悩み多きビジネスパーソン。それぞれの悩みに効くビジネス書を、「書評執筆本数日本一」に認定された、作家・書評家の印南敦史さんに選書していただきます。今回は、「人づきあいが苦手で誤解されやすい」人へのビジネス書です。

■今回のお悩み
「人づきあいが下手で、すぐに誤解されてしまう気がする」(26歳女性/経理関連)


社会のなかで他者と共存していくうえでは、相手を理解し、相手から理解されることが必要とされます。ビジネスシーンにおいては特に重要なことでもありますが、それはなかなか難しくもありますよね。

そもそも「他者」とは、「自分以外の人」という意味です。つまり、生き方も考え方も自分とは違う人。しかも、組織のなかにはそういう人がたくさんいるわけです。

したがって、理解されなかったり、理解できなかったりして、その延長線上で孤独を感じるようになってしまったとしてもまったく不思議ではありません。

だから多くの方が、人づきあいに苦手意識を抱いてしまうのでしょう。

でも、まず最初に強調しておきたいことがあります。そんな状況に追いやられると、自分だけがつらい思いをしているように感じてしまうもの。でも実際のところ、「他者」もまた同じようなことで悩んでいるかもしれないのです。

なぜなら、それが人間だからです。

「それはわかっているけれど、うまくいかないから困ってるんだ」と思われますか? たしかにそうかもしれませんね。そこで今回も、3冊の書籍のなかからなんらかの答えを探し出してみることにしましょう。

相手と自分を理解すること

『だれもわかってくれない:あなたはなぜ誤解されるのか』(ハイディ グラント ハルヴァ―ソン 著、高橋由紀子 訳、早川書房)の著者は、人に誤解されることなく円滑なコミュニケーションを実現するためには、「こちらが相手を正しく理解すること」と「自分自身を明確に理解すること」が必要だと説いています。

  • 『だれもわかってくれない:あなたはなぜ誤解されるのか』(ハイディ グラント ハルヴァ―ソン 著、高橋由紀子 訳、早川書房)

ほかの人たちをちゃんと理解しようとせずに「人が自分をちゃんと理解してくれない」と、一方的に文句をいうのはフェアではないとも。

そこで、相手を理解する必要性が生じてくるわけです。そのためには、次のことを気にかけてみるといいそうです。

●十分に時間をかける

大切なのは、相手を性急に判断しないこと。第一印象は見当違いが多いので、そのことを念頭に置いておく必要があるわけです。

相手の言動は、自分が感じている以外にも多くの解釈が可能。そこで状況を見極め、それが相手の行動に影響を与えた可能性を考える必要があるのです。

●人を公正に判断しようと心に決める

少なくとも多くの人は、公正でありたいと思っているはず。しかし、だからといって、人を認識する前にそのことをきちんと意識できているとは限りません。

でも、「フェアじゃなくちゃ」と思い出すだけでも、無意識のバイアスは減るそう。そこで、初めての人に会う際には心のなかで「フェアであれ」ということばをおまじないのように唱えてみることを著者はすすめています。

あるいはポストイットに書いてパソコンに貼りつけるという方法も。いずれにしても公正であることを意識すればするほど、人に対する認識は正確なものになるのです。

●確証バイアスにご用心

ひとたび第一印象が形づくられると、相手の行動にさまざまな特徴を見出そうとせず、自分の印象を確定する証拠ばかりを探してしまう傾向が人にはあるもの。しかし誰かに対して判断を行うときには、自分の仮説に合わないものも含め、すべてを考慮することが大切。

なお著者は、「なぜ人は誤解されるのか」を理解してもらうために本書を書いたのだそうです。なぜなら誤解とは、それほど日常的に起きることだから。

しかし実際には、あなたが「誤解」だと思っていることのすべてが誤解とは限りません。時には、相手の方があなたの真実を見抜いていて、あなたの方が自分を正しく理解していないということもあります。 自分を正しく知るということは、思っているよりずっと難しいことです。(239ページより)

だからこそ、自分の意図を正確に読み取ってほしいと思うなら、あるいは自分が「こう見られたい」と思うとおりに人から見てほしいなら、正しく理解されるように、こちらから相手に働きかけることが重要だということです。

ちゃんと正しく見てくれないと相手を責めても意味がありませんし、たしかにそのとおりではないでしょうか?

