「人生100年時代」と言われる現代。20代でも早いうちから資産形成を進めることが求められています。一方で、どのように投資・資産運用の目利き力を磨いていけばいいのか、悩んでいる方は多いのではないでしょうか。

この連載では、20代の頃から仮想通貨や海外不動産などに投資をし、現在はインドネシアのバリ島でデベロッパー事業を、日本では経営戦略・戦術に関するアドバイザーも行っている中島宏明氏が、投資・資産運用にまつわる知識や実体験、ノウハウ、業界で面白い取り組みをしている人をご紹介します。

今回は前回に引き続き、財務戦略支援や税務戦略支援、人材採用支援、グローバル展開支援を中心に企業サポートを行い、海外ではベトナム、シンガポール、タイ、ミャンマーの各国で、現地で必要とされる事業を展開する株式会社インフォランス・代表取締役の佐々木雅士氏にインタビューを行いました。

インフォランス 代表取締役・佐々木雅士 氏

エグゼクティブリゾートワーカー、経営者のためのワーケーション評論家/大学卒業後、金融機関を経て2000年に起業。国内外で9つの会社を展開している。世界を移動しながら会社経営をする、エグゼクティブリゾートワーカーとして知られる。会社経営にマイレージとホテルポイントを絡めた研究を10年以上続けている探究者。

儲かる企業になる条件

――佐々木さんは、サラリーマン時代からこれまで多くの経営者の方々と接してきたと思いますが、儲かる企業になる条件はどんなものがあると思いますか?

佐々木雅士氏(以下、佐々木氏):経営者のやるべき仕事は実に幅が広く、営業戦略やマーケティング戦略、財務戦略、成長戦略、人事評価戦略、採用戦略、教育戦略、ウェブ戦略…など、会社経営上の課題を挙げればキリがありません。

これらの戦略を、経営者が全部やろうとすると、どれも中途半端になります。そういう状況に陥ってしまう経営者も多いと思います。自分が金融機関で働いていた時代や独立後も、多くの経営者から経営の深い部分をお聞きしたのですが、「会社が儲かるための方程式」を見つけ出すことはできませんでした。その理由は、なぜ儲かっているかの理由を多くの経営者が正しく認識できていないからでした。社会の荒波にもまれた20年以上の経営者経験を通じて、今はやっと、「儲かっている会社の共通点」は何かを知ることができました。

その儲かる会社の共通点は、企業理念が素晴らしいとか、経営者が優秀だとか、社員のエンゲージメントが高いとかというものではありません。それらは儲かる理由のおまけ程度の理由です。儲かっている会社というのは、総じてビジネスモデルが優れています。もしくは、高い参入障壁の内側に入れています。ビジネスモデルの強みが利益の源泉であり、参入障壁の内側に入れていることが儲かっている大きな理由なんです。

――なるほど、それは真理ですね。確かに「ビジョンを語って共感してくれる人と仕事をしよう」「パーパスが大切」というのは確かに必要なことですが、それだけで利益企業になれるわけではないですからね。

佐々木氏: そうなんです、ビジネスモデルをどんどん強めることが会社を成長させる一番の近道だと思います。たとえば、インフォランスでは営業部門を持たず、集客マーケティングを自動化させています。グループの人材会社には営業部門があるのですが、テレアポを正社員にさせると疲弊するので、アポイント獲得は業務委託の在宅ワーカーを活用しています。クラウドテレアポシステムを使って、受け付け突破率や社長アポイント率を自動で算出して、契約獲得コストが算出できるようにしています。在宅ワーカーにも過度な負担にならないように、後ほどコンサルタントから詳しい説明をする承諾を得る、簡単なアポを取っていただくだけにしています。「詳しい説明はコンサルから電話させます」で終わりです。

社内の営業スタッフは、興味がある相手だけに詳しく提案するだけですから、生産性の低い作業負担がありません。提案&クロージングという営業の楽しい部分だけを行うことで社員が気持ちよく働ける仕組みにしています。

当社のビジネスモデルの強みは提案力とクロージング力です。会社としては商談の機会を増やせば売上が伸びることになります。そのため、自動的に集客できる仕組みを強めていくことが一番大事で、自分はそれに力を集中するようにしています。この仕事は場所を選ばずにどこからでもできます。

エグゼクティブリゾートワーカー=経営者の役割と最重要業務

――なるほど、ビジネスモデルや仕組みが確立しているから、佐々木さんはエグゼクティブリゾートワーカーになれるわけですね。佐々木さんが考える、「経営者のもっとも重要な仕事」ってなんでしょうか?

