替えるのです。
議事録は、会議の時系列に書く必要はありません。会議という枠の中で、何が議論され、何が決まったかということを記録するものなのです。
ここまで、私は議事録のフォーマットやテンプレートについては触れていません。その前に、これらの考え方が大切だからです。
議事録のフォーマットは、会社や部門、プロジェクトで定型のフォーマットがあればそれを使えばいいでしょう。決まったものがなければネット上にたくさんのフォーマットがありますので、「議事録フォーマット」などのキーワードで検索してみてください。
どのフォーマットを使うにしても、前述のポイントを取り入れて議事録を作成してみてください。
ワンアップできる議事録作成のポイント
本節のまとめとして、さらに議事録のレベルを上げるためのポイントをお伝えします。
1.簡潔に書く
議事録は日記や小説ではないので、会話形式で長々と書くのはNGです。会話の中で出てきたポイントを拾い上げて、簡潔に書くことを心がけましょう。
箇条書きを使うと簡潔になります。文章が長くなりすぎないように、適度に区切ることも忘れずに。
2.見た目を美しく
1枚の紙いっぱいに文字や図がある議事録は、読みづらいです。
改行や1行アキを入れたりして、余白(スペース)をうまく使った目にやさしい議事録をつくります。
番号を振って箇条書きにしたり、【】(スミ付き括弧)などで見出しを目立たせたりするのもいいでしょう。
3.送付は24時間以内
議事録は、会議が終わった直後から鮮度が落ちていくことを忘れてはいけません。1週間後に送付された議事録は賞味期限切れ、と言ってもいいほどです。
目標は24時間以内の発信です。参加者にとっても記憶がまだ残っているうちの議事録は嬉しいですし、何よりも「おっ、こいつはできるな」と、あなたの株も上がります。
4.録音はNG
議事録作成のために、会議を録音するのはやめましょう。録音を聞くために、会議と同じ時間をまた費やしてしまうことになります。ポイントだけ聞くとしても、結局、時間はかかります。
しかし、それよりも、録音をやめたほうがいい一番の理由は、緊張感を持って集中して会議に臨むためです。録音がないと、どんな発言も聞き漏らすまいと真剣度が上がり、焦りと緊張感を持って会議に参加するようになります。録音しているからちょっとくらい聞き逃しても大丈夫、と思っているのとでは、大きな差が生まれます。
議事録作成は、決して「雑務」などではありません。冒頭で「ロジカル・ライティング」「資料作成」の有効な実践機会であると述べた理由がおわかりいただけたことでしょう。
たかが議事録、されど議事録なのです。
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