悩み多きビジネスパーソン。それぞれの悩みに効くビジネス書を、「書評執筆本数日本一」に認定された、作家・書評家の印南敦史さんに選書していただきます。今回は、「仕事で達成感を得たことがない」という人へのビジネス書です。

■今回のお悩み
「仕事で達成感を得たことがない」(27歳男性/営業関連)

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日常の仕事から達成感を得ることは、なかなか難しいもの。自分が期待するものと、現実としての結果が合致することは現実的に少ないからです。

また、そこには本人の年齢的な問題も少なからず関わってきます。ご相談者さんは営業職のようですが、そもそも営業はすぐに達成感が得られるような職種ではないはず。

しかも20代半ばは、「この仕事を続けていっていいのだろうか?」と壁にぶつかりやすい時期でもあります。

つまり、さまざまなことがらが複合的に結びついているからこそ、なかなか達成感に結びつかないのかもしれませんね。

「変化できる人」になる

ところで『変化できる人 人は誰でも、何歳でも変わることができる』(赤羽雄二 著、ぴあ)の著者は、「変化」の必要性を強調しています。

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    『変化できる人 人は誰でも、何歳でも変わることができる』(赤羽雄二 著、ぴあ)

仕事のあり方が変わり、急激にAI、ロボット、ブロックチェーンなどに置き換えられていくなか、働く側にも変化が必要だということ。逆にいえば、「変化しない人」は仕事そのものを失ってしまう可能性があるわけです。だとすれば、達成感以前の大問題です。

では、「変化できる人」とはどんな人なのでしょうか?

この問いに対する答えのひとつとして、著者は「自分のやり方へのこだわりのなさ」を挙げています。自分のやり方に対して過度のこだわりがない人は、変化に対して抵抗がないということ。

変化への抵抗感がなければサクサク進んでいきやすくなるでしょうから、たしかにその延長線上で達成感をつかむことができそうです。

ちなみに、ここでいうこだわりがない人とは、人との接し方や仕事の仕方、努力の仕方などにおいて“自分のやり方”を確立できている人のこと。したがって、「なにも考えていない人」とは異なるのです。

「こだわりがない」ということと、「何も考えていない」ということの間には大きなギャップがあり、きちんと認識しておく必要があります。こだわりがなければ、自分に考えがあっても、そのときどきでベストなやり方をすることに躊躇がありません。その都度、判断してよりよいほう、自分にフィットしそうなほうを選ぶので、いつも気持ちよく、伸び伸びとしていられます。ベストなやり方をするためにも、常に努力をし続けます。(22ページより)

いいかえれば、ひとつの手段に拘らず、状況に応じてフレキシブルに対応できることが大切だということなのでしょう。とはいえそれは、「人にいわれたから」というだけで確固たる考えもなしに意見を変えるという意味ではありません。

自分の意見はもちろんあるけれど、もしもそれ以上の案や考え方があれば、躊躇なく変えることができるということ。自分の意見があるなら、そもそもの根拠がしっかりしているはず。そのため、軸がずれることはないわけです。

自分の頭でしっかり考えて、そのときどきのベストを尽くしているものの、よりよい案があり納得すれば、躊躇なく取り入れることができます。(23ページより)

著者によれば重要なのは、「納得すれば」という部分。頭が固ければ、相手がどれだけ正しいことを主張しても納得できない可能性があります。そのため、いつまでも反論を続けたりしてしまうことになるかもしれません。

しかし、納得することを過剰に重要視するのではなく、「納得できるだけの準備と勉強を自分はしているのか」をまず振り返ってみる必要があるということ。

つまり、金科玉条的に「納得」を求めるのではなく、自分のバランス感覚を鋭くし、磨き続けることで、バランスのいい「納得感」を得る必要があります。(24ページより)

それは地味な動きかもしれませんし、目に見えて結果がでるわけでもないでしょう。しかし、バランス感覚を意識しながら地道に進んでいけば、結果的にそれは達成感へとつながっていくはずです。

ポジティブな心の姿勢で

それに加えて、「考え方」を変えることも必要かもしれません。たとえば「仕事に達成感を得たことがない」というのは、果たして適切な考え方でしょうか? 少なくともそれはポジティブではなく、ネガティブな捉え方なのではないでしょうか? だとすれば、うまくいくはずのものがうまくいかなかったとしても無理はありません。

