新型コロナウイルス感染症拡大に伴う第1回目の緊急事態宣言が発出されて、約1年半が経ちました。この1年半で、リモートワークが働き方の一つとしてだいぶ認知されてきました。前回は、マネジャーとメンバーにおけるこれからのリモートワークとの付き合い方について説明しました。最終回である今回は、リモートワークとより良い形で付き合っていくために企業ができることを紹介します。

企業として、リモートワークにどのように対応するか

緊急対応としてのリモートワークから、通常運用のリモートワークにしていくにあたって、企業ができることはなんでしょうか。ここからは、リモートマネジメントを助けるしくみ、施策面での2つの支援をご紹介します。それは、以下の2点です。

  1. 働き方の選択肢を増やすこと

  2. メンバーの自律的な活躍を支える各種施策を整えること

これら2つの支援の共通点は、「リモートワークとリモートマネジメントに適した環境を、リモートワーク以外の施策も含めて整えること」です。

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働き方の選択肢を増やす

1つ目の「働き方の選択肢を増やすこと」とはなんでしょうか。リモートワークは、元々、働き方改革に関するさまざまな施策のうち「働く場所の柔軟化」の選択肢の一つでした。

しかし、今はリモートワークに焦点が当たっているために、リモートワーク内だけで最適解を求めることになりがちです。働き方の多様な選択肢としては、次のようなことが挙げられます。

・場所、地理に関すること(モバイルワーク、サテライトオフィス、在宅勤務、ワーケーション、勤務地限定社員など)

・時間に関すること(スーパーフレックスタイム制度、週休3日制、夜だけ勤務社員など)

・所属に関すること(社内インターン、社内兼業など)

・雇用に関すること(副業OK、雇用形態の一本化など)

・仕事との付き合い方に関すること(ジョブ型グレード、3カ月休暇など)

ちなみに、このような選択肢があることで、リモートワークにおいてしばしば耳にする、「私の部署には、職種的にリモートワーク可能なメンバーとそうでないメンバーがいる。リモートワークできないメンバーから不公平だ」という悩みの解消にもつながります。

個人的には職種を理由にリモートワークをできないと決めつけてはほしくないのですが、それでもリモートワーク導入・運用がとても難しい高い職種・職場がある現状は十分に理解できます。

そのときに、リモートワーク以外の働き方で、社員を個として尊重し、メンバーが自律的に働ける支援ができるなら、リモートワークが実施できる人か否かにかかわらず、目的レベルでは実施したいことができるようになります。

メンバーの自律的な活躍を環境面で後押しする

2つ目は、「メンバーの自律的な活躍を支える各種施策を整えること」です。リモートワークはメンバーに自律的な働き方を可能とするとともに、自律的な働き方を求めます。もちろん、メンバーの自律を本人任せにしていてもなかなか進まないですし、マネジャーだけの責任にしてもうまくありません。

例えば、評価内容の変更、マネジメント状況を確認するための360度サーベイなど、「リモート時代に適したマネジメントのあり方ややり方を定義し、定着につなげていくための施策」は、リモートマネジメントを自社の力にすることを助けるでしょう。

また、各マネジャーや自組織の役割や価値を考える場や、リモートワークで求められるマネジメントを学ぶ機会の提供など、「マネジャーにリモートマネジメントの武器を与えるための施策」も奏功するでしょう。マネジャー向け施策だけでなく、メンバー向けの施策や業務プロセスの見直しといった人事施策以外の施策など、多岐にわたる施策が考えられます。

なお、ここまでリモートワーク下でのマネジメントという形で書いてきましたが、実際には、マネジャーやメンバーが現在リモートワークで働いているか否か、どれくらいの頻度で行っているかにかかわらず、「リモートマネジメントを支援する環境整備」は必要になると考えられます。

この1年半で、メンバーが多かれ少なかれリモートワークを経験したことで気づいたことは多いです。また、リモートワークの存在は、コロナ禍以前からみられた、「メンバーの自律」や「個に注目が集まる」といった流れを後押ししました。

こうしてみると、リモートマネジメントとは、リモートワーク下でのマネジメントというだけでなく、リモート時代のマネジメントだといえるでしょう。3回にわたってご紹介した内容が、参考になれば嬉しいです。