進むSNSの細分化

勉強をする中高生向けのノート術「スタディプランナー」が流行した2018年ごろからSNS上に急激に増えた「勉強専用アカウント」が、あきらかに減ってきた。理由は「スタディプラス」「スタディサプリ」など勉強専用のSNSが出現し、学生たちがそちらに流れたためだと思われる。

勉強アカウントを持っていた学生たちはハッシュタグなどの機能を使いSNS上で志を同じくする仲間を探していたのだが、集団がある程度大きくなるとSNSごと独立するというわけだ。この流れは勉強をする中高生に限られず、他の分野でも一般化するのではないだろうか。

文房具メーカーには追い風だが……

さて、文房具の話をすると、上記の動きは悪い話ではない。特定の趣味や志向を持つ人々のクラスタに細分化されるということは、狙いを定めやすいことを意味するからだ。たとえば漠然と「勉強をする人向けにノートを作ろう」と思っても、どういう商品にすべきかはぼんやりしている。だが「大学受験を目指す女子高生向けのノート」まで細分化できれば、紙の質やデザイン、売り方などを絞り込みやすい。

ただし、メーカーの立場から見ると細分化には限界がある。極端な小ロットでは、利益が出る商品が作れないためだ。ということは、細分化の主導権はユーザーが握ることになる。

  • ターゲットを絞り込んだ製品企画が立てやすい反面、細分化しすぎると利益が出づらくなることも

過去の商品が再評価される例も

実際、そのことを示唆するケースが増えている。細分化された、特殊な文房具の使い方をするユーザーが、既存の文具を「再評価」することがあるのだ。

たとえば筆ペンがそう。近年ブームになっている、西洋風書道とでも言うべき「モダンカリグラフィー」の愛好家たちが筆ペンに目を付けたことで、新たな活路を見出したのだ。以前は年賀状を書く年末を中心に売れていた筆ペンが通年売れるようになり、また、モダンカリグラフィー愛好家たちの声に答え、カラーの筆ペンも増えている。

このように、趣味の細分化は既存のアイテムに新しい命を吹き込むことがある。おなじみの文房具が、まったく違う装いで再登場するのを見る機会が増えるかもしれない。