今回も米大統領選、それに中国の政権交代にまつわる話などをちょっと書いてみる。

前回の記事のなかで、オバマ陣営が選挙戦の最終日にブルース・スプリングスティーン(「ボス」)とジェイ・Z(「ジガーマン」)のふたりを連れ出して遊説先でミニライブを行った……という話を書いた。その「行き届いた目配りぶり」に思わず「計算ずくの仕業」という言葉が浮かんでしまったが、実はこの起用がどうもほんとうに計算ずくーーそれも膨大なデータの分析結果に基づいてやった仕業だったらしい……と思わせるような話が雑誌TIMEの特集記事に出ていた。

Inside the Secret World of the Data Crunchers Who Helped Obama Win - TIME

この記事のなかには、ボスやジガーマンの名前は出てこない。そのかわりに、ジョージ・クルーニーとサラ・ジェシカ・パーカー(SJP)の名前が冒頭から出てくる。これも以前に少し書いたが、今年春にジェフリー・カッツェンバーグツ(ドリームワークスSKG)が企画して、ハリウッドにあるクルーニーの邸宅で開いた選挙資金集めのパーティが大成功を収めた。それに味を占めたオバマ陣営が、「東海岸でも」と柳の下の2匹目のドジョウ狙いでデータマイニングして、その結果白羽の矢を立てたのがSJPだった……ということだったらしい。

[So they are fashionable after all! SJP joins catwalk models and tech moguls in trying out Google glasses at New York Fashion Week show - YouTube]

SJPが「自宅でオバマ大統領支援の夕食会を開きます。参加希望者はぜひ応募してね」と呼びかけるのこのビデオ。その実現した背景には、そういう計算もあったということになる。SJPについてはハリウッドの「女性政治委員会」(Women's Political Committee)の有力なメンバーとして知られる、といった記述もWikipediaにはみられるので、そういう下地もあっての起用だったのだろうが。


Sarah Jessica Parker's Obama Fundraiser: Did Stars Really Pay $40,000 To Dine With The President? - Huffington Post

ちなみにこのパーティ、「有名人の特別扱い」といったものは一切なく、「女優のメリル・ストリープや、VOGUE編集長のアナ・ウインターも含め、参加者は全員が自腹で4万ドルのチケットを買った」とのこと。ただし、「参加者は全員がとても裕福だから、ほとんどの人にとっては4万ドルといってもたいしたことはない」、そして「キャリー・ブラッドショー(SJPの『セックス・アンド・ザ・シティー』での役柄)の家でほんものの大統領やファーストレディと食事ができるというのは、それこそ一生に一度の経験だから、もっと払ってもいいという人も大勢いただろう」だそうである(Huffing Post記事にはそう書かれている)。

さて。特定の年齢層のご婦人方に対して、大統領(候補)もおもわず頼りたくなるほどの影響力をもつとなれば、当然ほかからも声がかからないはずはない。そう考えると、今シーズンの『グリー』(いろんな芸能人が「いちど出てみたい」といっている人気のテレビ番組)にSJPが顔を見せているのにも腑に落ちるところがある。

GLEE - Full Performance of "The Way You Look Tonight" - YouTube

カート、レイチェルと一緒に披露した『今宵の君は』(ジェローム・カーンが1936年に作曲し大ヒットした、ブロードウェイ、そしてスタンダードの名曲)。SJPはもともとブロードウェイ出身の女優だから、この程度の歌とダンスは朝飯前かもしれない。それとは別に、オハイオからニューヨークシティへというSJPの実際の生い立ちは、偶然にもドラマ中のレイチェルのそれと重なる軌跡といえるかもしれない(SJPはシンシナチ生まれで、子どもの頃歌とダンスの英才教育を受けるために家族全員でニューヨークに引っ越したという)

ところで。SJPにアナ・ウインターときて、ひとつ思い出したことがある。それは9月はじめにダイアン・フォン・ファステンバーグ(DVF)がニューヨークで開いた来年春夏もののコレクション——ただし、ファッション自体ではなくて、そのランウェイなどで披露された「グーグル・グラス」のことである。

DVF [through Glass] - YouTube

3分28~30秒あたりに出てくるのがこの「グーグル・グラス」をつくっている、グーグル共同創業者のセルゲイ・ブリン、そしてその1人おいた隣にいて、DVFの頬にキスしているのが、おそらく亭主のバリー・ディラー("3分31秒"の部分)。このディラー、かつてパラマウント映画会長兼CEOを務めていた人物。その部下には「ウォルト・ディズニー中興の祖」ともてはやされたマイケル・アイズナーや現ドリームワークスSKGのジェフリー・カッツェンバーグがいた。

