ジェイ・Zが7月4日にリリースした新作アルバム『Magna Carta Holy Grail』について、米国でサムスンとのコラボでプロモーションを展開する、という話を以前に記した。いま米国ではこの制作風景をフィーチャーした「Galaxy」のテレビCMが流れているらしい。
YoutubeにあるSamsung Mobile USAのチャネルをみると、いまのところ(7月2日現在)7本のビデオが公開されている。最初の告知ビデオ以外は、アルバムに収録される楽曲にちなんだもので、『Jay Z Blue』と題する上掲のビデオもそのひとつ。この話題に触れたHuffington Post(HuffPo)の記事によると、ジェイ・Zは愛娘ブルー・アイビーについて「(ビヨンセとふたりで)創造したもの」で、生後1年以上が経ったいまでも「まだ驚かされる時がある」などと語っているという。
またジェイ・Zはプロデューサーのリック・ルービン(ひげもじゃの白人男性)を相手に、自分の生い立ちについても話をしている。「親父はオレがガキの時にいなくなった。(略)だから、たとえば『どうやれば大人の男になれるのか』『子供はどう育てるのか』『女性をどう扱えばいいか』といったことを(親父からは)教わらなかった」などと語り、さらに「オレに必要なもの、オレにないものは二つ(略)。でもいまは娘がいる」といった言葉を口にもしている。どことなく声が涙ぐんでいるように聞こえるのは、そんな話の(内容の)せいかもしれない。
'Jay-Z Blue' Commercial Sees Rapper Talking Fatherhood, 'Magna Carta Holy Grail' - Huffington Post
このほか『Heaven』という曲も娘についてのもので、こちらのなかでは、「天国のイメージというと、自分は娘が笑う姿を思い出す。また地獄というと、自分の子供が3分間姿を消すといったイメージが浮かぶ」などとジェイ・Zは話している。
新作アルバム自体については、『Holy Grail』という曲でジャスティン・ティンバーレイクと共演するとか、ビヨンセも『Part II (On the Run)』という曲でゲスト出演するとか、ファンにはいろいろと楽しみな話もすでに出ているようだ。
Jay-Z and Justin Timberlake's New Song "Holy Grail" Is About Kurt Cobain
『Magna Carta Holy Grail』が果たして、発売1週目からアルバムチャートの1位にランクインするかどうか。そうなるとすると、リリースから間もないカニエ・ウェストの『Yeezus』を蹴落として、ということになる。いずれにしても注目の話題である。
さて、そのカニエ・ウェスト。さきほどThe Hollywood Reporter(THR)のウェブサイトにある「Music」カテゴリーにアクセスしてみたところ、サブカテゴリーのところに「BET AWARD 2013」「BILLBOARD CHATS」「MUSIC FESTIVALS」とならんで「KANYE」というのあるのを発見。その左下「TOP ALBUMS」にはカニエの新作『Yeezus』のCDジャケット(というかジャケット抜きでむき出しのCDとケースの写真)ーーBillboardの週間アルバム売上ランキングで、見事に発売1週目からNo.1にランクインしていたようだ。
そのカニエの「ハチャメチャな天才ぶり」を物語るエピソードを、『Yeezus』の制作にもエグゼクティブ・プロデューサーとして参加したリック・ルービンが、The Daily Beast/Newsweekとのインタビューのなかで語っている(以前に触れたWSJとのインタビューにも同じ話が出ている。ちなみに、このルービンという御仁、古くはLL・クール・Jやビースティ・ボーイズ、Run-D.M.C,、エアロスミス、レッド・ホット・チリ・ペッパーズ、そして最近ではアデルの『21』やブラック・サバスの最新作『13』まで手がけた「稀代のヒットメーカー」らしい)
Rick Rubin on Crashing Kanye's Album in 15 Days - The Daily Beast
ルービンによると、カニエから彼のもとへ協力の打診があったのが、『Yeezus』リリース予定日の約5週間前。しかもその時点で出来上がった曲はひとつもなく、録音はおろか、作詞もこれからというものがたくさん含まれていた。そのため、これを完成まで持って行くにはふつうなら少なくともあと数カ月はかかる、といった状態だったらしい。ルービンが「来年にでも出すスケジュールなんだろう」と勝手に思いつつ、カニエに「いつまでに終わらせようと思ってる?」と訊ねたところ、カニエはまったく悪びれた様子もなく「5週間後」と答えた、などとある。
さらに驚くのは、締め切り(アルバムの完成期限)まであと2~3日という時になって、カニエが「オレは今夜、ミラノに行くことになっている」と言い出したこと。おまけに「その前に、キム・カーダシアンのところでベビーシャワー(出産の前祝い)があるから、それに顔を出さなくてはならない」といってスタッフを唖然とさせたが、カニエは「心配するな。午後4時から6時まで2時間(時間の空きが)ある。第4クォーターに40ポイント入れてみせるから」と言って、カーダシアンのところへ戻っていったらしい。その時点で未完成の曲が5曲、しかもそのうち2曲はまだリリックもできていなかったという。
その後カニエが録音スタジオに戻ってきたのは結局午後の4時過ぎで、本番の録音を始めたのは午後5時を回ってからだった。「あと1時間10分ある。さあ、始めよう」といったカニエは、それから2時間ほどできっちり5曲仕上げた(その場で2曲分のリリックもでっち上げた)のだそうだ。まさに「JK」--”Jenius Kaye”の面目躍如といったところである。
追記:有名人ジュニアたちの変わった名前
THRのサイトに「ノース・ウェスト嬢誕生記念」と思われるちょっとした特集ページがある。「Craziest Celebrity Baby Names」と題するこのリストのなかには、「ブルー・アイビー」(Blue Ivy、ビヨンセ&ジェイ・Z夫妻)、「アップル」(Apple、グウィネス・パルトロー&クリス・マーティン夫妻)といったお馴染みの名前に加えて、マイケル・ジャクソンが養子にした「ブランケット」(Blanket)やプリンス(Prince)、兄のジャーメイン・ジャクソンが男の子につけた「ジャーマジェスティ」(Jermajesty)、さらには「パイロット・インスペクター」(Pilot Inspektor)、モクシー・クライムファイター(Moxie Crimefighter)などという有名人の子供たちの名前が並んでいる。なかでも一番驚いたのは、「デストリー」(Destry)という名を末娘につけた映画監督のスティーヴン・スピルバーグ。THRの説明によると、Destryという言葉には「軍馬」(war horse)という意味もあるのだとか。しかもこのDestry Spielbergが大会にも出場するような、なかなかの乗馬の名手……というのだから、なんとなく話が出来過ぎとも思えてしまう。