『できる人とできない人の小さな違い』(ジェフ・ケラー 著、弓場 隆 訳、ディスカヴァー・トゥエンティワン)の著者も、心の姿勢は、それを通して世界を見る「フィルター」だと考えるべきだと主張しています。

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    『できる人とできない人の小さな違い』(ジェフ・ケラー 著、弓場 隆 訳、ディスカヴァー・トゥエンティワン)

なるほど世の中には、楽観主義のフィルターを通して人生を見る人と、そうでない人がいるものです。「コップに水が半分入っている」と捉える人もいれば、「コップの水が半分なくなっている」と感じる人もいるということ。どちらがポジティブで、どちらがネガティブかは一目瞭然です。

そのような観点から、著者は「ポジティブな心の姿勢とネガティブな心の姿勢の違い」を、いくつかの例を挙げて説明しています。

◎ネガティブな姿勢の持ち主は、問題に固執する。
◎ポジティブな姿勢の持ち主は、解決策に意識を集中する。

◎ネガティブな姿勢の持ち主は、他人のあら探しをする。
◎ポジティブな姿勢の持ち主は、他人のいいところを探す。

◎ネガティブな姿勢の持ち主は、ないものねだりをする。
◎ポジティブな姿勢の持ち主は、恵まれていることの数を数える。

◎ネガティブな姿勢の持ち主は、限界を見て、「できない」と考える。
◎ポジティブな姿勢の持ち主は、可能性を見て、「できる」と考える。
(22〜23ページより)

ここに、今回のご相談をあてはめてみましょう。

◎ネガティブな姿勢の持ち主は、「仕事に達成感を得たことがない」と考える。
◎ポジティブな姿勢の持ち主は、「どうしたら仕事で達成感が得られるか考える。

こうして考えてみれば、進むべき道が見えてくるのではないでしょうか? 著者は「あなたの姿勢は、あなたが世界を見るための窓である」とも述べていますが、まさにそのとおり。自分の姿勢や考え方によって、可能性の広がり方も大きく変わってくるということです。

いまの自分の行動が目標達成に役立っているか?

『成功への選択』(青木仁志 著、あさ出版)の著者は、「人は誰でも、その人が考えているとおりの人間になれる」ということを伝えたいのだそうです。

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    『成功への選択』(青木仁志 著、あさ出版)

能力開発のスペシャリストとして、これまで多くの方々の研修に携わってきた実績の持ち主。そうした活動を経て最終的に、「考え方が変われば人生が変わる」ことを実感したというのです。

私は「考え方」というものがいちばん大切だと考えている。その考え方とは、「考え方を選択する」という考え方であり、「考え方は選べるのだ」という考え方である。
読者の方々には、まずこの「考え方」を大事にしていただきたいと思う。 そしてもうひとつ、私たちが選択できるものに行動がある。
自分自身のその行動が、あるいはこれから起こそうとしている行動が目的・目標達成に役立つ行動か、それとも外れた行動であるのか。そのどちらかを、私たちは選択できる。
物事は非常にシンプルなのだ。(「はじめに」より)

したがって、いまの自分の行動が目的・目標達成に役立っているかどうかを、常に自分に問いかけるべきだということ。その結果、もし役立っていないと感じたなら、本来の目的・目標の達成に役立つものにリセットすればいいのです。

それをできるかどうかが、成功と失敗の分岐点であると著者はいいます。これは、仕事にもあてはまることのようです。

達成感を得られないのは、成果が出ていないから。しかし、成果を求められているときに成果を出せないのなら、詰まるところゼロと同じ。だからこそ、「一生懸命が足りなかった」と思うことが重要なのです。

一生懸命は、成果につながる一生懸命でなければならないのだ。
言い方を変えると、一生懸命をつづけていれば、成果は必ずついてくる。
成果がないときは、一生懸命が足りなかった。
そういうことである。
だからまずは目的や目標を決める。(110ページより)

登山にたとえてみれば、最初からエベレストは無理だから、高尾山くらいの山を目指してみる。高尾山が制覇できたら、次は富士山に挑戦してみる。そのように少しずつ目標を上げていき、目の前の課題に対して自分ができることを精いっぱい、一生懸命やり続ける。

そういった繰り返しを経て、人は成功にたどり着くということ。もちろんそこまで行ければ、間違いなく達成感を感じることもできるはずです。