悩み多きビジネスパーソン。それぞれの悩みに効くビジネス書を、「書評執筆本数日本一」に認定された、作家・書評家の印南敦史さんに選書していただきます。今回は、在宅勤務で運動不足という人のビジネス書です。
■今回のお悩み
「最近は在宅勤務も増えて、家でずっと座りっぱなしなので、運動不足で体がだるいことが多いです」(52歳男性IT関連技術職(ソフトウェア・ネットワーク他))
コロナ禍がきっかけとなって、在宅勤務(テレワーク、リモートワーク)もすっかり浸透した感があります。でも座りっぱなしで動く機会が減るのですから、やはり運動不足になりがちですよね。
その結果、体調になんらかの影響が出たりすることもあるかと思います。急に倒れるようなことこそ少ないとしても、なんとなく不調がたまっていくような、いや〜な感じになったりとか。
ちなみに僕はフリーランス歴が長いので、考えてみるともう20数年前から在宅勤務をしていることになります。そんなこともあって、慢性の肩こりや腰の痛みとは切っても切れない関係(いやな関係だなー)。整形外科のリハビリテーションを利用したりもしていますが、まー、これは完治しないだろうなと半ば諦めてもいます。
だから、なるべく体を動かすようにしてはいるのですけれど、その程度ではたいした効果も望めないはず。というわけで、モヤモヤとした思いを引きずったままで生きているのです。
ダメだなぁ……日ごろから、もっと気を遣わなければいけませんね。
「疲れない基本の座り方」を確認する
さて、ご相談にあるように、在宅勤務の場合は座りっぱなしになることを避けにくいもの。そこで、まずは『疲れないカラダ大図鑑』(夏嶋 隆 著、アスコム)を参考に、「疲れない基本の座り方」を確認してみたいと思います。
著者は「動作解析」の専門家として、多くのアスリートたちのトレーニングをサポートしてきたという実績の持ち主。つまり本書には、そうした活動のなかから得た知見が反映されているわけです。
座り方についてはまず注意すべきは、「肩のラインと腰のラインが平行になっていない座り方」だといいます。
足を組んでいる人に多いそうですが、一方の肩が上がって肩と腰のラインがずれていると、背骨が湾曲して頭の重さを支えきれず、腰痛の危険性が高まるというのです。そのときは楽な状態だったとしても、じわじわと筋肉にダメージが与えられてしまうのでしょう。
椅子に浅く座った女性に多いのが、膝をくっつけて足首を離している「ハの字型」の座り方。この座り方だと足と腰が疲れやすいため、次第に頭が前に出て猫背になってしまいがち。そのため重力のダメージをもろに受け、肩こりや首痛なども起きやすいのだそうです。
一方、椅子に浅く座った男性に多いのが、両膝を離して座り、中央に両足を置いて、拇指急球で支える「O字型」の座り方。こちらも「ハの字型」と同様に膝が鋭角になり、足指のつけ根を追ってしまっているので、ふくらはぎへの負担は強烈なのだとか。
そのためここでは、人体構造的に正しい「疲れない座り方」として次の2パターンが勧められています。
【疲れない座り方1】
背もたれまで深く座る
両膝と両足首をそれぞれくっつける
足を椅子の前に置き、膝の角度を鈍角にする
足の裏全体を地面に置く
(74ページより)
この座り方は、骨格的に女性が向いているそう。足首をくっつけたままなら、足を置く場所は右でも左でもOK。
【疲れない座り方2】
背もたれまで深く座る
両膝と両足首をともに開く
足は椅子の前に置き、膝の角度を鈍角にする
足の裏全体を地面に置く
(74ページより)
こちらは男性向き。偉そうに見える格好かもしれませんが、「疲れない」という視点では最高の座り方だといいます。
どちらの座り方も顔の位置は固定し、上半身は背骨を使って定期的に動かすようにするべき。そうすれば、支持筋への負担を減らすことができるわけです。
筋肉を正しく「しつける」習慣を知る
ところで在宅勤務の場合は、オフィス以上に座り仕事が多くなってしまうかもしれません。とくにパソコンを使ったデスクワークが多いとしたら、肩こりに悩まされるのは当然です。
冒頭でも触れたように、僕にとっても深刻な問題。少しでも肩こりを改善したいところですが、『取れない疲れが一瞬で消える 神ストレッチ』(佐藤 義人 著、KADOKAWA)の著者によれば、首を下に曲げずに済むようにモニターの位置を高く上げることが大切なのだそうです。
