「家事も育児も家計も全部ワリカン! 」バツイチ同士の事実再婚を選んだマンガ家・水谷さるころが、共働き家庭で家事・育児・仕事を円満にまわすためのさまざまな独自ルールを紹介します。第164回のテーマは「きちんと言わないと厳しくします」です。

これまでのお話はこちら

我が家では、「察してほしい」も「察して動く」もやめようという約束になっています。

なので、「要望は口に出す」ということを夫婦共に積極的にやっています。最初はなかなかできなかったパートナーも、気をつけてやっているうちにちゃんと「要望は口に出す」ができるようになり、不機嫌で人をコントロールしたり、キレたりすることが減ってきました。

そんな我が家ですが、最近息子が「○○が××なんだけど」みたいな言い方をするようになってきたんですよね……。「だからどうしてほしい」ということまで言わないのです。赤ちゃんや幼児なら言語能力がまだ発達していないのでしょうがないんですが、小学生にもなるとまた変わってきます。

息子はわりと食事について文句を言うことが多いです。でも我が家は「イヤなことはちゃんと言っていいし、むしろちゃんと言おう」という方針。自分がイヤだと思うことを言うのは自己開示で、これができないと結局「察して」になりやすいんですよね。文句は言ってもいい、でも言うなら丁寧に言わないといけません。

「イヤだと思うことを言う」と「イヤだという気持ちを受け止める」はセットの行為です。そこが成立して信頼関係が築かれていくんですよね。

でも、「ねえ、焦げてる」はアウトです。これは「お茶がほしい」ときに「お茶」とだけ言うのと同じ行為です。1つのことを言ったり指摘したりして、「要望」は言わずに自分の意のままになってほしい、という行動です。

それを見て、「練習しなかったら、人はこういうコミュニケーションを自然とするんだな……」と思いました。それが相手に対して失礼だとか、意図が伝わってないとか、そういうことを指摘されなかったら子どもはそういう行動をするんだな~と。

ひと昔前は、男性が女性に「おい、○○」と言えばなんでも出てきた時代がありました。もちろん今もあると思うのですが、この「全部言わないコミュニケーション」ってどうして発生しちゃうのかなと思っていました。支配欲とか、権威的とかそういう行動なのかなと思っていたのですが、最近息子がするのを見てまさか……幼児性なの? と気付いたのです。

これは決して男性だけの問題ではなくて、コミュニケーションの訓練をされていないと、女の子も親に対して「ねえ! ごはん! 」とか言うんですよね。だからやっぱり、親としては「相手を尊重し、敬意をもったコミュニケーションを取る」ということを練習させないといけない。

自分自身は親に何か練習させられたという記憶はありません。でも、私は親に対して反抗的だったり、不躾だったりすることはありませんでした。どうしてかというと、母親と年の離れた姉たちが常にささいなやりとりで喧嘩をしていたのを見ていたからです。小さいときから「なんでもっと丁寧に言わないんだろうなあ……」と思っていました。

小さかった自分は母と姉たちの喧嘩を止めることもできず、ただただ傍観するしかできませんでした。そして「ああいえばこういう」の応酬を見ながら、「丁寧に言えば揉めない」ということを学びました。

ちなみに、“上の子”だった人にこの話をすると「末っ子は要領よく親とやるよね」と言われます。でも、常に喧嘩を見せられる下の子の立場からすると、結構辛かった。私が家族間のコミュニケーションについて「あの手この手」を考えるのは、生まれ育った環境も大きく影響していると思います。

方や、今の我が家は息子一人。サバイバル的にコミュニケーションを会得する機会はありません。乳幼児期から、親として丁寧なケアを心がけ、「能力的にできないことを叱らない」「子どものやることから、必要以上に意図を勝手にくまない」とかやってきたのですが、気を抜くと息子は親に対して「雑なコミュニケーション」をします。

ある程度までは、「雑でも大丈夫」だと思っているという信頼と甘えによるものだと認識はしています。……が、やはり限度を超えたら「そんなコミュニケーションでは通じないよ」と知らせます。

それはそれでめんどくさいのですが……。先回りして息子の要求をかなえてやれば、それ以上あーだこーだ言われることもなく楽です。でも「指摘するのめんどくさいなあ」と手を抜いて、察して先回りする母親をやり続けた結果……将来、パートナーに「うちのお母さんはやってくれたよ? 」と、雑な要求をする男になったらと思うと、責任を感じます。

将来、息子がどんな仕事に就こうが、生きたいように生きればいいと思ってはいるのですが、勘違いした「モラハラ男」になるのだけはイヤ……! これから思春期が来て親と話さなくなったら……? という状況も心配しつつ、それでも「男の子はそんなものだよね」とか諦めずに、丁寧なコミュニケーションをしていきたい。そして、息子も丁寧なコミュニケーションができる人間になってほしいと思っています。

新刊『骨髄ドナーやりました!』

(少年画報社刊/1,045円)
初代骨髄バンクアンバサダーの俳優・木下ほうかさんも「『ちょっと人の命を助けて来るから!』。こんなカッコいいことを言い放つお母さん。私はこんな最強マンガを待っていました」と絶賛する書籍が発売!! 日本骨髄バンク完全監修の爆笑必至の骨髄ドナー体験マンガです!
夫婦揃って献血が好きで、骨髄ドナーに登録しているさるころとノダD。2人は事実婚・共働きで息子を育てています。夫のノダDは今までに3回骨髄ドナーにマッチングをしていて、3回目で骨髄提供をしました。そんなある日、骨髄バンクから届いた書類をよく見ると、なんと今度は妻のさるころが骨髄ドナーにマッチングしたお知らせでした……! 非血縁ドナーのマッチング確率は数百~数万分の1とも言われており、骨髄ドナーは登録してもマッチングするとは限りません。そんな中、なんと夫婦で2年連続ドナーを体験。そんな激レアなn=2のリアルガチな体験談をあますことなくお届けします! 詳しくはコチラ

著書『どんどん仲良くなる夫婦は、家事をうまく分担している。』

(幻冬舎/1,100円)
全編書き下ろしエッセイマンガ!
バツイチ同士の事実婚夫婦にめでたく子ども誕生! ここから「家事と育児をどうフェアにシェアしていくか」を描いたコミックエッセイです。家事分担の具体的な方法から、揉めごとあるある、男の高下駄問題、育児はどうしても母親に負担がいってしまうのか、夫のキレにどう対処する? などなど、夫婦関係をぶつかりつつもアップデートしてきた様子を赤裸々に描きます。くわしくはコチラ

著者プロフィール:水谷さるころ

女子美術短期大学卒業。イラストレーター・マンガ家・グラフィックデザイナー。
1999年「コミック・キュー」にてマンガ家デビュー。2008年に旅チャンネルの番組『行くぞ! 30日間世界一周』に出演、のちにその道中の顛末が『30日間世界一周! (イースト・プレス)』としてマンガ化(全3巻)される。2006年初婚・2009年離婚・2012年再婚(事実婚)。アラサーの10年を描いた『結婚さえできればいいと思っていたけど』(幻冬舎)を出版。その後2014年に出産し、現在は一児の母。産前産後の夫婦関係を描いた『目指せ! ツーオペ育児 ふたりで親になるわけで』(新潮社)、『どんどん仲良くなる夫婦は、家事をうまく分担している。』(幻冬舎)が近著にある。趣味の空手は弐段の腕前。