「人生100年時代」と言われる現代。20代でも早いうちから資産形成を進めることが求められています。一方で、どのように投資・資産運用の目利き力を磨いていけばいいのか、悩んでいる方は多いのではないでしょうか。
この連載では、20代の頃から仮想通貨や海外不動産などに投資をし、現在はインドネシアのバリ島でデベロッパー事業を、日本では経営戦略・戦術に関するアドバイザーも行っている中島宏明氏が、投資・資産運用にまつわる知識や実体験、ノウハウ、業界で面白い取り組みをしている人をご紹介します。
今回のテーマは、“ビットコイン怖い”は「まんじゅう怖い」と同じ? 暗号資産投資の出口戦略です。
「ビットコイン怖い」は「まんじゅう怖い」?
落語で有名な「まんじゅう怖い」では、主人公がまんじゅうを怖い怖いと言いながら、実は食べたがっている様子が描かれます。これと同じように、「ビットコイン怖い」と言いながら、その将来性に期待している投資家は少なくありません。
ビットコインの過去の価格変動や高いボラティリティから「怖い」と感じるのかもしれませんが、それはビットコインの本質的な価値を理解していないからです。ビットコインは、分散型デジタル通貨としての暗号技術と、発行上限が決まっているという希少性から、長期的な価値を持つ可能性を秘めています。
「クリプトおじさん」として知られる國光宏尚さんは、「ビットコインの未来を信じ続ける。その簡単なことができない人が如何に多いことか」という言葉を時折SNSなどで投稿しています。暴騰と暴落の度に多くの投資家がふるいにかけられますが、ビットコインの未来を信じ続け、保有し続けた人は、最高値更新の度に報われているわけです。
暴落のニュースを見ると、「ビットコイン怖い」と再び感じる人が多いかもしれません。そのため、過去にビットコインに投資をして利益を得たり損したりしていると、市場に再エントリーするのが極めて難しいです。しかし、恐怖の感情は「まんじゅう怖い」と同じような誤解に過ぎないのではないでしょうか。「まんじゅう怖い」は、実際にまんじゅうが怖いわけではなく、その意味を知らないことからくる不安や恐怖です。同様に、ビットコインに対して抱く怖さも正しい理解と情報を得ることで払拭できます。また、ビットコイナー・ビットコイン愛好家の多くは、検証に検証を重ねた結果「やっぱり、ビットコインだ」という答えに辿り着いている人がほとんどです。中には直感的にビットコインオンリーの投資戦略を取っている人もいますが、ビットコイナー・ビットコイン愛好家の考えをときどきでも目にしておくと良いでしょう。
企業や個人のビットコイン欲求の高まり
近年、ビットコインに対する企業や個人の関心は高まっています。インフレヘッジや新たな投資先として、ビットコインをポートフォリオに組み込む動きが顕著です。特に、ビットコインのデジタルゴールドとしての側面が注目され、その需要は増加しています。
ビットコインへの関心が企業や個人に広がっている背景には、主に2つの要因があるでしょう。ひとつは、インフレ対策としての役割。ビットコインは限られた供給量とデフレ的特性を持っており、価値が下がりにくいとされています。特に、法定通貨の価値が下落している国々では、ビットコインがデジタルゴールドとしての地位を確立しつつあります。もうひとつは、投資の分散化です。伝統的な株式や債券に加え、新しい資産であるビットコインをポートフォリオに組み込むことで、リスクを分散しつつ利益を追求する戦略が増えています。
国内外で、例えばマイクロストラテジーやメタプラネットのような上場企業が、ビットコインを購入する事例も増えています。これは、ビットコインの将来性に対する期待の表れとも言えるでしょう。上場企業のビットコイン買いの動きは機関投資家にも影響を与え、ビットコインの価格上昇を牽引する可能性があります。特に、マイクロストラテジーはビットコイン購入のために株式や債券の発行を通じて定期的に資金を調達しています。私募の転換社債を発行して資金調達し、ビットコイン投資をするなど、異色の資金調達戦略は今後さらに拡大するでしょう。