ただ、肘が浮いた状態だと腕がきつくなってしまうので、肘が置ける場所をつくることが大切。そうすれば、作業効率が上がることになるということです。ただ、場所がつくれなくても問題はないようです。最初のうちはつらいかもしれませんが、トレーニングだと思っていればそのうち慣れてきて、かえってそのほうが楽になってくるからです。
姿勢が悪いとかっこ悪いですし、筋肉のつき方も変わってくるため体のラインも崩れてしまいます。一方、立ち姿がきれいな人はかっこいいものですし、恒例であったとしても若く見えるものでもあります。
では、どうすればシュッときれいに立って歩くことができるのでしょうか? そのためには、こまめに筋肉を正しく"しつける"ことが重要なのだといいます。
体を鍛えればいいと考えて、1〜2時間筋トレをしたところで、せいぜい24時間の中で1〜2時間しか頑張っていないことになります。
それよりも、寝ている時間を除いた活動時間にこまめに体の筋肉をしつけていくほうがよほどいいトレーニングになります。(24〜25ページより)
筋肉をしつけるとは、使わずに動かなくなった筋肉に動き方を思い出させ、"動ける状態"にすること。具体的には、骨を正しいポジションに戻していくと、その位置をキープできるようになるそうです。
筋肉を1回伸ばし切ったら、また1〜2時間後に伸ばすということを続けていくと、伸びた状態が普通になっていきます。それが筋肉の「しつけ」です。
しつけに要する時間は1回につき1分でもOK。5秒を3回でもOKです。それを1〜2時間おきに毎日続けていって、その状態を普通にするのが重要です。(21ページより)
たとえば普段からあまり腕を動かさずにいると、肩関節に付着している大胸筋が柔軟性を失って筋肉が縮み、肩が前側に引き寄せられて猫背になってしまいます。大胸筋などの胸の筋肉が縮んで動かなくなっていくと、いずれ首や肩のこりが出てくることも。
それを避けるためにも、筋肉をしつける習慣をつけておくべきなのです。
「肉」と「新鮮な野菜」を摂る
現代に生きる私たちは、様々なストレスにさらされて生活をしています。そのストレスを体の中でコントロールする臓器が「副腎」です。副腎はとても小さい臓器ですが、たくさんのホルモンの生産に関わっています。体内の炎症を鎮めたり、血糖値をコントロールしたり、免疫機能を調整したり、血圧や自律神経や体内時計を安定させたり、丈夫な骨を作るための代謝にかかわったりと、生命の維持にダイレクトに関係しています。(「はじめに」より)
こう述べるのは、『医師が教える疲れが抜けない人の食事法』(本間良子、本間龍介 著、祥伝社)の著者。神奈川県川崎市に、日本初の「アドレナルファティーグ(Adrenal fatigue 副腎疲労)外来」を開いた人物です。
ストレスで副腎が疲弊してしまうと、原因不明の疲労や体調不良を引き起こしてしまうことがあるというのです。そこで大切なのは、すべての基本である食事の改善。
副腎がバーンアウト(燃え尽き)状態になっていない、副腎疲労が軽度・中等度の症状の人であれば、食事の改善だけでも大きな成果を上げることができるそうです。
本書ではそのために意識しておきたい「食事15のルール」が紹介されているのですが、トップに登場するのが「3食すべてでタンパク質、脂質を摂る」ことの重要性。
副腎機能が低下している人は、腸の消化・吸収の機能が落ちており、また本来なら朝にたくさん分泌されるコルチゾールが思うように出ないため、朝から元気が出ない人が多いです。そのため、できるだけ朝食を含めたすべての食事で、エネルギー源となる炭水化物のほかに、ホルモンや体の組織の材料となるたんぱく質、脂質を摂ることが大切です。(64ページより)
とくに、ぜひ摂るべきは「肉」と「新鮮な野菜」。肉は鶏や豚、グラスフェッド(牧草飼育)の牛肉、魚は大型魚を避け、味や鰯などの青魚を。また、オメガ3系脂肪酸の一種であるα-リノレン酸を含む亜麻仁油やえごま油を、抗酸化作用のあるフィトケミカルを豊富に含む新鮮な野菜にかけて食べるといいそうです。
座り方、筋肉の調整、そして食事を意識する習慣をつければ、体調はやがて改善していくかもしれません。