稟議書がなかなか通らない……。その原因の一つに、必要な項目が盛り込まれていないことが挙げられます。

稟議書は、読み手となる決裁者に、時間的、精神的負担をかけないよう、論理的かつ、わかりやすく簡潔にまとめることが大事。それには、必要な項目を盛り込んだフォーマットを用意しておくことも大切です。

  • 稟議書が通らず、悩んだことはありませんか?(写真:マイナビニュース)

    稟議書が通らず、悩んだことはありませんか?

そこで、ビジネススキル研修事業の責任者である、リクルートマネジメントソリューションズの河野洋士(こうの・ひろし)氏の監修の下、稟議書の書き方のコツやポイントについて解説していただきました。

稟議書は粗探しされる

稟議書は、できるだけ効率的に、効果的に通すことが重要です。それができるか否かは、個人の成果、そして評価にも直結しているだけでなく、ビジネスのスピードに影響するため、会社の競争力にもつながります。では、どんな稟議書を作成すればスムーズに決裁してもらえるでしょうか。稟議書に必要な項目は大きく6つ。それぞれに書き方のコツがあります。

  • リクルートマネジメントソリューションズ 事業開発部 スキルデザイングループ マネジャー 河野洋士(こうの・ひろし)氏

稟議書に必要な6つの項目

(1)承認事項
(2)目的・背景・理由
(3)エビデンス
(4)費用
(5)リターン・利益
(6)想定されるリスクと対処

書き方のコツ

(1)の承認事項は、何を承認してほしいのかがはっきりわかるよう、具体的に書きましょう。(2)の目的・背景・理由は省かれるか一括りにまとめてられて、要点が分かりにくくなっていることがよくあります。決裁者は、たいていの場合複数います。その全ての人が、あなたのことやあなたの仕事の状況についてよく知っているとは限りません。

つまり、承認事項の前提となる目的・背景・理由が明確でないと、意図は伝わらない。それが、稟議が否認され、手戻りを起こして遅延する一番の要因です。そうした事態を避けるためにも、それぞれを項目立てて、簡潔に分かりやすく書くことが重要です。

(3)のエビデンスは、あると説得力が高まります。数字、お客様の声、起こっていることなどがそれにあたります。(4)の費用、(5)のリターンは、決裁者が最も目を留める項目です。

リスクと対処方法に注意

そして意外と大事なのが、(6)の想定されるリスクと対処です。稟議書は、基本的に粗探しされるものだと思った方がいいでしょう。なぜなら、決裁者は稟議を承認することで責任を背負うことになるからです。

決裁者が注視するのは、承認事項がもたらすプラス要素よりも、それによって発生するリスクやネガティブな影響などのマイナス要素。ですから、決裁者が疑問に思いそうなことや反対しそうなところをあらかじめ想定し、それに対する対処方法を書いておくことが、稟議書をスムーズに通すための大きなポイントになります。

これらを踏まえて書けば、稟議書の質はグッと上がり、遅延や保留、否認されて困ることは減るでしょう。大事なのは、必要な項目を抜け漏れなく、正しい日本語で、簡潔に分かりやすく書くことです。

ただ、これを毎回ゼロから作っていくのは大変ですし、時間のロスも多くなります。また、社内で個々がバラバラに動いていては、知恵や情報は一向に積み上がっていきません。自社のカラーに合わせて使いやすくカスタマイズしたフォーマットを用意しておくことも、稟議を早く通し、事業の実行スピードを上げるためには大切です。

稟議書作成は筋トレ

働き方が変わり、対面でのコミュニケーションの機会が減っている今、稟議書などの文書だけでスピーディーに事業を回していくことは重要視され、実際にも多くなっているのではないでしょうか。

稟議書のゴールは通すこと。そこは、ある意味上司たちとの戦いの場です。ビジネスパーソンとして社会を生き抜く力をつけるための筋トレだと思って、稟議書作成にはそれなりのパワーをかけてほしいと思います。

監修者

河野洋士(こうの・ひろし)
リクルートマネジメントソリューションズ
事業開発部 スキルデザイングループ
マネジャー
米国ビジネススクールにて経営学修士(MBA)を取得。卒業後、大手経営コンサルティング会社を経てリクルートマネジメントソリューションズに入社。営業担当として数々の営業表彰をうけ、そのかたわら、「営業モデルの構築」や「中途入社者の育成モデルの構築」などをプロジェクトとして経験し、大きな成果をあげる。2014年、東日本支社長に就任。2016年4月より現職。