「人生100年時代」と言われる現代。20代でも早いうちから資産形成を進めることが求められています。一方で、どのように投資・資産運用の目利き力を磨いていけばいいのか、悩んでいる方は多いのではないでしょうか。
この連載では、20代の頃から仮想通貨や海外不動産などに投資をし、現在はインドネシアのバリ島でデベロッパー事業を、日本では経営戦略・戦術に関するアドバイザーも行っている中島宏明氏が、投資・資産運用にまつわる知識や実体験、ノウハウ、業界で面白い取り組みをしている人をご紹介します。
今回は前回に引き続き、メタバースを体験できる「メタバースの学校」の校長であり、オンラインコミュニティ「メタバース2.0チャンネル」を運営する北村勝利氏にお話を伺いました。
メタバースでパラレルワーク&パラレルキャリアを
――北村さんのお話は、「メタバースで儲けよう」みたいな安直な話ではないのですごく良いですよね。北村さんがメタバースに感じる可能性は、どんなところでしょうか?
北村勝利氏(以下、北村氏):最近は、副業の解禁や在宅ワーク、リゾートワーク、早期・定年退職など、働き方や生き方の自由度が上がっています。勤務場所という場所の制約がなくなり、勤務時間という時間の制約もなくなれば、メタバースで仕事をする人も増えるのではないでしょうか。
副業だけでなく、複業(パラレルワーク)という働き方もあります。メタバースで複業(パラレルワーク)をして、パラレルキャリアを描いていく人も続々と出てくるかもしれません。
また、緩和されているとは言っても、国を越えた移動が制限されている地域もあります。メタバースで国際交流したり、「メタバース婚」したり、働き方だけでなく、人生にもメタバースが溶け込んでいくと思います。
メタバースというマーケティングワードは死語になる
――「メタバース」は、なぜかweb3に内包され、暗号資産やNFT、ブロックチェーン等と一括りにされることがありますが、文脈が異なると思います。また「メタバースは神の民主化」と、尖った言葉を使われることもあります。そのあたりは、いかがですか?
北村氏:個人的には、web3に対しては懐疑的です。メインストリームにはならないと思います。混同してしまう人もいますから、交通整理が必要ですね。「メタバース」も「web3」も、ただのマーケティングワードに過ぎないと思います。「メタバース」という言葉が使われなくなる方が望ましいです。
私は、メタバースは「3Dインターネット」と呼んでいます。これまで2D(平面)だったインターネット体験が、3D(立体)に変化していくということです。あとは、どのデバイスで3Dインターネットにアクセスするかだけです。スマホでもPCでも、VRデバイスでも良い。「VRデバイスじゃないとメタバースではない」という人もいますが、スマホやPCはみんなすでに持っていますから、スマホやPCからアクセスしても良いと思います。
インフラの進化で言えば、5Gでコンテンツがリッチ化します。文字情報が画像に、画像が動画に変化してきたように、それらが3Dになり、リアルタイムの相互コミュニケーションになっていきます。モバイル通信で言えば4G→5G→6Gと通信容量が増えていきます。
「別に4Gでも動画は見られるし、送れるよね」と感じているかもしれません。3Dやリアルタイムの相互コミュニケーションが増えると、5Gを実感できると思います。一度贅沢を覚えると戻れないように、コンテンツがリッチ化するともう戻れなくなります。相変わらずツイッターが好きな人はツイッターをするわけですが、それは新しいものが出てきても既存のものに留まる人はいますから、3Dインターネットに限ったことではありません。
中小企業も「3Dホームページ」を持つようになる
――なるほど、「3Dインターネット」はとてもわかりやすいですね。デジタルネイティブ世代と呼ばれる若い世代がいるように、メタバースネイティブ世代が出てくると、また社会も変化していくのかもしれませんね。メタバースを「3Dインターネット」と定義すると、中小企業でも取り組みやすくなるかもしれません。
北村氏:「3Dインターネット」ということは、そこにあるホームページは「3Dホームページ」ということになります。ホームページのすべてが3Dになるというわけではなく、今の段階であれば「2Dホームページに3Dホームページ(メタバース空間)を追加できる」と考えれば、取り組みやすいのではないでしょうか。
例えば、問い合わせフォームに3Dホームページ(メタバース空間)への入り口ボタンを付けて「問い合わせを3Dホームページ(メタバース空間)でできる」ということも可能です。スマホやPCで、これまでどおりアクセスできます。VRデバイスは必須ではありません。
3Dインターネットでは、ブラウザ型が主流になるのではないでしょうか。公式ホームページを持っていない企業はほとんどありませんし、すでにあるインフラを活用できるので利点もあります。ブラウザ型であれば、50万円ほどの予算でも3Dホームページ(メタバース空間)の制作が可能です。これくらいの予算なら、中小企業でも導入が現実味を帯びると思います。
OJT研修などの疑似体験ができることが3Dインターネットの真骨頂ですが、ほかにも「匿名性」もその特徴です。メタバース・アバターならではの匿名性を活かして、本音を語れる匿名相談室を、企業が社内に設置しても良いかもしれません。リアルなら個室を用意する必要がありますが、3Dインターネットであればオンライン上に用意するだけです。
新型コロナウイルスの影響で、「リモート」というものが一気に普及しました。またリアルの出勤に戻りつつあるとは言っても、主婦や子どもにも「リモート」という概念や形式が普及したのは、3Dインターネットの普及を加速させる大きな要点です。
メタ社に集まる批判は時期早々か
――確かに、リモートワークやリモート授業の普及は大きいですね。一方で、メタ社への批判が目立ちますが、メタ社に関してはどう感じていらっしゃいますか?
北村氏:批判は時期早々だと思います。メタ社はとてもがんばっているのではないでしょうか。今はまだ先行投資の時期です。この1年だけでメタ社の経営判断が正しかったのかどうかをジャッジできないはずです。
メタバースを3Dインターネットと定義すれば、普及の道は拓け、また早まるのではないかと感じます。これからは、3Dインターネットで長い時間を過ごし、そこで仕事をする人も増えてきます。それによって、新しい職業が誕生する可能性もあります。
例えば、「アンビルド建築家」です。大学院を出ても、一級建築士の資格を取っても、いきなり独立できるわけではありません。また、自分がつくりたい建物を自由につくれるわけでもありません。ですが、3Dインターネット上であれば、自由度が高い。CADのデータをそのまま3Dインターネットで展開できますから、アンビルド建築家(建てない建築家)でも成立します。3Dインターネットが当たり前になれば、3Dインターネット産業が発展します。そこでは、続々と新しい職業が生まれるでしょう。そのネイティブ世代が、また新しい時代をつくっていってくれると思います。