佐々木氏: 会社のことを一番良くわかっているのは、やはり経営者本人です。経営者でなければビジネスモデルを洗練させたり、新しく生み出したりすることは難しいでしょう。当社のビジネスモデルでの重要部分は集客の自動化です。自然にお客様からお問い合わせが入ってくる仕組み部分を常に強めていかなければなりません。この仕事は社内でなくてもできますし、逆にリラックスして仕事に取り組めるリゾート地の方がはかどります。今はチャットツールやオンライン面談ツールが発達していて、どこからでも不自由なくコミュニケーションが取れます。経営者はビジネスモデルをさらに良くするために、じっくり考える時間や環境を確保することが大切だと思います。誰にでもできる仕事は社内で処理できるようにしたり、アウトソースしたりして、経営者が本来取り組むべき仕事に注力することが、会社にとって一番良いことだと思っています。

それに、役員の出張旅費規程で法人と個人が節税できる仕組みを取り入れることで、リゾートワークで会社も経営者も得になります。出張旅費規程は上手に作ることよりも安定運用していくことの方が重要なので、旅費申請業務をアウトソースできるクラウドサービスを提供しています。経営者のリゾートワークは、仕事の効率を上げるだけではなくて、旅費規程で節税できたり、新しい人脈が広がったり、知見が広がったりと、実利部分が多いんです。リゾートワークを通じて飛行機マイレージやホテルポイントを駆使すれば、さらにお金を増やすことができます。

――そこは、佐々木さんの真骨頂ですね。佐々木さんほど詳しく、かつ実践している人を見たことがありません。これまで、どれくらいフライトしているのですか?

佐々木氏: 初代エグゼクティブリゾートワーカーを名乗るために、自分の過去の実績を調べてみました。約11年の期間で世界243都市に訪問しており、11年の37.4%の期間はどこかしらに出張していることがわかりました。

――すごい(笑)。雲の上がベッドみたいですね。

出張旅費規程とクレカ、ホテルポイントを徹底活用する

佐々木氏: うまく伝わるかどうかわからないですが、マイレージ活用を極めると、通常使いをしているクレジットカードからお金が生まれる感覚になります。まさに錬金術のような感覚です。「フライトしていないと損」とさえ感じるくらいです…。

「クレジットカードのポイントをマイレージに替えるとお得」というのは多くの人がご存知だと思いますが、ホテルポイント活用がさらにお得です。クレジットカード100円の決済で1ポイント=1マイルが貯まり、そのマイルをビジネスクラスで使うと1ポイントが6~8円の価値になり、ファーストクラスなら16円の価値になります。つまり、日常貯まるクレジットカードポイントをマイレージに替えると最大16倍の価値になります。しかし、ホテル系クレジットカードでホテルポイントを貯めて、それをマイレージに替えてファーストクラスのエアチケットに換えると1ポイントが最大75倍に化けるんです。

――それはすごいですね。佐々木さんは、さらに出張旅費規程を活用しているのがまたすごいですよね。

佐々木氏: 上手な質問ありがとうございます。出張旅費規程を戦略的に策定して、それを安定した運用を行うと、旅費精算に必要だった領収書が不要にできます。旅費の実費精算を無くすことができるんです。そうすれば、飛行機を格安で取ろうが、マイルで取ろうが、会社からは正規料金の飛行機代をもらえるのです。出張旅費規程の作成マニュアルは、ネット上にたくさんありますが、実は作成よりも重要なのは旅費規程の運用の部分です。「社内でルール通りに動かない」「社長が申請し忘れる」「出張報告書を作り忘れる」など、実際には安定した運用できないケースがほとんどでした。そこで、インフォランスで安定運用ができるクラウドシステムを作り、サービス提供を始めたのです。

エグゼクティブリゾートワーカーを支援する最強の仕組み「e-旅くん」

――さすが、探究者ですね(笑)。

佐々木氏: 旅費規程の運用システムとして「e-旅くん」というネーミングで企業に導入してもらっています。社長がリゾートワークを実現できて、なおかつ節税にもなる仕組みを構築できる最強のツールだと思っています。出張者がLINEを使って音声やテキストで報告するだけで、旅費申請書と出張報告書のPDFが自動で出来上がってくる仕組みです。同時に飛行機代の正規料金の見積もり画像も自動的に保存されます。旅費申請業務のために社内のリソースを一切使わなくても、旅費規程を安定して運用していくことができるようになります。出張者の業務負担も軽減されます。

――良いですね。出張者がLINEで報告するだけだと、待ち時間や移動中に完了できますから時短にもなりますね。インフォランスではビッグデータが取れるので、今後の活用の幅も効きそうですね。

佐々木氏: このシステムは、OEMで会計事務所にも提供しています。たとえば、e-旅くんを導入している会計事務所の顧問料は、顧客にメリットを提供することで、最低でも月額顧問料を25万円にしているという強者もいらっしゃいます。e-旅くんは自発的な販売活動をしておらず既存客からのご紹介で拡大しており、とても好評をいただいています。

  • 撮影: 佐々木雅士 氏

――佐々木さんのようなワークスタイルをしたい経営者の方は多いでしょうね。ホテルのプールサイドでも、南国のリゾート地でも仕事ができる時代ですから、経営者の方ほど率先してやってほしいですよね。

佐々木氏: エグゼクティブリゾートワーカーというスタイルを、どんどん広めていきたいですね。もともと日本人の基礎能力は高いわけですから、会社をチームとして捉えて、効率化できること、可視化できること、アウトソーシングできることを整理していけば、経営者はもっと高い能力を発揮できると思います。日本の将来を憂うようなニュースは多いですが、明るい未来を切り拓けるようにサポートしていきたいです。