日本では1,000種類以上のクレジットカードが発行されており、それぞれに強みが異なる。そのため、クレジットカードは複数枚持ち、各カードの強みを使い分けることで、全体の還元率を高めたり、弱点を補強したりできる。今回は2枚目、3枚目とクレジットカードを増やす場合に、意識しておくべき点を紹介する。
付帯サービス目的なら年会費が安いカード
クレジットカードを増やす目的は、より高い還元率を得たい場合、1枚目のカードにはない付帯サービスを使いたい場合の2通りに分かれる。後者の場合は旅行傷害保険や空港ラウンジサービスなどが考えられるが、基本的な考え方は単純で、できるだけ安い年会費で目的を満たせるカードを選べばいい。
ちなみに旅行傷害保険を付帯したカードを複数枚持っている場合、死亡・後遺障害以外の項目は補償額の合算が可能。たとえば海外旅行中に急病で400万円の治療費がかかった場合、最高200万円を補償するカードを2枚持っていれば、全額の補償が受けられる。死亡・後遺障害の場合は、原則として保有するカード(および同種の保険)のなかで最も高い補償額が限度となり、各カードの保険で按分して支払われる。
還元率目的ならポイント有効期限に注意
還元率をアップさせることが目的の場合、少し話は複雑になる。基本的な考え方としては、1枚目に還元率1%の「Aカード」を持っていたとして、2枚目に通常は0.5%還元だがBという店では5%還元の優待を受けられる「Bカード」があったとすれば、普段は「Aカード」で払い、B店でのみ「Bカード」で払ったほうが得ということになる。
2枚目のカードで、まず気をつけたいのは年会費。いくら5%が還元されても、それ以上に年会費が高ければ意味がない。B店で年間いくら利用するのか、その結果いくら還元されるのか、年会費を差し引いても「Aカード」より得するのかを事前にシミュレーションする必要がある。
次に注意すべき点はポイント有効期限。一般的にポイントには有効期限があるうえ、必ずしも1ポイント単位で使えるとは限らない。たとえばポイント有効期限が2年で、1,000ポイントからしか利用できないなら、5%のポイントが貯まるとしても年間1万円は利用しなければ失効してしまう。また、「Bカード」を利用した分、「Aカード」で貯められるポイント数は減ってしまうため、状況によっては「Aカード」のポイント有効期限にも注意する必要がある。
ボーナス制度がある場合は計算が複雑に
「Aカード」が年間利用額に応じたボーナス制度を持っている場合、さらに状況は複雑となる。たとえば「Aカード」に年間100万円以上利用するとボーナスポイントがもらえる制度があり、普段の年間利用額が100万円だったとしたら、「Bカード」を使うとボーナスポイントの条件を満たせなくなってしまう。年間利用額に応じてボーナスポイントや年会費の優遇が受けられるカードは多数あるので、しっかり損得勘定をしたうえで利用したい。
年会費が無料でポイント制度もシンプルであれば、そんなに難しいことを考えなくても済むが、実際は誕生月に還元率がアップするカードがあったり、電子マネーのチャージはポイント対象外となるカードがあったり、簡単に計算できない場合が多い。2枚目、3枚目のクレジットカードを作る際は、目先の還元率に惑わされず、冷静に判断することが必要だ。
なお、管理が面倒だから1枚に絞りたいという人もいるだろうが、2枚目のカードは持っておいたほうがいい。なぜなら決済に使う磁気部分が壊れたり、紛失・盗難・不正利用などの被害に遭ったりした場合、使えるカードがなくなってしまうからだ。また、複数枚のカードを持つ場合は、1枚目と異なる国際ブランドを選んでおくと、使えるサービスの範囲も広がる。
■ 筆者プロフィール: タナカヒロシ(ライター・編集者)
普段は音楽やエンタメ関係の仕事が多いが、過去に勤めていた会社の都合でクレジットカード本を作ったことをきっかけに、クレジットカード、電子マネー、ポイントなどに詳しくなる。以降、定期的にクレジットカードのムック本を編集・執筆。3月8日発売の『最強クレジットカードガイド2017 本当にトクするカードの選び方・使い方=写真=』(角川SSCムック)では、編集統括および記事の大部分を執筆している。