「無痛分娩だと愛情が湧かない」「離乳食は手作りがいちばん」――昔から育児当事者を苦しめてきた子育てにまつわる迷信や神話、さらにネット社会で広がる真偽不明の育児情報。

そんな育児の「これってほんと? 」について、ツイッターで人気の小児科医・ふらいと先生をはじめとする専門家たちが答える1冊が登場しました。この連載では、『新生児科医・小児科医ふらいと先生の 子育て「これってほんと?」答えます』(西東社)より、一部抜粋してご紹介します。

夜泣きにお母さんは気づきお父さんは気づかないのは男女差?

  • ※画像はイメージです。

A. いいえ。

男女差ではなく子育てへの当事者意識の違いでしょう。日ごろお世話している人ほど、早く気づくはず。

夜泣きに対する反応の違いについて、男性は低い音が聞こえて女性は高い音が聞こえるという説もあるようですが、聴覚における男女差については、いまのところ根拠がないと考えてよさそうです。

お父さんとお母さんで反応に差があるとすれば、それは育児に対する当事者意識の差でしょう。泣かせっぱなしでいいと考える人は少ないと思います。でも、自分が対応しなくても誰かが対応してくれるという考えであれば、泣き声に気づかなくてもおかしくはありません。

ひとつの研究結果を紹介します。母親と父親に、録音した乳児29人の入浴中の泣き声を聞かせたところ、母親は98%が自分の子の泣き声を聞き分けました。母親らは全員、1日に4 時間以上を子どもと過ごしていました。

同様に1日に4時間以上を子どもと過ごしている父親は90%が聞き分けられたのに対し、4時間未満の父親の精度は75%にとどまりました。つまり、泣き声に対する反応は子どもとい っしょに過ごしている時間の長さによって左右されるということです。

夜泣きの原因は、ほとんどわかっていません。何をしても赤ちゃんが泣きやまず、自分の睡眠時間が削られて疲弊しきっているお母さんの話はよく聞きます。夜泣きがひどい場合、漢方薬を勧められることもありますが、すべての赤ちゃんに効果が期待できるわけではありません。ふたりで交互に対応してもたいへんなのですから、ひとりでの対応がいかに過酷かを一度想像してみましょう。

答えた人:新生児科医/小児科医・今西洋介

新生児科医・小児科医、小児医療ジャーナリスト、一般社団法人チャイルドリテラシー協会代表理事。漫画・ドラマ『コウノドリ』の取材協力医師。作中の今橋先生のモデルでもある。NICUで新生児医療を行う傍ら、ヘルスプロモーションの会社を起業し、公衆衛生学の社会人大学院生として母親に関する疫学研究を行う。SNSを駆使し、小児医療・福祉に関する課題を社会課題として社会に提起。一般の方にわかりやすく解説し、小児医療と社会をつなげるミドルマンを目指す。3姉妹の父親。趣味はNBA観戦。Twitter:@doctor_nw

『新生児科医・小児科医ふらいと先生の 子育て「これってほんと?」答えます』

(西東社刊/1,430円)
もう悩まない、ふりまわされない! Twitterで正確な医療知識を発信しつづける"ふらいと先生"待望の書。子育ての常識は日進月歩。昔は当たり前だったことが今はまったく違う、ということはたくさんあります。また、ネット社会になり育児不安をあおるようなうわさやうそかほんとかわからない情報がSNSなどをつうじて広く拡散されるようにもなりました。いっぽうで、お母さんだけに負担を押しつけるような育児の迷信・神話は変わらず存在し、いまだ「呪い」のように育児当事者を苦しめています。そのひとつひとつについて「これってほんと?」と問い直し、専門家が最新の知見に基づいて科学的に答えていく一冊です。
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