「なるほど、そういうことだったのかもしれないな」と後になって気付くことがある。今回はそんな話をひとつ紹介しよう。
ソフトバンク傘下の米携帯通信会社スプリントで、米国時間6日に経営トップ交代のニュースがあった。業界第3位とはいえ加入者数約5500万人という大企業(しかも読者に身近な携帯通信業界)の話だから、Bloombergのような経済ニュースサイトではちょっとした騒ぎになっていた。
新しいCEOに任命されたのはマルセロ・クラウレという43歳になる実業家。昨年、自分で興した携帯電話卸売会社ブライトスターの株式の過半数をソフトバンクに売却し、その縁でソフトバンクの社外取締役に……と、このあたりまではふつうのニュースでも、無難に書かれているのではないかと思う。
ところで、クラウレという人物の「人となり」を伝えたBloombergの記事のなかに次のような面白い一節がある。
「(マイアミでブライトスターを創業して成功させた)クラウレは今年に入って、マイアミで街の名士となっていた。ジェニファー・ロペス(J-Lo)主催のパーティで知り合ったデヴィッド・ベッカムといっしょに、マイアミ・ヒートの試合をコートサイドで観戦したり—(略)—ベッカムと、テレビ番組『アメリカン・アイドル』のプロデューサーであるサイモン・フラーともに、マイアミにMLS(北米プロサッカーリーグ)のチームを誘致する計画をぶち上げていた」……
クラウレ氏はどうやらマイアミ人脈の名士であるようだ。
さて。
実はこのクラウレ氏、以前にも1度、大勢の人前に立っていたことがあった。昨年5月にJ-Loが音頭を取ってヴィヴァ・モヴィル(Viva Móvil)という携帯端末販売会社を立ち上げた際のことで、この時にはJ-Lo、それにヴェライゾン(Verizon、米業界首位の携帯通信会社)の女性幹部とともに、発表のステージに上がっていた。
「Mobile and Serving Needs of Latino Consumers - VerizonWirelessTV」
3人が一緒にステージに上っていたのは、クラウレのブライトスターとヴェライゾンがヴィヴァ・モヴィルに出資していたから。J-Loは「ラティーノ(ヒスパニック系米国人)は買い物のしかたひとつとっても他のエスニックの人たちとは違うから、ラティーノ向けに内装などを工夫した販売店チェーンをつくれば事業を成功させられる」云々とコメントしていたのを覚えている。
[Alberto Sardiñas interviews Jennifer Lopez and Marni Walden about the launch of Viva Movil]
[#AnythingCanHappen at Viva Móvil - Jennifer Lopez]
問題はこの後のこと。
7月のはじめ、ちょうとサッカーのワールドカップ(W杯)が開催されていた時期に、それに無理矢理あて込んだような記事が掲載されていた。「J-Loのケータイ販売会社に何があったのか」という題名の付いたこの記事のなかには、「鳴り物入りでスタートしたけれど、どうも調子がいまひとつパッとしない」「バークレイズ・センターの真ん前という絶好のロケーションに開店した店舗に足を運んでみたところ、閑古鳥が泣いている状態だった」「ヴィヴァ・モヴィルの店舗数は全米で15店まで拡大したけれど、ブランドの認知度はいまひとつ」などと書かれてある。
この記事を目にした時には、「セレブ・ビジネスも簡単に成功するとは限らないんだな」とか「J-LoはForbesのセレブ・ランキングでも今年は33位まで下がってしまったものな」などとぼんやり感じたが、それだけだと原稿も書けないので、このネタはそのままにしていた。
結局、J-Loはヴェライゾンとブライトスターというそれぞれの分野で力のあるパートナー企業を味方に引き入れたところまではよかったものの、その後この出資元同士が敵対関係になってしまったことがあだになったようだ。ブライトスターがソフトバンク陣営に入ったことで、なにか思い切ったことしたくとも好きに出来ないような立場に立たされてしまった、ということかもしれない。
さらに、今回の人事で肝心のクラウレがスプリントの経営トップになってしまったのだから、J-Loはいわば「股割き状態」ということになる。
J-Loがこのピンチをどう乗り切るか……ファンとしては注目しないわけにはいかない。
追記1:ボン・ジョヴィ、NFLバッファロー・ビルズ買収に名乗り
[Jon Bon Jovi... New Owner of the Buffalo Bills? - Bloomberg]
コンサートツアーで稼ぎまくるボン・ジョヴィのリードボーカル、ジョン・ボン・ジョヴィが、バッファロー・ビルズ(NFLの古豪チーム)買収で正式に名乗りを挙げたらしい。共にチーム購入を目指し動いているグループのなかには、カナダの大手通信会社ロジャーズの創業一族メンバーなども含まれているという。ただ、ドナルド・トランプあたりも以前からビルズ獲得に意欲を示しているそうで、今後の波乱が予想される。
追記2:ビヨンセ&ジェイ・Z、“On the Run”北米ツアーの売上1億ドルを突破
[The Business of Bey & Jay: Who's the Bigger Draw? - Bloomberg]
「チケット売上1億ドル超」「観客動員数約85万人」「サンフランシスコでのライブでは、チケット平均価格244ドル」といった数字が出てくる。不仲説も流れているが、稼ぐときは夫唱婦随か。