ビットコイン保有の流れは、上場企業に限ったことではありません。イギリスのビットコイン取引所であるCoin Cornerが同社の取引所を利用している100社に対して行ったアンケート調査によると、従業員10名未満の中小企業の間でもビットコイン保有が増加しています。中小企業がインフレや経済の不確実性に対するヘッジとして、ビットコインを選んでいるとも捉えられます。これらの企業の動きは、ビットコインが単なる投機的な資産ではなく、将来的に安定した価値を持つ投資先と見なされつつあることを示唆しているでしょう。
暗号資産投資の出口戦略は「ビットコインのまま」で良い
暗号資産投資における出口戦略として、ビットコインは有効な選択肢です。他の暗号資産と比較して、ビットコインは流動性が高く、取引所での取り扱いも容易です。マイナーな暗号資産銘柄は使っている取引所で取り扱われていないことがありますが、ビットコインを取り扱っていない取引所はないでしょう。
また、多くのアルトコインは、流行り廃りでその価値がビットコイン以上に急激に上下し、投資リスクが高くなることが多いです。「最高値だった頃は良かったなぁ」「あのときに売却しておけば……」という人も少なくありません。しかしビットコインは、その圧倒的なブランド力と普及度から、価値保存手段としても機能しています。
ビットコインは、投資対象としてだけでなく、決済や送金の手段としても利用可能です。ライトニングネットワークなどの技術革新により、送金速度や手数料の問題が徐々に改善され、日常的な支払いにも利用されるケースが増えるでしょう。世界中のさまざまな店舗やオンラインサービスで、ビットコイン決済で商品やサービスの購入ができるようになっています。ビットコインは単なるデジタル資産ではなく、実生活においても利用される国境なき世界共通通貨としての地位も確立していく可能性があります。メタバースなど、バーチャル空間で仕事や趣味の時間を過ごす人口が増えれば、ビットコイン決済の利用はますます増加するでしょう。AIによる少額決済にも、ビットコインが採用される可能性があります。「1円未満」の決済も、暗号資産なら可能です。
アルトシーズンやクリプトの冬のない「常夏ビットコイン」
暗号資産市場には、日々新しいアルトコインが生まれています。その正しい銘柄数は、もはやわかりません。数多あるアルトコインの中から、その将来性を的確に予測することは非常に困難です。過去には、XRPやイーサリアムなどがビットコインとともに「2大仮想通貨」や「2大暗号資産」として名を連ねる時期もありましたが、振り返ってみるとツートップの片方さえもビットコイン半減期の4年サイクルで入れ替わっているわけです。そのため、アルトコインに分散投資するよりも、ビットコインに集中投資する方が、リスクを抑えつつリターンを得られる可能性があります。「あの人は今」的な、懐かしささえ覚える忘れ去られたアルトコインは数多くあります。
もちろん今後、ビットコインに代わる新たな暗号資産の代表格が登場するかもしれません。しかし、ビットコインが圧倒的なブランド力を誇り、ETFや決済インフラなど、その普及が進んでいる現状を考えると、ネクストビットコインを予測するのはやはり困難です。考え方によっては、アルトコインに投資するリスクは増しており、「ビットコインオンリーの投資戦略」でも含み益を得られる可能性は高いでしょう。
以前は、まずビットコインの価格が上昇し、次にメジャーなアルトコイン、その次にマイナーなアルトコインの価格が上昇する「アルトシーズン」と呼ばれる期間がありました。また、ビットコイン半減期後の暗号資産市場の盛り上がりと、その後の不祥事などによって訪れる「クリプトの冬」と呼ばれる季節もありました。アルトシーズンやクリプトの冬が再び訪れるのかもしれませんが、ビットコインを長期保有していれば「常夏」にすることも可能でしょう。