「家事も育児も家計も全部ワリカン! 」バツイチ同士の事実再婚を選んだマンガ家・水谷さるころが、共働き家庭で家事・育児・仕事を円満にまわすためのさまざまな独自ルールを紹介します。第53回のテーマは「怒るときは怒ります」です。
口を酸っぱくして「怒らないで言う」「かわいくお願いする」を家族間で心がけ、子どもにもお手本となるように「怒らないでお願いする」を日々自己鍛錬として課している私です。
が、私は基本的には「怒れないタイプ」ではありません。「怒れない」タイプの人は、私が悩み相談を聞く限り、「こんなこと言ったらどうなるか」「嫌われるかも」と怖かったり、「私が我慢すれば」と抱え込んだりとか「言うべきことがぱっと出てこない」とか、そういう「うまく怒れない」ことが多いようです。私は「私が努力すれば、もっときっとよい結果が得られるはず!」と抱え込んだり、努力しちゃったりするタイプなんですが、「我慢」はあんまりしません。すみません、嘘をつきました。あんまりじゃないです。我慢はしません……。
我慢しないためにはどうするかというと「問題を解決」するしかないんですね。「怒らないで言う」のは、そもそも「問題が起こらないように」するためです。ただ「問題を解決」するためには、ときに「怒る」必要が出てきます。幼児だけでなく、多くの人は「怒られないとわからない」こともあります。
「困ってる」とか「こうしてほしい」とか「これはイヤだ」とかは言わなきゃわかりません。言わないで我慢して我慢の限界になってから、怒りながら「いいかげんにしてっ!」と言っても、「え!? なんで突然??」となったりしますし、反感を持たれてケンカになったりします。
なので、そうならないように我慢の限界が来る前に「こうしてほしい」とか「困ってる」とかを伝えるようにしています。困ったりイヤだったりするとすぐ怒って要望を口にする4歳である息子を見てると、そんなことは人は自然に習得できないんだな……。ということがわかります。やっぱり練習しないと、なかなかできません。なので、口を酸っぱくして「怒らないで伝える」ように言っているし、自分も実践するように心がけています。
ですが、問題が起こってしまっているときは、その解決方法として「怒っていることを伝える」必要も出てきます。
何度も何度も優しく「私はこうなると困るからこうしてほしい」と伝えているにもかかわらず、ちっともやってくれない……というときは「困った」が発生します。息子の場合は「お風呂に入ってくれない」とかですね。
お風呂に入るとか、歯を磨くは「イヤならやらなくていい」というようなことではありません。衛生的にも健康のためにも生活習慣をきちんと身につけなければならないので、本人が嫌がろうと説得する必要があります。
最初はもちろん「優しくお願い」します。でも、何度言っても「や~だよ~」という態度の場合は、もちろん叱ります。息子の要望をかなえるのが基本姿勢ですが、どうしても何を言っても必要なことが聞き入れられない場合は叱ります。息子も「お風呂に入る必要性」は理解しているので、だいたいしぶしぶ従います。
まあ、子どもの「怒らなきゃわからない」はこの程度なんですけど……。大人相手はまた別……。
家族でいるときに、お父さんがスマホ見まくり問題というのがありまして。私も見たいし、見てるときあるし、ある程度はお互い様なんですが、一緒に出かけていて「こういうタイミングでスマホ見てるのは困るよ」というときがあります。そういうときは「こういうタイミングで見られると私が困るので、見ないでくれると助かるな」などと声をかけるようにしています。
そういう話をすれば、ちゃんと聞いてくれることが多いので、「問題が起こらないようにするために、怒らないで伝える」が成功するときも多いです。でも、なんというか……こちらが怒らないように立ち振る舞っていても、「困ってない」という前提で根本的な改善が得られないことがあるんですね~。
で、最終的に「子どもが公園で遊んでるのに付き合うのはつまんないからスマホ見る」的なことを言われまして。はっはーん、こちらが怒らないで伝えてるとそういうこと言っちゃうのね……。そして結果的に「ちゃんと怒って伝える」ことになりました……。
普段、私は「怒ってコミュニケーションしない」を心がけているわけですが、「怒る」はちゃんとやるべきときにやらないといけないと思っています。こちらの要望や意見、気持ちが「伝わってない」ために自分が困るときです。こういうときにちゃんと怒らないと自分を守れないことになります。
困っていたり、問題が起こっていたりするのに「怒れない」「言えない」ために状況がどんどん悪くなることもあります。なので「怒る」ことは必要です。ただ、「怒る」ことを安易に使いすぎれば「加害」になってしまうし、「怒る」ことを避けすぎると「被害者」に追い込まれてしまいます。これはどちらになっても不幸なので、できる限り避けたい。
「怒る」というコミュニケーションについて考え始めてから、これはすごく難しいことだと思うようになりました。難しいということは、ちゃんと練習しないと自分も他人も傷つけないようにできないのです。ときに失敗することはあるけど、まずは家族で「怒る練習」を積んでいくと、みんなハッピーになれると考えています。
息子は発達の途中なので、練習してもアプローチがうまくいくケースが日々変わっていくので、それも含めて日々「練習」だなあと思ってやっています。
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著者プロフィール:水谷さるころ
女子美術短期大学卒業。イラストレーター・マンガ家・グラフィックデザイナー。
1999年「コミック・キュー」にてマンガ家デビュー。2008年に旅チャンネルの番組『行くぞ! 30日間世界一周』に出演、のちにその道中の顛末が『30日間世界一周! (イースト・プレス)』としてマンガ化(全3巻)される。2006年初婚・2009年離婚・2012年再婚(事実婚)。アラサーの10年を描いた『結婚さえできればいいと思っていたけど』(幻冬舎)を出版。その後2014年に出産し、現在は一児の母。産前産後の夫婦関係を描いた『目指せ! ツーオペ育児 ふたりで親になるわけで』(新潮社)、『どんどん仲良くなる夫婦は、家事をうまく分担している。』(幻冬舎)が近著にある。趣味の空手は弐段の腕前。