2021年6月3日、「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律及び雇用保険法の一部を改正する法律」が、衆議院本会議で可決・成立しました。

厚生労働省によると、2019年の育児休業取得率は女性が83%なのに対して、男性は7.48%という低い数字となっています。この現状を打開し、男性が子育てを理由に仕事を休みやすくするために、環境が整えられようとしています。

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今回の法改正で何が変わる?

男性版産休の創設

子どもの出生後8週間以内に4週間まで取得することができる出生時育児休業の枠組みが創設されます。

現行の育児休業では休業の申出期限が1カ月前ですが、この制度では休みを取りやすくするため、原則休業の2週間前となっています。2回まで分割して取得することができるほか、労使協定を締結している場合、事前に調整すれば休業中の就業も可能となります。

※2021年6月9日の公布後、1年6カ月以内の政令で定める日に施行

育児休業の分割取得

育児休業(出生時育児休業を除く)について、分割して2回まで取得することが可能となります。

※2021年6月9日の公布後、1年6カ月以内の政令で定める日に施行

  • 「男性の育児休業取得促進等に関する参考資料集」より抜粋

男性版産休の創設と、育児休業の分割取得が可能になることで、例えば「出生時・退院時」「里帰り出産からの帰宅時」「妻の職場復帰時」など、必要なタイミングで柔軟に休みを取ることができるようになります。

環境整備や周知・意向確認措置の義務付け(2022年4月施行)

妊娠・出産・育児や休暇・休業の取得時に、会社からの働きかけが「特にない」と回答している男性・正社員は64.7%(複数回答)にのぼります。

(参考:厚生労働省委託事業「平成30年度仕事と育児等の両立に関する実態把握のための調査研究事業報告書」)

今回の改正では、育児休業の申出・取得を円滑にするための環境整備とともに、妊娠・出産(本人又は配偶者)の申出をした労働者に対しては、事業主から個別に制度を周知することや、休業取得の意向を確認することが義務化されます。

育児休業の取得状況の公表義務付け(2023年4月施行)

常時雇用する労働者数が1,000人超の事業主に対し、育児休業の取得の状況について公表が義務付けられます。

有期雇用労働者の育児・介護休業取得要件の緩和(2022年4月施行)

有期雇用労働者の育児休業及び介護休業の取得要件のうち「事業主に引き続き雇用された期間が1年以上である者」であることという要件が廃止されます。

男性の育児休業制度がすすまない理由

厚生労働省の調査では、男性が育児休業制度を利用しなかった理由として、以下のような声が挙がっています。

・会社で育児休業制度が整備されていなかったから
・収入を減らしたくなかったから
・職場が育児休業制度を取得しづらい雰囲気だったから

法律を整えるというハード面と、職場での理解が得られるというソフト面の双方が揃わないと、なかなか育児休業取得へ踏み切れないというハードルの高さも伺えますね。

まずは育休取得を具体的にイメージしてみることから

一方、末子の出生後2カ月以内(出産の当日も含む)に休暇を取得した男性に、満足度を調査したところ、「とても良かった」と回答した人は72.4%、「まあ良かった」と回答した人は23.1%で、合計すると全体の95.5%になります。育休取得者の満足度は高いと言えるでしょう。

育休を取ってみたいけれど、初めてのことで不安も多い……そんな方はまず、自分自身が育休を取得したらどんなことが起こりそうか、具体的にイメージしてみることから始めてみてはいかがでしょうか。そのための一歩として、実際に育休を取得した人の体験談を聞くこともオススメです。

ご自身の感じている漠然とした不安も、より具体的な課題に感じられ、解決策も考えやすくなるはずですよ。