悩み多きビジネスパーソン。それぞれの悩みに効くビジネス書を、「書評執筆本数日本一」に認定された、作家・書評家の印南敦史さんに選書していただきます。今回は、「朝が苦手」な人へのビジネス書です。

■今回のお悩み
「朝が苦手で、時間を無駄にしている気がする」(34歳男性/企画関連)


僕は子どものころから朝が苦手で、寝坊するたび「低血圧だから」と言い訳をするようなタイプでした(われながら、いやな子だ)。だから、やがて「将来どんな仕事をしようか」と考えるようになってからも、「なるべく早起きしなくていい仕事がいいなあ」などとふざけたことを(本気で)考えたりしていたのです。

つまり、朝が圧倒的に苦手だったというわけ。

ところが不思議なもので、年齢を重ねていくと、いつしか早起きを心地よく感じるようになっていたんですよね。長く夜型の生活をしていたことの反動なのかもしれませんけれど、いまでは放っておいても早起きできます。それに早起きできると時間を有効に使えるので、とても快適。

いま、日常的にそう実感しているからこそ断言できるのですが、多くの場合、「朝が苦手」は思い込みである可能性が高いと思います。上記の「低血圧だから」がそうであるように、起きたくないから「苦手」という理由をつけているだけのこと。

でも早起きしてみれば、そしてそれを習慣化することができれば、考え方は180度変わるはずです。早起きをして朝の時間を有効活用すれば、間違いなく日々のパフォーマンスは向上するのです。

「そうかもしれないけれど、現実的にそんなことは無理。ただでさえ時間に追われながら毎日を過ごしているのだから」

でも、おそらくそれは間違いで、単に時間の使い方がうまくないだけのこと。その証拠に、朝の時間を有効活用することによって、建設会社の総務経理、大学講師、税理士、時間管理コンサルタント、セミナー講師と5つの仕事をしている人物だっています。

朝の時間を活用するメリット6つ

『僕たちに残されている時間は「朝」しかない。』(石川和男 著、総合法令出版)の著者がその人。

  • 『僕たちに残されている時間は「朝」しかない。』(石川和男 著、総合法令出版)

私自身も、20代後半の毎晩遅くまで残業していたころは、「あと30分、時間があればな〜」と、妄想して過ごしていました。先延ばしにしている問題が片づかないことに、日々ストレスを感じていたのです。(「はじめに」より)

しかし、あるとき朝の時間を活用してみたところ、集中力がみなぎり、フルパワーで活動できることを実感することに。以後は、多くの夢や目標を実現することができるようになったというのです。

ちなみに著者は、朝の時間を活用することのメリットとして以下の6点を挙げています。

メリット(1) 実行したいことを計画通りに行える(41ページより)

朝は上司もいませんし、お客様からの電話が入ることもありません。自分が使いたいことにだけ時間を使えるため、「これをやりたい」と思っていたことも無理なく進められるわけです。

メリット(2) 今まで三日坊主で終わっていたことも継続できる(42ページより)

毎朝、自宅やカフェなどで過ごす時間を「未来へ向けた時間」と位置づければ、三日坊主になってしまう心配もなし。

メリット(3) その他大勢から抜け出すことができる(42ページより)

仮に就業前の30分を「未来のための時間」として使うとしたら、なにもしていない人たちよりも年に182時間も先に進むことになります。それだけの時間を使えるのであれば、その他大勢から抜け出せるのは当然の話。

メリット(4) 人よりも早くから行動することで、優越感に浸れる(42ページより)

人よりも早くから行動する習慣がつけば、就業時刻が始まると同時にロケットスタートを切ることが可能。ギリギリに出社してあたふたしている同僚との差は歴然なので、優越感を味わえるのだとか。

メリット(5) 先々のことを終えることができる(43ページより)

朝時間には効率よく仕事を進められるため、どんどん前倒しでタスクを終えることができるようになるはず。

メリット(6) 人生で一番重要なことを、朝一番で終わらせることができる!(43ページより)

