あけましておめでとうございます。独身のみなさん、今ごろご実家でどんなお正月をお過ごしでしょうか。チクチク「そろそろ結婚しなさいよ」的なイヤミ攻撃を受けていたり、もはや「その話題に触れてはならぬ」という周りの気遣いによって張りつめた空気の中で、必死にテレビに夢中になっている演技を続けていたりするのでしょうか。お疲れさまです。
ちなみに私は、父方の祖母から「死ぬ前の最後のお願いです」と言わんばかりの弱々しい声で「あんたも、そろそろ結婚して子供ば産まな……」と言われ続けることはや五年。ぜんぜん寿命じゃないし元気なので、もはや「そんな脅迫には屈しない」という精神で帰省しております。屈しない……いや、結婚はしたいんですけどね……。
三十代以降の女には"復活愛"しか残ってない?
そんな帰省前の年末、帰省中に読みたい本を書店で探していたら、『an・an』のこんな特集が目に飛び込んできました。その名も「復活愛のススメ」。
アオリがまたすごいんです。「学生時代に別れた彼が大人になって"いいオトコ"になってた! 遠距離になって別れてしまった彼が、近くに戻ってきた! LINEでつながった。Facebookで懐かしい顔を見つけた! ちょっとした行き違いで別れてしまったけど、今なら許せる。結婚するなら、安心できる、元カレがいい!」……。
ちょっと細かく反論していきますけど、学生時代に別れた彼が大人になって"いいオトコ"になって戻ってきたからって食いつくようなことでは、その後、彼が"いいオトコ"からおっさんへと変化していく過程を受け入れられるかどうか疑問だし、遠距離になって別れた彼が近くに戻ってきたからって、結婚したら転勤とか単身赴任とかでまた遠距離になるかもしれないと思うんですよ。
あと、「ちょっとした行き違いで別れてしまったけど」とか言ってますけど、軽~い気持ちで別れる人なんてほとんどいないわけで、別れたからには必ず理由があるんです。覆水盆に返らずということわざがありますが、これももともとは「一度別れた相手と元通りになることはない」と復縁を拒んだエピソードが元になっているものです。それが言い伝えられて現代にまで残っているのですから、時代を越えて「そうなんだよなぁ……」としみじみ納得する人が多かったということではないでしょうか。
と、私は復活愛に対してかなり懐疑的な立場なのですが、「復活愛が結婚への近道」という言葉には、一抹の真実があるような気もしないでもないのです。というのも、かの有名なドラマ、『セックス・アンド・ザ・シティ』で、主要メンバーの女性四人中二人が、なんとseason1の初期に交際した男性と"復活愛"で結婚しているのです。この事実に気づいたとき、私は「season6まで94話も引っ張って映画化までして、さまざまな男性と出会い、付き合ってきたのに、結局いいトシの女は復活愛に賭けるしかないのか……」と絶望的な気持ちになりました。
確かに、三十代も後半になると、私の周りの同世代の男性はほとんど既婚です。年上の男性はさらに既婚率が上がり、かといって年下世代は早婚の傾向が強いので、そっちも既婚が多い。三十代後半~四十代の独身女性は、完全にポツンと結婚から取り残された状況にいるように感じます。これでは復活愛に賭けたくなる気持ちも、わかりますよねぇ……。
確かに元彼という存在は、お互いに長所も短所も知っているという安心感があります。結婚相手は人生のパートナーである、と割り切って考えるならば、相手の意向と合えばですが、それもいいのかもしれません。
しかし、恋愛として考えると、一度別れた相手ともう一度関係を持つのは、割れた茶碗を瞬間接着剤でもとの形に戻すようなもの。職人ばりの金継ぎの腕を持っているのなら、それも可能かもしれませんが、私がやると思いっきり水が漏れる器にしか仕上がらないような気がします。割れていない、新しい茶碗がどこかにあると信じて生きていきたい……。今年はそんな気持ちです。
<著者プロフィール>
雨宮まみ
ライター。いわゆる男性向けエロ本の編集を経て、フリーのライターに。その「ちょっと普通じゃない曲がりくねった女道」を書いた自伝エッセイ『女子をこじらせて』(ポット出版)を昨年上梓。恋愛や女であることと素直に向き合えない「女子の自意識」をテーマに『音楽と人』『POPEYE』などで連載中。
イラスト: 野出木彩