「都心では物価が高いので、生活していくのが大変だ」または「地方は物価が安いので、生活費が都心に比べてあまりかからない」と世間で言われていることは、本当なのでしょうか。 お金の扱い方について、都心部と地方部では、違いがないのでしょうか。

連載コラム「地方の生活コストは本当に安いのか?」では、ファイナンシャル・プランナーの高鷲佐織が、実際に東京と地方、両方の生活を経験して感じたことを交えながら、お金に関する情報などをお伝えいたします。

「終活」という言葉が広く知られるようになり、人生の終盤にむけて、さまざまな準備や整理を進めることを考えている方々もいらっしゃるでしょう。「終活」は、高齢者だけのものではなく、現役世代と呼ばれる方々も、人生の終盤をイメージした上で、今後どのような人生を送りたいか、長期的にはどれくらいの資金が必要となるかなどを計画することは、有意義であると思います。

その「終活」の1つに、「遺言書を作る」というものがあります。遺言書は、必ず作らなければならないものではありません。しかし、「自宅と預貯金は配偶者、保有している金融商品は長男に相続させたい」、「自分の遺産を分割する際に、残された家族で争いになるのを避けたい」など、自分の意思や想いがある場合には、遺言書が必要となります。 遺言書がないと、相続人全員での話し合いによって遺産の分け方が決められることになりますので、亡くなった人の意思が反映されない場合があります。

一般的な遺言として、自らが手書きで書く「自筆証書遺言」と、法律のプロである公証人が遺言者から聞いた内容を文章にまとめ公正証書として作成する「公正証書遺言」があります。

今回のコラムは、「公正証書遺言」の作成手続きがデジタル化されることによる地方在住者のメリットなどついて、お伝えいたします。

■公証役場とは?

法律のプロである公証人が業務を行う事務所を公証役場といいます。公証役場は、各地域にありますが、地域により数に差があります。例えば、2025年9月22日時点において、公証役場の数は、一部抜粋しますと、東京都は45か所ですが、秋田県では2か所、新潟県では5か所、三重県では5か所、広島県では6か所、大分県では3か所です。

最も人口が多い東京都に公正証書役場が多いのは理解できますが、「公証役場に出向いての手続きが必要」というルールの元では、公証役場が少ない地方の場合、遠方にある公証役場に出向くことに対してかかる交通費も、所要時間も負担が大きいです。

<従来の公正証書遺言>

原則として、遺言をしたい人が公証役場に出向き、公証人と対面して、遺言の内容を口頭で告げ、公証人が文章にまとめて公正証書遺言として作成します。なお、公証役場に来所することが著しく困難な場合(病気のため入院している等)に限り、公証人が出張して公正証書遺言を作成することもできます。

<2025年10月1日からの公正証書遺言デジタル化>

遺言をしたい人が、公証役場に行かなくても、ウェブ会議に参加し、公証人が電子データで公正証書遺言を作成することができるようになります。また、公正証書遺言の申請、保存、交付など、すべてインターネットを経由した電子データで行うことができるようになります。

公正証書遺言の作成手続きのデジタル化についての具体的な利用方法については、日本公証人連合会のホームページに記載されている下記のPDFをご参照ください。

出典:日本公証人連合会 2025年10月1日から公正証書の作成手続がデジタル化されます![2025年8月8日版]

<終わりに>

公正証書遺言には、一定の手数料がかかります。手数料は、相続財産の金額が高くなるほど、手数料の金額も上がります。2025年10月1日以降、手数料の金額も変更となりますので、実際に、公正証書遺言を10月以降に作成することを検討している場合は、手数料の変更もご注意してください。

また、公正証書遺言のデジタル化を利用して、ウェブ会議に参加して遺言を作成する場合、ウェブ会議ではパソコンでなければならず、スマートフォンやタブレットは使用することができません。また、電子サインを行うためにタッチ入力が可能なディスプレイか、ペンで書けるタブレットが必要とのことなので、要件を満たしたデジタル機器の準備が必要となります。

10月1日以降、手数料の改正や、パソコン等の準備など、デジタル化における変更点はありますが、遺言書の偽造や紛失を防ぐことができる公正証書遺言の手続きがデジタル化され、公証役場に出向くことなく作成できるのは、地方在住者にとっては、大きなメリットとなるでしょう。