Aさんは、同僚のBさんに対して、とてもストレスを感じていました。Bさんの発言の大半はネガティブなこと。内容は、職場、会社、仕事、周囲の人に対しての悪口ばかり。そして、自分は何も悪くない……と。

口先ばかりで、何も行動に移さないそうです。当たり前ですが、行動しなければ、状況は変わらず、解決もありません。いかがでしょう? あなたの周りにも、Bさんのような人はいませんか?

  • 言い訳ばかりの同僚にストレスを感じることはありますか?(写真:マイナビニュース)

    言い訳ばかりの同僚にストレスを感じることはありますか?

言い訳をして自分を守る

Bさんのような言語パターンのことを心理学では「セルフ・ハンディキャッピング」といいます。

この傾向をもった人は、「今は○○の状況だ。だからできなくても仕方がないのだ」という「言い訳」をすることで、評価が下がることを回避しようとします。その言い訳パターンは大きく3つに分類できます。

自分に対しての言い訳をする

「忙しい」「お金がない」「知り合いがいない」といった言い訳です。ともかく、「自分は、○○という状況だから、仕方がないのだ」という流れをかたくなに変えません。

周囲が「忙しいのなら、仕事の段取りとかできる範囲で、改善できる点はないのか?」といった建設的な投げかけをしても、「確かにそうかもしれないが、自分は○○という状況だから、それはできなくても仕方がない」と更に考え抜いた言い訳をする傾向があり、堂々めぐりになりがちです。

他人のせい・環境のせいにする

「そもそもスケジュール的にムチャだった」、「今の社会情勢では無理がある」、「上司が悪い」、「こんな育て方をした親が悪い」といった言い訳です。

「あの状況のとき、○○しなかったことを後悔している」、「アドバイスをした、あなたが悪い」といった、責任転換、非建設的な「変えられないこと」にやたらとこだわる傾向が見られます。

問題から逃げる

今日中にやらなければいけないことを「納期を勘違いして、明日やろうと考えていた」、「転職の面接日を(本当はそんなことはないのに)間違えて手帳に記載していた」、「最優先でやらねばならない仕事があるのに、全然違うことを始めて『忙しくて、手をつけられる状態ではない』状況を無駄に作る」といった逃避行動を取ります。

「やらねばならないこと」、「やった方がいいこと」を心の奥底では分かっていても、手を付けようとしないのです。

自己肯定感の低さ

身も蓋もない言い方ですが、Bさんのような人に建設的なアドバイスをしても、効果はありません。特に、「チャレンジ!」だとか「挑戦!」といった類のことを(表面的には合わせたとしても)、とても嫌う傾向にあります。

なぜこういうパターンに陥るのか―。

その理由は、「自己肯定感の低さ」にあります。自己肯定感の低い人は、「他者からの評価」を気にします。つまり、人から「あの人は失敗した」「あの人はできなかった」といったマイナスの評価を下されることが怖い。行動しなければ、失敗は起きません(本来は、行動しないということは、不戦敗なのですが……)。

だからこそ、行動しない言い訳をして、無意識に自分を守ろうとするのです。

自己肯定感を高めるには

ではどうしたら良いのか。セルフ・ハンディキャッピングの傾向がある人にできることはただ一つ。行動を変えるように促すのではなく、例えば「あの仕事では、会計処理をがんばってくれていたよね」といった形で、努力や課程を具体的に、褒めてあげることです。

その積み上げで、少しずつ、少しずつ自己肯定感を高めてもらうしかないです。そして、もし、自身にこの傾向がみられる……という自覚があるなら、「自分の欠けているところ」ではなく、「自分の良いところ」を見るように意識してみましょう。


人は欠けているところもあれば、尖っているところもあります。そのイビツな形が個性です。欠けているところにばかりに目を向けるのではなく、尖った部分にも目を向けるように意識付けすると、少しずつ、自分に対する肯定的なイメージが持てるようになるのではないでしょうか。

小さなことで構いません。自分で自分を褒めてあげるようにしましょう。

執筆者プロフィール : 阿部淳一郎氏

ラーニングエンタテイメント 
代表取締役

若手の採用・育成・定着に強い人材開発コンサルタント。早稲田大学教育学部卒。筑波大学大学院(ストレスマネジメント領域)修了。保健学修士。社会人教育を行う東証一部上場企業等を経て2004年に起業。「メンタル不調者を減らし、若者の能力を引き出す」をコンセプトに人材開発業務に従事。大企業から中小・ベンチャー企業、学校、行政まで研修登壇実績は約1500本、コンサルティング実績30社。サンフランシスコ・シリコンバレーへも事業展開中。大学での就職活動領域における講師歴も長い。『これからの教え方の教科書(明日香出版社)』など著書3冊。『NHK』『日経新聞』『読売新聞』『日経アソシエ』『週刊SPA!』など取材実績も多数。