「アメリカン・アイドル」で司会を務めるライアン・シークレストが、ジャスティン・ビーバーやレディー・ガガよりもたくさん稼いでいる。そう聞いたら、ちょっとびっくりされないだろうか……。

今月半ばに発表されたForbes誌の「世界で最もパワーのある有名人」(Celebrity 100)ランキングには、そういうちょっと興味深いデータが並んでいる

Forbes: The  World's Most Powerful Celebrities

将来、ハリウッドを背負って立つ男、ライアン・シークレスト
Erik Ovanespour / (C)A.M.P.A.S.

このランキング自体は、タレント(ハリウッドの著名人のほかスポーツ選手なども含む)の収入("Pay")以外に、テレビやラジオでの露出度など、あわせて5つの項目を総合した結果となっており、今年の1位はやはりアメアイで審査員をつとめ、それをテコに人気を盛り返したジェニファー・ロペス。2位以下にはオプラ・ウィンフリー、ジャスティン・ビーバー、リアーナ、レディー・ガガ、ブリトニー・スピアーズなどの名前が並んでいる。

そして、総合ランキングの29位にライアン・シークレストの名前が出てくるのだけれども、稼ぎの額だけをみると、シークレストは推定5,900万ドルで19位。6,000万ドルのボン・ジョヴィと5,800万ドルのブリトニーに挟まれる格好で、ジェニファー・ロペス(5,200万ドル)、レディー・ガガ(5,200万ドル)、リアーナ(5,300万ドル)、ジャスティン・ビーバー(5,500万ドル)、テイラー・スウィフト(5,700万ドル)といったいまをときめく若手アーティストよりわずかながらも多くなっている。

ちなみに、同業者(司会業が中心のタレント)では、自分のメディア帝国を築いたオプラの1億6,500万ドル(全体1位)は別格として、グレン・ベック(8,000万ドル)、それに先日シークレストが豪邸を買い取ったと伝えられたエレン・デジェネレス(5300万ドル)などの名前がみえる。そのいっぽう、プロスポーツの世界からはゴルフのタイガー・ウッズ(5,800万ドル)、NBAを代表するレブロン・ジェームス(5,300万ドル)、やはりNBAのコービ・ブライアント(5,000万ドル)、サッカーのデイビッド・ベッカム(4,600万ドル)などが上位に食い込んでいる。

そうして、ここが注目だが、アメアイと競合する「X-Factor」のプロデューサー兼審査員でもあるサイモン・コーウェルはなんと年収9,000万ドルで、稼ぎの多さで9位に入っている(総合でも18位)。

ところで。

昨年末に劇場公開され、しばらく前にDVDも出た映画「ニューイヤーズ・イブ」。あの映画を観られた方は、シークレストが大晦日のタイムズスクエアで行われるカウントダウンにMCとして登場している場面を思い出されるかもしれない。


あのカウントダウン番組のMCを長く務めていた名物司会者ディック・クラークが今年春に亡くなった。クラークと言えば、年配の方には、むかしFENで流れていた音楽チャート番組のDJとして記憶されている方もいらっしゃるだろう。おなじ司会業の大先輩でもあり、事業家としても成功したクラークの亡き後、その跡目を継ぐ最有力候補として、シークレストが改めて注目を集めている……そんな話がしばらく前にNew York Timesで報じられていた。

Seacrest Assembles TV Empire

このNYTimesの記事によると、シークレストは成功のきっかけとなったアメアイ(長く視聴率トップの座を占めてきたテレビ番組)や、前述の大晦日の特別番組の司会のほか、クリアチャネルのネットワークを通じて全米で放送されている自分のラジオ番組を持ち、さらに近年では自分で作った会社でテレビ番組の制作にも乗り出すようになっていて、最近では英国人料理家のジェイミー・オリバーと一緒に「米国の学校給食を良くする」ことをテーマにしたリアリティ番組などもつくっているとのこと。こうした「多角化」が奏功し、トップクラスの人気アーティストやプロスポーツ選手と肩を並べる収入を得るようになっている、ということらしい。

ちなみにこの記事では、そのシークレストが4月末にNBCと大型契約を交わした結果、夏のロンドン五輪や、場合によっては秋の大統領選関連の放送にも登場する可能性がある、と書かれている。

さて。若干37歳にして「メディア界の大立者」になりつつあるシークレストだが、それでも決してすべてが順風満帆とはいかないようだ。世に出るきっかけとなったアメアイが今シーズンは不調、というのは前回の記事で触れた通りだが、先週半ばにWall Street Journal(WSJ)に出ていた記事によると、アメアイ最終回の視聴者数はついに約2,150万人にまで落ち込み、前年のフィナーレの時の2,920万人から3割近くも減少してしまったという。

'American Idol' Finale Audience Shrinks

この記事には、「2006年のピーク時には毎回平均で3,110万人が見ていた」とあるが、こうなるとFOXとしては同社幹部が口にしていた「大幅な再活性化」策の導入がますます急務になって……ということになる。そこで気になるのはレギュラー出演者の動向だが、これについてはまた改めて、とさせていただく(あしからず)。

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