皆様こんにちは、マネックス証券の益嶋です。「目指せ黒帯! 益嶋裕の日本株道場」第6回をお届けいたします。
本コラムでは、「これから投資を始めたい」「投資を始めてみたけれどなかなかうまくいかない」といった方向けに、投資家としてレベルアップするための色々な知識をお伝えしていきます。今月もまずは最近のマーケット動向を簡単にご紹介します。
日本株急落
1月23日に日経平均が24,124円まで上昇するなど年が明けても順調に推移していた日経平均ですが、その後大きく下落しました。日経平均は2月5日に592円安、6日に1,071円安と連日の大幅下落となり、14日には一時21,000円を割り込む場面もありました。
今回の日本株急落の背景には、米国株の急落があります。米国の代表的な株価指数であるニューヨークダウ平均は2月5日に1,175ドル安と史上最大の下げ幅を記録しました。米国の景気は非常に好調なのですが、好調になりすぎていわゆるバブルになるのを防ぐために金融引き締めのペースが早まるのではないかなどの懸念が株安の理由の1つとなりました。
そもそも、ダウ平均は昨年からかなり急激なペースで上昇していましたので、どこかで利益確定売りが出る環境が整っていたというのも大きなポイントです。ちなみに以下のグラフは急落前の2月2日の株価を100として、日経平均とダウ平均の推移を比較したものです。急落のきっかけとなったダウ平均の方が先に戻り、あおりを受けた格好の日経平均はほとんど反発できていません。こういうことは時々あります……。
あまり知られていないけど超重要!「セグメント業績」
では今月も本題に入っていきましょう。皆さんは、「セグメント業績」という言葉を聞いたことがありますか? おそらく投資を始めてまもない方はほとんどの方がご存じないのではと思います。まずはこの言葉の意味をご説明します。
昨今、多くの企業は複数のビジネスを展開しています。例えば筆者が学生時代に5年間アルバイトをしていた牛丼で有名な吉野家ホールディングス(9861)は、本業の「吉野家」だけでなく持ち帰り寿司の「京樽」、低価格うどんの「はなまる」、ステーキのどんを展開する「アークミール」、「海外」、「その他」と展開するビジネスを6つのセグメント(分割されたもの)に分け、業績を発表しています。このようにビジネスごとに分けて発表される業績のことを「セグメント業績」といいます。ちなみに吉野家の直近通期のセグメント業績は以下のとおりです。
上記をご覧いただくと、やはり売上構成率・利益構成率とも本業の「吉野家」の比率が圧倒的に大きくなっています。売上金額の第2位は「京樽」ですが、利益金額は7200万円と微々たるもので、利益金額の2位は「はなまる」の9.3億円となっています。
これを見ただけで、「あっ京樽の売上は大きいけどもしかしてあまりうまくいっていないのかな? 」なんて想像することができますね。このように「セグメント業績」には企業の業績を予想するためのたくさんのヒントが詰まっています。もう1つ、個別企業の例をご紹介します。
ファミリーレストランの「ロイヤルホスト」は多くの方がご存じだと思います。そしてロイヤルホストを運営しているのがロイヤルホールディングス(8179)です。では、実はロイヤルホールディングスが最も利益を稼いでいるのは、外食事業ではないことをご存じでしょうか?以下に示したロイヤルホールディングスのセグメント業績グラフおよび表をご覧ください。
ロイヤルホールディングスのセグメント業績を見ると、利益が最も多いのは黄緑色の線で示された「ホテル」セグメントです。ホテル事業は右肩上がりの線を描いており、継続して成長してきたことがわかります。
一方で水色で示された「外食」セグメントは伸び悩んでいることがわかりますね。ロイヤルホールディングスは「リッチモンドホテル」というブランドでビジネスホテルを展開しています。
近年の訪日外国人観光客の激増などが追い風となりホテル事業は大きく伸びているというわけです。そもそもロイヤルホストを展開している会社がビジネスホテルも手がけており、実はそちらのほうがよりたくさんの利益を稼いでいるというのは意外に思われる方も多いのではないでしょうか?
このように、セグメント業績をチェックすることで企業の意外な一面を知ることができ、それは投資の大切なヒントになることがあります。筆者の開発したマネックス銘柄スカウターならセグメント業績を数年分チェックすることができます。最後までお読みいただきありがとうございました。ではまた次回!
執筆者プロフィール : 益嶋 裕
マネックス証券 マーケット・アナリスト兼インベストメント・アドバイザー
早稲田大学政治経済学部政治学科卒。2008年4月にマネックス証券に入社。2013年からアナリスト業務に従事。2017年8月より現職。現在は「日本株銘柄フォーカス」レポートや日々の国内市況の執筆、各種ウェブコンテンツの作成に携わりながら、オンラインセミナーにも出演中。日本証券アナリスト協会検定会員。
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