「東京は物価が高いので、生活費が高い」または、「地方は物価が安いので、生活費が東京に比べてあまりかからない」と世間でよく言われていることは、本当なのでしょうか。

連載コラム「地方の生活コストは本当に安いのか?」では、ファイナンシャル・プランナーの高鷲佐織が、実際に東京から地方へ移り住んで感じたことを交えながらお伝えいたします。

医療費の領収書は捨てないで!

東京在住の頃は、医療費の支払にクレジットカードを利用できる医療機関が多かったのですが、現在住んでいる地域では、支払方法を現金に限定している医療機関が多いため、頻繁にATMに行くようになりました。多額の治療費などを支払う場合は、大金を持ち歩くことになるので、クレジットカード利用可能な医療機関が現在住んでいる地域にも増えてほしいと願っています。

さて、医療機関において、医療費を支払った後に領収書をもらいますが、みなさんは、この領収書を保存していますか? それとも処分していますか?

クレジットカードで支払った場合は、支払金額や利用日が記載されている「利用控え」をもらうので、領収書は処分してしまう方もいらっしゃるかもしれません。しかし、1年間の医療費が多額であった場合は、「医療費控除」を適用することができるので、1回の治療費や診療費が少額であっても、とりあえず1年間は保存しておきましょう。

今回は、「医療費控除」についてお伝えします。なお、医療費控除の特例であるセルフメディケーション税制は、今回の説明から除きます。

医療費控除とは

1年間(その年の1月1日から12月31日までの間)で、自分と家族の医療費を支払った場合において、その支払った医療費が一定額を超えるときは、医療費控除として所得控除を受けることができます。医療費控除は、年末調整で適用を受けることはできませんので、ご自身で確定申告をする必要があります。

  • (表1)医療費控除の対象となる医療費の範囲
    ※1疲れを癒したり、体調を整えるといった治療に直接関係ないものは、対象とならない。

医療費控除の計算方法

医療費控除の金額(※1)=実際に支払った医療費の額-保険金などで補填される金額(※2)-10万円(※3)

※1医療費控除の金額は、200万円が上限となる
※2生命保険契約などで支給される入院給付金や、健康保険などで支給される高額療養費、出産育児一時金などをいう
※3その年の総所得金額等(注意:所得=年収ではない)が200万円未満の人は、総所得金額等の5%

【例】

Aさんは、本年中にAさんと妻のBさんと子どものCさんの医療費52万円を支払った。また、Aさんは、加入している保険契約から入院給付金8万円を受け取っている。なお、Aさんの総所得金額は、600万円である。

医療費控除の金額=52万円-8万円-10万円=34万円

上記の計算により、34万円医療費控除として所得控除を受けることができます。

終わりに

医療費控除は、計算方法からもわかるように、10万円を超えると適用されます(総所得金額が200万円以上の場合)。

確定申告をする本人だけでなく、生計の一にする(生活費のお財布が1つであること)配偶者やその他の親族のための支払った医療費も合計できるので、知らず知らずのうちに、医療費が10万円を超えていることもあると思います。薬局だけでなく、ドラッグストアや家電量販店などから購入した医薬品も医療費控除の対象となりますので、領収書やレシートは必ず受け取りましょう。

平成29年分の確定申告から、「医療費の明細書」を税務署に提出することにより、医療費の領収書の提出は不要になりました。この「医療費の明細書」は国税庁のホームページから印刷することができますし、Excelの「医療費集計フォーム」をダウンロードして、入力することで「医療費控除の明細書」とすることもできます。

ただし、医療費控除の内容を確認する場合もあるため、領収書は捨てずに、確定申告期限から5年間はご自宅などで保管しておいてください。

高鷲佐織(たかわしさおり)

ファイナンシャル・プランナー(CFP 認定者)/1級ファイナンシャル・プランニング技能士/DCプランナー1級。

資格の学校TACにて、FP講師として、教材の作成・校閲、講義に従事している。過去問分析を通じて学習者が苦手とする分野での、理解しやすい教材作りを心がけて、FP技能検定3級から1級までの教材などの作成・校閲を行っている。また、並行して資産形成や年金などの個人のお金に関する相談を行っている。