書籍やネットに掲載されているメールサンプル。みなさんは、どのように活用していますか。「こんなとき、どう書いたらいいかな? 」そんな疑問を解消してくれるメールサンプルは、とても便利ですが、ちゃんと「自分のもの」にしていますか。

メールサンプルは、あくまでもサンプルですので、そのまま利用することは、お勧めできません。「書き直して使っています!」という方も、どこを直しているかがとても重要です。「宛名」「日付」などの固有情報を書き直すのは、基本中の基本。でも、それだけでは不十分であることを、ご存じでしょうか。

メールサンプルは、メールを書く時間を短縮し、相手の方に失礼のないメールを書くことができる、まさに一石二鳥のツール。上手に使うコツを覚えて、業務の効率化に役立てましょう。

キーワードは「自分らしさ」

メールサンプルの利用において、とても大切なこと、それは「自分の文章に近づける」ことです。例えば、同じ人が下記のような2つのメールを書いたとしたら、いかがでしょうか。

この違い、みなさんは、お分かりになりますか。この2つのメール文章の大きな違いは、「漢字の使い方」と「送り仮名の使い方」です。

小さなことですが、この違いは、読み手に「違和感」を与えます。まだ、お付き合いが浅い相手であれば、気付かないかもしれません。ところが、何度もメールでのやりとりをしていると、相手の文章の書き方や言葉の使い方がわかってくるようになります。

すると、上記のような普段のメールと違う「送り仮名」や「漢字使い」が、なんとなく違和感となり、「もしかして、サンプルを使っているのかな? 」と思われてしまう可能性があります。

こういった「違和感」を相手に与えないようにするために、メールサンプルの文章は、必ず普段自分が使っている「送り仮名」や「漢字使い」に変更するようにしましょう。それだけで、「自分らしい」文章に近づけることができます。

「言葉使い」にも「自分らしさ」を

もうひとつ、「違和感」の原因になるのが、「言葉使い」です。例えば、次の2つのメールを比較してみましょう。

このように、普段カッチリとした印象の言葉使いでメールを書く人が、急にやわらかい印象の言葉を使っていると、「あれ? ○○さんが書いたメール? 」という「違和感」につながります。

自分が普段あまり使わない言葉を使っているメールサンプルを利用したときは、必ず「自分の言葉」に置き換えるようにしましょう。

よく使う文の「マイルール」が便利!

メールを書くときによく使う「よろしくお願い申し上げます」という文は、様々な書き方が考えられます。

・よろしくお願い申し上げます
・宜しくお願い申し上げます
・よろしくお願い申しあげます

こういった「よく使う文」は、どのように書くか、自分なりのルールを決めておくと良いでしょう。

例えば、私は下記のような「マイルール」を決めています。

・よろしくお願い申し上げます
・ご連絡いたします
・お知らせください

基本的に、「いたします」「ください」など、漢字とひらがなで迷う言葉は、ひらがなで書くのが私の「マイルール」です。ひらがなの方が「やわらかい」印象になるため、好んで使っています。

普段自分が使う文の書き方を決めておくと、メールサンプルを使ったとき、「どっちの言葉使いにしよう」「漢字がいいかな? ひらがながいいかな?」と迷わずに、自分のルールに当てはめて修正することができます。

このように、メールサンプルを利用するときは、いかに「自分の文に近づけるか」が、とても大切です。そうすることで、「サンプル」だったメールの文章を、「あなたの文」にすることができるのです。

茨木ち江

茨木ち江

一般社団法人日本ビジネスメール協会認定講師。
大手企業様や官公庁様等で、WindowsやWord、Excel、Access、VB等の集合研修講師経験を経て、平成11年10月に株式会社グッドフィールドアンドカンパニー入社。外資系企業様で、3年間常駐ヘルプデスクとして勤務後、業務推進部に異動し、業務フローやフォーマットの作成など、社内文書の定型化と業務の可視化に貢献。実施していなかった中途社員研修を体系化し、必要なテキストや資料の整備と講師を担当。現在は中途社員研修を後輩に引き継ぎ、“わかりやすい文章表現”“わかりやすい説明”をモットーに、社員だけでなくお客様にも「ビジネスメールコミュニケーション講座」や「【Excel】ミスや情報漏洩を防ぐフォーマットを作成するコツ講座」などの研修を行いながら、新しい研修サービスの企画、実施に取り組んでいる。お客様から頂いた「説明時の機転の利き方がさすが」という言葉が宝物。

日本ビジネスメール協会

日本で唯一のビジネスメール教育専門の団体。ビジネスメールに特化した講演・研修などの事業を10年以上前から行っており、これまでにメールに関する書籍を中心に27冊出版(内2冊は翻訳され台湾で出版)。メディアには1,000回以上登場し、ビジネスメールについて情報発信してきた。仕事におけるメールの利用状況と実態を調査した「ビジネスメール実態調査」を2007年から毎年行っており、本調査は、日本で唯一のビジネスメールに関する継続した調査として各メディアで紹介されている。ビジネスメールに関する研修(講師派遣)や講演(公開講座)を実施。2時間でビジネスメールを学ぶ、「ビジネスメールコミュニケーション講座」は東京を中心に毎月開催。研修の問い合わせも受け付け中。