さらに、「ニューズコープのルパート・マードック会長に請われて就いたフォックス会長時代には、それまで不可能といわれていた『4つめの全米テレビ放送網』を成功させた」「QVCというケーブルテレビのテレビ通販で、ジルコニアのアクセサリーを売りまくって財を成した」「世界一大きなヨットの所有者として、ラリー・エリソン(オラクル会長)としのぎをけずる」などいろんな話がついてまわるメディア/ネット界の大立者("mogul")のひとり(現在はIAC(Match.comからVimeo、Newsweek / The Daily Beastまでさまざまなサービスを保有)だ。

そのディラーのとなりにDVFの洋服を着用したSJPの姿が見える。それから、ギリギリ最後("3分46秒")のところで一瞬だけ馴染みのあるマリオ・ヴァレンティーノの顔が出てくるのは錯覚かと思ったが、下記のビデオをみるとやはりこのショーに顔を出していたことがわかる。


[So they are fashionable after all! SJP joins catwalk models and tech moguls in trying out Google glasses at New York Fashion Week show - Dailymail (UK)]

追記.1

別れても仲良く(?)オバマを支持していたJ.Loとマーク・アンソニー(元夫婦)

[Jennifer Lopez: Join Latinos for Obama - YouTube]

[Marc Anthony: "El Presidente nos Apoya." - YouTube]

追記.2

ジェイ・Zが「最後のお願い」ライブで、自分の持ち歌「99 problems」で、歌詞の「Bitch」(英語では放送禁止用語でかならず伏せ字「B**」などと表記される)の部分をロムニー候補のファストネーム「Mitt」に置き換えてラップ("I’ve got 99 problems but a Mitt ain’t one")していたのは前回記事でもちょっと触れた。その翌日深夜、オバマ当確がきまった直後には、今度がビヨンセが第一声代わりに「TAKE THAT MITCHES」というフレーズを手書きしたメモの画像をTumblrのアカウントで公開して一部で話題になっていた(“Take that, bitches”はやはり人前でつかうと眉をしかめられる侮辱の言葉)。なんともあっぱれな夫唱婦随ぶりである。

Beyonce taunts Mitt Romney supporters with handwritten note [PHOTO] - DailyCaller

追記.3

オバマ大統領が、ジェイ・Zと自分の共通点は「娘がいること、そして自分よりもポピュラーな(人気のある、人に知られた)妻がいること」というジョークを飛ばしていたのは以前に書いた通り。

Obama: Jay-Z and I have a lot in common - Politico

この発言がどこまで冗談でどこまで本気かは定かでないが、それに対してこのほどついに中国の新しい主席になることが確定した習近平氏——2月にカッツェンバーグらとLAレイカーズの試合観戦をしていたあの習氏——の場合は、まちがいなく「亭主よりも奥さんのほうが有名な夫婦」らしい。

Sharing the Spotlight in China - WSJ

習新主席の奥さん——中国の新しいファーストレディとなる彭麗媛という人は、人民解放軍専属の人気の高い「国民歌手」。亭主が出世するのにあわせて、最近では派手ないで立ちで表に出ることも少なくなってきたが、それでも建国記念や新年のお祝いのコンサートといった節目の行事ではかならず顔をみせ、一曲歌って「会を締める」ような存在らしい。

実際に「彭麗媛」(Peng Liyuan、簡体字表記は「彭丽媛」)でウェブを検索するとたくさん動画がみつかる。

[阳光路上情满怀-2012年军民迎新春文艺晚会【13】歌舞《江山》彭丽媛 - YouTube]

もっとも、これだけグローバル化が進んだ現代に、いくらお上の規制が厳しい中国でもこうした「政府のお墨付き」の芸能しか出回っていないということはないらしく、やはり若者は西側文化の影響を受けたものをしっかり吸収しているようだ。いま人気と実力ともに(それにライブのギャラも)「いちばん高い」パフォーマーの1人とされるジェーン・チャン(Jane Zhang)などもそんなシンガーで、彼女が「子どもの頃、マライア・キャリーの影響を受けて育った」というのは一部で有名な話。

[张靓颖-我相信 [1080P] - YouTube]

現在アジアツアー中。これは、今年9月にあったシンガポールでのものらしい。

[Jane Zhang - I Didn't Know - YouTube]

アルファベットの名称がいつの間にか「Jane Z」に変わっていてちょっと可笑しい。

[At Last - 張靚穎 Official MV - YouTube] ビヨンセや(クリスティーナ)アギレラの熱唱もある、エッタ・ジェームスの代表曲「At Last」をカバー。