ヘルパーさんに頼めない作業への対処や、できるだけ長く自分でできることを維持するために、工夫できることはいろいろとあります。今は何でもネットで調べたり用意したりできる時代です。工夫次第では、これからの高齢者は介護を依頼する度合いが少なくできる可能性はあると考えています。

住まいの見直し

バリアフリー化は認知されていますが、近くに日常の買い物ができるお店があり、そこまでバリアフリーで行けるところまでを想定しましょう。老後はコンパクトな街中マンションを選択するケースも多くなっていくでしょう。

掃除・洗濯

日常の洗濯や掃除は、本人分に関しては介護保険の対象ですが、少なくとも1割負担は必要です。また、大掃除には介護保険は使えません。不用品をきれいさっぱり処分し、室内を埃が立たない(モノが少なく、収納にすべて収まっているなど)ようにして、日常的な掃除はロボット掃除機などを活用すれば、掃除費用は大幅に削減できます。

洗濯物も日光に当てたいところですが、家事が負担になればそのまま乾燥機で乾燥でもやむをえません。とにかく、シンプルな生活が介護費用を少なくします。

預金の出し入れ

これから高齢になる方は、誰もがネットを活用できると思いますので、ネットで出し入れや送金できる環境を整えておけば便利です。ネットで身の回りの物を購入し、決済もそのまま済ませ、製品を自宅の宅配BOXに届けてもらい、ヘルパーさんが来たときに部屋まで持ってきてもらう……これで大抵のことができるはずです。

ベッド周りの工夫

パソコン操作とネット環境があれば、ベッド周りで仕事も可能でしょう。スマートフォンなどでもよいですが、世の中とつながりを維持するためにも老後のネット環境は大切です。テレビやラジオや電話も含めてどのシステムを利用するかを検討し、ベッド周りの電源・通信環境を考えてください。

また、電子レンジと電気ポット、レトルト食品のストックなどが手に届くところにあれば、できることの範囲が広がります。今はさまざまな商品があふれているので、判断力があり、上半身が起こせて手が自由であれば、バリエーションあふれる食事が作れると私自身は思っています。さらに小さなシンクがあれば、食器洗いや洗顔、歯磨きも可能でしょう。

以前、レールの上をスライドして部屋を移動するベッドを設計したことがあります。それを電動にすれば、水回りコーナーや仕事コーナーなどへスライド移動できるのではないかと思います。リクライニングや上げ下げなどの機能追加も不可能ではないでしょう。

そして、将来介護室になる可能性がある部屋には、コンセントや上下水の設備を適切な場所に用意しておくと役に立ちます。高齢者はコンセントの数が多く必要になると覚えておいてください。

■ 筆者プロフィール: 佐藤章子

一級建築士・ファイナンシャルプランナー(CFP(R)・一級FP技能士)。建設会社や住宅メーカーで設計・商品開発・不動産活用などに従事。2001年に住まいと暮らしのコンサルタント事務所を開業。技術面・経済面双方から住まいづくりをアドバイス。