人生でいちばん大切なのは「緊急じゃないけれど重要なこと」、すなわち「自分の未来に影響を及ぼすこと」。そんな大切なことに1日の最初に取り組み、出社前に終わらせてしまえば、可能性は大きく広がるわけです。

このように、苦手だと決めつけてしまいがちな早起きを習慣化すれば、多くのメリットが得られるということです。

早起きして仕事を始めることの有効性

『朝一番の「習慣」が人生を変える──午前中に仕事をすべて片付ける技術』(高井伸夫 著、講談社+α文庫)の著者もまた、朝に仕事をすることの意義を説いています。

  • 『朝一番の「習慣」が人生を変える──午前中に仕事をすべて片付ける技術』(高井伸夫 著、講談社+α文庫)

そればかりか、「自分を高め、日々さらによい仕事をしていく人は、すでに朝7時から1日をスタートさせている」のだとも指摘しています。それは誰にでもできる成功の鉄則であり、そうするだけで圧倒的なアドバンテージを獲得することができるというのです。

ポイントは、朝の時間の密度の濃さ。

朝の一時間の密度は、昼の二時間、三時間分にもなります。ほかの人が出社するころには、半日分近い仕事量をこなしてしまっているのです。(24ページより)

だからこそ、よりよい仕事をしたければ朝の徹底活用に勝るものはないということ。難しそうに思えるかもしれませんが、朝の活用というよりも、1日の生活時間を2時間だけ前にずらすと考えればいいようです。

大脳生理学をはじめ、さまざまな化学的研究の成果からも、人間の体はやはり、日が昇ると同時に活動を開始し、日が沈むと同時に仕事を終えるのがふさわしいようにできていることが明らかになってきています。体内ホルモンの影響もあって、比較すれば、圧倒的に朝の時間のほうが自分の持てる能力を発揮できる。いえ、夜に仕事をするのは、やった気になるだけで、それほど成果は上がらないということがはっきりしているのです。(24ページより)

もちろんそれは、いまさら強調されるまでもない当然の話かもしれません。とはいえ、それを実践できている人が限られているのも事実。

なにより重要なのは実践することなのですから、早起きしていち早く仕事を始めることの有効性を、あらためて考えてみるべきかもしれません。

自然に眠る習慣を身につける

ただし、それはぐっすり眠ることができてこそ実現できることでもあるでしょう。もし眠れないまま朝を迎えてしまったとすれば、早起きの効能を活かせなくても当然だからです。

しかし困ったことに、ぐっすり眠れないと悩んでいる方も決して少なくはないはず。そこで参考にしたいのが、『3分読むだけでグッスリ眠れる本』(弥永英晃 著、秀和システム)。

  • 『3分読むだけでグッスリ眠れる本』(弥永英晃 著、秀和システム)

快眠セラピストとしても活動する著者は本書のことを、「一流大学の科学的な根拠(エビデンス)がある、大人のための読むだけで眠くなる『おやすみ本』です」と説明しています。

つまり、「読んでいるだけで眠くなってくる物語」が厳選された、ちょっと風変わりな一冊なのです。

なお重要なポイントは、「心の潜在意識」にアクセスし、心をリラックスさせて眠くなる仕組みが用いられているという点であるようです。

船から見えている部分の氷山(先端のほんの一部分)=意識
船から見えていない海面下の氷山(大きく隠れた部分)=潜在意識
意識と潜在意識の割合は1:9です。意識は、私たちが意識できる領域の10%しかなく、潜在意識は私たちが意識できない心の領域の90%を占めます。
つまり、私たちが「意識できる意識」は、全体の10%しかないのです。
ですから、10%の意識の力を使って、一生懸命に眠るように努力するのと、心のほとんどを占める90%の潜在意識を使って眠るのと、どちらが効率よく、合理的かというと、潜在意識にアプローチして眠ることです。(22ページより)

収録された数々の物語を通じ、潜在意識にアプローチすれば、心地よく眠ることができるということなのでしょう。したがって、なにより実際に読んでいただくことが大切だと思います。

そして、そうやって自然に眠る習慣を身につけることができれば、やがて苦手だった早起きを克服できるかもしれません。