ところで「人づきあいが下手で、すぐに誤解されてしまう」理由については、「どこかで無理をしているから」だと考えることもできるかもしれません。

「うまくつきあわなくちゃ」「理解されるようにしなくちゃ」と思うあまり、自分でも気づかないうち必要以上に媚びていたり、相手に合わせて自分を変えたりしているのではないかということです。

当然ながら、それはすべてのケースにあてはまることではないでしょう。が、多少なりともそんな傾向があるのだとしたら、もう少し気持ちを楽に持ったほうがいいかもしれません。

もちろん相手には好かれたほうがいいけれど、決して無理をすべきではないということ。つまりは"お互いに疲れない関係"こそが、良好な人間関係には不可欠なのです。

相手も自分も疲れないコミュニケーション

では、そのためにはどうすればいいのでしょうか? このことについて、『機嫌のデザイン まわりに左右されないシンプルな考え方』(秋田道夫 著、ダイヤモンド社)の著者は次のように考えているのだそうです。

  • 『機嫌のデザイン まわりに左右されないシンプルな考え方』(秋田道夫 著、ダイヤモンド社)

イメージとしては、「言葉を"七〇㎝の高さ"に置く」という感じです。 投げつけるのではなく、そっと置く。相手が受け取りたかったら、すっと受け取れるような。そんなイメージで言葉を発したいと思っています。(67ページより)

70cmは腰に近く、大人であれば手を伸ばしやすい高さ。低すぎず、高すぎもせず、スッと手を伸ばしてものを取れる高さであるわけです。プロダクトデザイナーである著者によれば、家具やインテリアの設計をする際に、基準としてよく使われる高さでもあるのだそうです。

いいかえれば、相手にとっても自分にとっても、「余計な負荷をかけない」ということ。つまりは、お互いに無理がないという点が重要なのでしょう。

そうですよね。わたしはいつも人に好かれたいと思って行動していますよ。でも、無理はしません。無理をしないから、疲れない。
好かれたいけど疲れない。これがポイントだと思います。(68ページより)

なるほど他者とのコミュニケーションを考える際には、「自分が疲れない」ことを意識してみるべきなのかもしれません。

感謝の気持ちを伝える

そしてもうひとつ、他者とのコミュニケーションにおいて大切なのが、感謝の気持ちを持つこと。『GRATITUDE (グラティチュード) 毎日を好転させる感謝の習慣』(スコット・アラン 著、弓場 隆 訳、ディスカヴァー・トゥエンティワン)の著者も本書において、友人や仕事仲間に感謝することの重要性を強調しています。

  • 『GRATITUDE (グラティチュード) 毎日を好転させる感謝の習慣』(スコット・アラン 著、弓場 隆 訳、ディスカヴァー・トゥエンティワン)

雇い主、上司、部下、同僚、取引先などは、職業人生において重要な存在。だからこそ、次のように感謝の気持ちを伝える必要があるのだと。

いつも感謝の心を持つことを習慣にすれば、感情、思考、振る舞いに大きな変化が起こり、あなたはめざましい進化を遂げることができる。感謝の心には、それぐらい強い力がある。
身の回りのものに感謝することは、不安と苦悩をやわらげ、魂を癒してくれる妙薬だと言っても過言ではない。常に感謝の心をはぐくめば、人生は劇的に変わる。(「はじめに」より)

たとえば具体的な「感謝の方法」としては、次のようなことが挙げられるようです。

・仕事を教えてくれたことに対して上司に感謝の言葉を述べる。支えてくれたことに対して感謝の手紙やメールを送ってもいいし、直接お礼を言ってもいい。
・支えてくれていることに対する感謝の気持ちを同僚に伝える。
・同僚に親切なことをする。たとえば、同僚の仕事を手伝ったり、食事やお茶に誘ったりする。
・取引先への感謝の気持ちを込めてプレゼントを贈る。
(175〜176ページより)

どれも当たり前のことかもしれませんが、だからこそ忘れてしまいがちでもあるはず。原点に立ち戻ってこうしたことを習慣化すれば、いつしか人づきあいに対する苦手意識も薄れていくかもしれません。