「現代の若者は車離れが加速している」といった話も聞きますが、1970年代のスーパーカーブームで育ったミドル世代としては、憧れの車種がひとつやふたつあるものです。そこで本連載では、ミドル世代が「いまコレに乗りたい!」と思うような四輪自動車について、新旧を問わず紹介していきます。
今回紹介するのは、米ゼネラルモーターズの「第2世代 ポンテアック・ファイヤーバード・トランザム」です。
「マッスルカー」の中でも花形的存在
ポンテアック・ファイヤーバード・トランザムといえば、アメリカの特撮テレビドラマ「ナイトライダー」に登場した、さまざまな特殊装備と人工知能「K.I.T.T」を搭載したドリーム・カー「KNIGHT 2000」を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。
もちろんこちらのベースとなった"第3世代"のポンテアック・ファイヤーバード・トランザムも素晴らしい車なのですが、それはまた次の機会に。
今回は先代の"第2世代"を中心に紹介していきましょう。アメリカで1960年代後半~1970年代にかけて製造されたスポーツカーの中でも、特に高出力なV8エンジンを搭載したFR(後輪駆動)のモデルを「マッスルカー」と呼びますが、第2世代 ポンテアック・ファイヤーバード・トランザムは、まさにその花形的存在といえます。
男心をくすぐるデザインへと一新された第2世代のファイヤーバード
ファイヤーバードは、米ゼネラルモーターズが「ポンティアック」のブランド名で1967年から販売していた2+2仕様のスポーツクーペです。
「トランザム」は車名ではなく、その最上級グレードの名称で、当時行われていたSCCA(Sports Car Club of America)による市販車ベースのレースシリーズ名「Trans-American Sedan Championship」を由来としています。車体の側面が中央部でくびれている、通称「コークボトルライン」の美しさでも有名となりました。
1970年に登場した第2世代のファイヤーバードでは、この特徴的だったコークボトルラインを廃止。全体的に"渋さ"や"厳つさ"などが感じられる、男心をくすぐるデザインへと一新されました。
グレードは「エスプリ」と「フォーミュラ400」、そして高性能エンジンやエアロパーツを備えた最上級グレード「トランザム」の3種類です。ここから第2世代のファイヤーバードは1981年まで、時代の流れに応じてさまざまな変化を遂げていきます。
レース仕様の心臓を持つ特別なトランザムも
1970年モデルには、「ラム・エアーIII(約6.5L/345馬力)」と「ラム・エアーIV(約7.5L/370馬力)」という2種類のエンジンが用意されました。ラム・エアーとは、ターボのようにタービンによる空気の強制加圧で高出力を得るのではなく、走行時の風圧を利用して加圧する方法です。
特にラム・エアーIVでは、フロントウインドウの前方で空気の圧力が高くなることを利用し、進行方向と逆向きにボンネットスクープの開口部を設けた「リバースドエアスクープ」を採用しています。
さらに1973年と1974年には、特別仕様のエンジン「SD-455」を搭載したトランザムも提供されました。このエンジンはNASCAR仕様のレースエンジンをベースとしたもので、公式出力こそ290馬力と記されていたものの、少し手を加えるだけで500馬力以上を叩き出す名機として知られています。
しかし、排出ガス規制などの影響もあり、エンジンの排気量や最高出力はこの時期をピークに抑えられていく傾向となりました。
フェイスリフトでより男心をくすぐる顔に
エクステリア(ボディ、バンパー、エアロパーツなど外から見えるすべて)については、1973年の保安基準改定を受けて、1974年モデルからフロントバンパー部分が前方にせり出したショベルノーズへとフェイスリフトを実施しました。
1977年には通称「イーグルマスク」と呼ばれる、SAE規格対応の角型4灯ヘッドランプを採用。こちらは同年に制作されたバート・レイノルズ主演のアメリカ映画「トランザム7000(原題:Smokey and the Bandit)」でも使われています。そして1979年にはフェイスリフトと同時に10周年モデルが発売され、第2世代ファイヤーバードの最終形態となったのです。
ファイヤーバードはその後、よりスポーティーな外観を持つ第3世代・第4世代へと進化していきましたが、独特な"ちょい悪顔"の第2世代にはいまだに多くのファンがいます。3度のフェイスリフトで少しずつ雰囲気が異なる第2世代ファイヤーバード、皆さんはどの顔がお好みでしょうか?