JR東海とJR西日本の境界となる米原駅。東海道新幹線の停車駅であり、在来線は東海道本線と北陸本線が乗り入れる。名古屋方面から列車に乗って来ると、いよいよここから関西か……という印象を持つ駅だ。
関西で麺類といえば、そばよりもうどんのイメージが強い。出汁(だし)も関東の醤油ベースから、昆布ベースの澄んだものが好まれている。駅そば・うどんも「米原から出汁が変わる」と言われており、それを確かるために米原駅の「井筒屋」を訪ねてみた。
井筒屋は安政元年に創業した旅籠屋をルーツに持ち、1889(明治22)年、東海道本線開通と時を同じくして駅弁を販売しているという老舗業者である。立ち食いそば店は新幹線ホーム・在来線ホームともにあり、昭和の風情の残る店構えとなっている。
今回は在来線の5・6番線ホームにある店舗に入ってみた。貼られたメニューを見ると「海老天うどん(そば)」というように書いてあり、うどんが第1の選択肢となっている様子。そう、米原駅の店舗は立ち食いうどん店なのだ。
この店で一番人気という「肉うどん」(450円)をオーダーしてみる。出てきたうどんは、昆布香る澄んだ出汁。ネギも青ネギで、これぞ関西風。もちもちのうどんに甘辛く煮た牛肉がよく合っている。
お店の人に「やっぱりうどんを頼む方が多いんですか?」と聞いてみると、「案外、そばも多いですけどね」と意外な答えが。「関西風のそばが好きな方も多い」とのことで、なるほど納得だった。
井筒屋は駅弁も豊富だ。「元祖鱒寿し」は1937(昭和12)年から販売するベストセラー。10個入りは1,200円、5個入りは650円で販売している。他に近江牛を使用した「近江牛大入飯」(1,100円)なども人気という。
立ち食いそば・うどんの出汁が変わる米原駅。旅の分岐点となるこの駅で、関西風の味に出会う人もいれば、名残惜しく思う人もいるかもしれない。