JR石北本線は新旭川駅と網走駅の234.0kmを結ぶ。札幌~網走間の特急「オホーツク」が1日4往復あり、都市間輸送の役割を持つ。しかし途中駅は閑散としており、来年3月のダイヤ改正で4つの駅の廃止が報じられた。その中には1日1往復しか停車しない秘境駅もある。秋から春まで運行される臨時貨物列車、通称「タマネギ列車」の動向も気になるところだ。
最近の話題としては、8月1日に線路の土砂が流出し、8日に復旧したばかり。特急列車が走るから復旧も早かった。その一方で利用客の少ない駅は廃止。そんな石北本線のダイヤを描いてみた。そこには、JR北海道が抱える厳しい経営環境が見えた。
赤い線が特急「オホーツク」で、札幌~網走間を旭川経由で結ぶ。緑色の線が特別快速「きたみ」で、旭川~北見間を結んでいる。地元の利用者などを対象に、特急料金なしで乗れるサービス列車だ。黒い線は普通列車である。旭川~上川間と遠軽~網走間が多い。旭川地域、網走地域は人口も比較的多いのだろう。上川~遠軽は普通列車も少なく閑散としている。
青い点線は貨物列車だ。新旭川~北見間で運行されている。実際には札幌~旭川~新旭川間の貨物列車もあるけれど、2015年版貨物時刻表からは旭川駅の時刻が読み取れなかったため省略。貨物時刻表では、札幌方面からの貨物列車は新旭川駅から宗谷本線に入り、北旭川駅まで走る。そして北旭川駅と北見方面を結ぶ貨物列車が接続している。
この貨物列車は臨時列車だ。夏の終わりから春にかけて運行されている。おもな積荷は北見地方で収穫されたタマネギで、この貨物列車の通称は「タマネギ列車」だ。JR貨物は機関車やコンテナの老朽化、赤字運行を理由に「タマネギ列車」を廃止する意向だったけれど、自治体や農産関係者によって新型機関車や野菜積み用の新型コンテナ製造費用を負担し、運賃の値上げに応じるなどの支援がまとまって存続が決まった。ダイヤ上は3往復が設定されているけれど、臨時列車だから毎日すべて運行されるわけではないだろう。
特急列車が走るとはいえ、石北本線は長大なローカル線だ。列車ダイヤに平日・休日の区別もない。ダイヤも「本線」と名が付く割には隙間が多い。とくに上川駅と上白滝駅の間は駅間も長い。営業距離は29.5kmもある。所要時間は下り列車が58分。上り列車は1時間8分だ。普通列車で隣の駅まで約1時間とはすごい。
この区間ですれ違う列車がいくつかある。石北本線は全線単線だから、駅間ではすれ違えない。この区間にはすれ違い専用の信号場が3つもある。こうしないと列車の運行間隔が開きすぎて、特急列車を4往復も設定できない。2月にはさらに臨時特急「流氷オホーツクの風」も走っている。12時20分頃、上り・下りの特急「オホーツク」と下り貨物列車の線が重なっている。同じ信号場だとしたらダイナミックな眺めになるだろう。
もうひとつ、ダイヤ上で注目したいところが遠軽駅。特急列車の停車時間は短いけれど、貨物列車の停車時間は長い。普通列車の運転系統はこの駅が境目で、直通列車も長く停まる。遠軽駅はスイッチバック構造のため、停車時間を長めに取っている。発車の優先順位を明確にするためか、特急列車のすれ違いはここでは実施しないようだ。
石北本線は最近、災害による不通と駅の廃止が報じられた。8月1日に下白滝~丸瀬布間の線路の路盤が流出し、上川~遠軽間が不通になった。最も閑散とした区間で、利用客数から見れば廃止もやむなし。しかし、ダイヤを見てもわかるように、特急列車が4往復も走る路線だ。夏の終わりから「タマネギ列車」の運行も始まる。そこで復旧作業を急ぎ、8月8日に運行を再開した。
駅の廃止について、JR北海道が「事業の選択と集中」の方針のもと、利用客数の少ない駅を廃止すると報じられている。数十の駅の廃止を検討中とのことで、詳細はまだ明らかにされていない。石北本線では上白滝駅・旧白滝駅・下白滝駅・金華駅の廃止が報じられている。今後はもっと増えるかもしれない。
上白滝駅は「秘境駅」と呼ばれている。この駅には1日に下り1本・上り1本しか停車しない。そもそもこの駅を挟んだ上川駅と白滝駅間の普通列車は1往復しかない。もともと利用客が少ない区間だ。上白滝駅の利用者は、この普通列車で通学する高校生がひとりだけとのこと。高校生が来年春に卒業し、利用客がゼロになることから、JR北海道は廃止する方針になった。学校が休みの土休日は、秘境駅を訪れる鉄道ファンがひっそりと訪れるという。
平日の乗降客がひとりだけの駅。採算を考えたらもっと早く廃止しても良かった。最後の乗客ひとりまでちゃんと輸送したJR北海道は立派だ。そして、このような駅が他にもたくさんある。JR北海道の鉄道経営の厳しさが、ダイヤにも表れている。