皆様こんにちは、マネックス証券の益嶋です。「目指せ黒帯! 益嶋裕の日本株道場」第15回をお届けいたします。本コラムでは、「これから投資を始めたい」「投資を始めてみたけれどなかなかうまくいかない」といった方向けに、投資家としてレベルアップするためのいろいろな知識をお伝えしていきます。今月もまずは最近のマーケット動向を簡単にご紹介します。

2万1,000円台で弱含む日経平均

前回のコラムが掲載された10月29日時点で、日経平均は2万1,149円でした。その後一時的に2万2,500円程度まで反発しましたが、そこからは再び調整基調となり、今月のコラムを書いている11月22日時点で日経平均は2万1,646円となっています。引き続き、米中貿易戦争の激化や、それに伴う米国と中国の景気減速懸念が相場の重荷となっているようです。個人的には、現在は一段の株安に警戒して守備的なポートフォリオを構築しておくべき局面だと考えています。

  • 日経平均の推移 (出典:マネックス証券ウェブサイト)

    日経平均の推移 (出典:マネックス証券ウェブサイト)

投資部門別売買状況とは?

それでは、今月も本題に入っていきましょう。
突然ですが、読者のみなさんは「海外投資家が日本株を5,000億円買い越した」とか「個人投資家は株を売り越している」といったニュースをお聞きになったことはありますか?

実はこれは多くの場合、東京証券取引所が1週間に1度発表している「投資部門別売買状況」という投資主体別の売買データを基に報じられています。投資主体別にどういった投資行動を取ったのかを東京証券取引所が集計し、週次で公表しています。通常は、週の第4営業日の取引終了後に公表されます。

どのような投資部門があるかというと、まず大きく「自己」と「委託」に分かれており、「委託」は「海外投資家」「個人」「信託銀行」「事業法人」「投資信託」などに細かく分けられています。中でも特に注目度が高いのが「海外投資家」です。日本の上場株式の取引全体のうち海外投資家による売買は約7割を占めており、海外投資家の動向がマーケット全体のトレンドに与える影響は非常に大きいため特に注目されているのです。

以下のチャートは、過去10年間の「海外投資家」の売買動向と日経平均の推移を示したものです。

  • 投資部門別売買状況「海外投資家」 (出典:マネックス証券ウェブサイト)

    投資部門別売買状況「海外投資家」 (出典:マネックス証券ウェブサイト)

黒い折れ線グラフが日経平均、棒グラフが赤い場合には海外投資家の「買い越し」、棒グラフが青い場合には「売り越し」をそれぞれ示しています。緑色の線で囲んだ2013年から2014年にかけての時期に日経平均が大きく上昇していますが、この時期に海外投資家は毎月のように買い越しています。

この時期はいわゆる「アベノミクス」が始まった時期で、金融緩和や成長戦略に期待した海外投資家が日本株を大量に買いました。一方でオレンジ色の線で囲んだ2015年半ばから2016年半ばの時期は日経平均が大きく下落していますが、この時期には海外投資家の売り越しが目立っています。この時期は「チャイナ・ショック」と呼ばれ、中国景気が後退するのではという不安や原油価格の大幅下落から世界的に株価が下落しました。

このように海外投資家の売買動向は日本株の値動きに大きく影響するため、常にトレンドをウォッチしておく必要があります。
続いて、「個人投資家」の売買動向と日経平均の値動きをご覧ください。

  • 投資部門別売買状況「個人投資家」 (出典:マネックス証券ウェブサイト)

    投資部門別売買状況「個人投資家」 (出典:マネックス証券ウェブサイト)

2009年から2012年にかけても売り越しが目立つ個人投資家ですが、2013年以降は特にその金額が大きくなっています。時折買い越している場合もありますが、それはほとんど株価が下落している局面です。個人投資家は株価が上昇すると売りにまわり、株価が下落すると買う「逆張り」スタイルの投資を好むと言われますが、投資部門別売買状況を見るとその傾向がはっきりと浮かび上がります。

このように、投資部門別売買状況をウォッチすると投資に役立つさまざまなヒントが得られます。ぜひ参考にしてみてください。

今月も最後までお読みいただきありがとうございました。ではまた次回!

執筆者プロフィール : 益嶋 裕

マネックス証券 マーケット・アナリスト兼インベストメント・アドバイザー

早稲田大学政治経済学部政治学科卒。2008年4月にマネックス証券に入社。2013年からアナリスト業務に従事。2017年8月より現職。現在は「日本株銘柄フォーカス」レポートや日々の国内市況の執筆、各種ウェブコンテンツの作成に携わりながら、オンラインセミナーにも出演中。日本証券アナリスト協会検定会員。
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