世間を騒がせた大手飲食チェーンでの迷惑動画事件では、投稿者だけでなく企業側も重大な損失を被ったことは記憶に新しいところ。採用においても、企業は候補者の人間性やネットリテラシーに、よりセンシティブになっています。この連載では現役の調査員が、採用調査や問題社員のリスク調査といった「企業調査のリアル」をお伝えします。
実名アカウントは意識が高く、就活への熱意が伝わる投稿
新卒採用者のアカウントを見ていると、友人と遊んでいるときやアルバイト中、ウケ狙いの悪ふざけがいき過ぎた投稿が度々見受けられます。ある新卒候補者Aさんのアカウントを調べていると、実名で運用しているSNSとは別に、複数のアカウントを持っていることがわかりました。
Aさんが大学生活で力を入れていることとして、ボランティア活動や勉強会に参加する内容、将来は自分の好きなファッション業界に進みたいという思いから、ファッション関連のアルバイトをしていました。店舗のSNSにモデルとして掲載され、Aさん自身のSNSにも日々感じたことや、自分がこれからどうなっていきたいかなど、意識の高い投稿が多く、就活に対して熱意を持っている内容も多く投稿されていました。
「似合わないくせに」「サイズない」…裏アカで、バイト先の客を揶揄
一方で、実名で運用しているSNS以外に、いわゆる“裏アカウント”が存在していることがわかりました。投稿内容を見てみると、アルバイト先の先輩スタッフやお客様に対して、「似合わないくせにお店の服着るな」「目がトン級(メガトン級)のサイズないし」という暴言や、パワハラやモラハラと取れるような発言をくり返しており、他人を見下すような発言が多数確認されました。店舗名が容易に推測できるような投稿もあり、もしお客様の目に触れた場合、企業としての信用を失いかねません。
さらに、面倒な業務は無理やり後輩にやらせているという投稿も多数あり、入社した企業でも同じような行動を繰り返すのではないかという懸念を抱いてしまう内容が確認されました。また、Aさんは競艇に特化したアカウントも所持しており、かなりの金額を費やすギャンブルに依存した一面も。
この企業様は、「どんなに仕事ができようと、こういった内容を悪びれもなく、SNSに投稿出来る人物と一緒に働くのは気が引ける」という理由で、採用を見送ったと聞いています。アカウント名を秘匿性の高いものにすれば、どうせわからないだろう、という安易な考えが、守るべきルールを破らせてしまうようです。
SNSは利用の仕方で、最強のアピールツールになる
SNSは本来、自身の考えや思いを手軽に発信できるツールです。言ってみれば、就活で上手に利用すれば、最強のアピールツールになるのではないかと思います。企業側も、新卒候補者には即戦力ではなく将来的な可能性を期待しているのであり、これまでの学生生活や様々な活動でSNSを上手に活用していたり、発信力や影響力のあると思われる人物に対しては、当然良い印象を持つでしょう。
就活の際に、SNSを見られることを恐れる人も多いでしょうが、「非公開設定でつながっている人物のみの発信に限定」することは、確かに一定のネットリテラシーを持っているともとらえられますが、その一方で、自由に発信ができる最強のツールを十分に使えていないことにもなります。
良いイメージを見せようとして唐突にありきたりの投稿をしても、薄っぺらい内容では発信者の魅力はうかがえず、逆に以前の悪い習慣や傾向というものは、どこかで抜けきらないものです。他人が見て眉をひそめるような投稿はしないこと。愚痴や不満も人柄のうち。嫌味のない投稿を心がけ、SNSを上手に利用して、就活に有効活用していただきたいものです。