数ある投資の中でも、少額から始められ、郵便局や銀行でも買える、といった敷居の低さから、多くの人の注目を集める「投資信託」。老後の資産形成にも有益だと言われていますが、本当に投資信託でお金を増やすことはできるのでしょうか。
この連載では、金融商品の斡旋や販売をしない中立的なお金の学校ファイナンシャルアカデミーが、投資信託の「よくある落とし穴」の中身を分解しながら、着実に資産形成をするためのヒントをお伝えします。
連載8回目の今回は「新品と中古、どっちが正解?」をテーマに良い投資信託選びの観点を深掘りしていきましょう。
投資信託の新しい・古いは「運用期間」でチェック!
突然ですが質問です。あなたは、新品と中古品、同じ金額を払うとしたら、どちらが欲しいですか?「同じ金額なら迷いなく新品でしょ?」と思った人もいれば、「モノによるかな」と思った人もいるでしょう。ですが、この質問に対して、迷いなく新品! と思った人は、投資信託選びでは要注意です。
約6000本もの商品が存在する投資信託。当然ですがこれらの商品は、ある日一斉に発売されたわけではありません。長いものだと50年以上の歴史を持ち、その一方で、今月発売されたばかりの真新しい商品も存在します。
投資信託の世界では、新しい商品が発売されて運用を開始することを「新規設定」と言い、商品の新しさは運用が始まってから現在までの「運用期間」で表現します。前回までに学んだ「どんな方針で運用するのか」「どんな金融商品で運用するのか」とあわせて、今回の「運用期間」も、良い投資信託選びの重要な基準になります。
毎月のように誕生する新しい投資信託の中には、SDGsや気候変動、脱炭素といった、これからの時代を象徴するような魅力的なテーマを掲げた商品も見られます。みなさんの中には「トレンドをキャッチしたこういった商品を選べばきっと成果が出るだろう」と考える人もいるかもしれません。
ですが、安定的に成果を出せる投資信託、という観点から考えると「真新しいもの、運用期間が短いものは選ばないほうがよい」というのが私たちファイナンシャルアカデミーの答え。果たしてその理由は、何なのでしょうか。
運用期間は5年以上、信託期間は無期限がおすすめ
投資信託の世界では、前述した通り、次々と新しい商品が登場するのですが、一方では、運用が終わってしまう商品も多数存在します。運用が終了する理由は大きく2つ。ひとつは、今後いつまで運用されるのかという「信託期間」が始めから5年、10年などと決められている場合。そしてもうひとつが、運用が不調だったり、あまり販売成績が芳しくなかったりして、途中で終了となる場合です。
ではもし、あなたの持っている商品の運用が途中で終了してしまったら、一体どんなことが起こるのでしょうか。
運用が終了する場合、積立などが続けられなくなるのはもちろんのこと「できるだけ長く保有して増やしていきたい!」と思っていたとしても、お金は強制的にあなたに戻されます。これを「償還」と言います。しかも途中で販売を終了するような商品は、往々にして運用成績がイマイチなケースが多いです。そうなると最悪、値を下げた状態でお金が戻ってきてしまいます。
投資信託で資産を大きく増やすためには、複利の力を最大限に活かし、長い時間をかけて増やすことが鉄則。でも、できたてホヤホヤの商品だと、その実力は未知数。本当に今後も続いていく商品なのかがわからず、長い時間をかけて運用できない可能性が高いと言えるのです。
ファイナンシャルアカデミーの「投資信託スクール」の授業では、過去の運用期間は「5年以上」、最低でも「3年以上」は、実績のある商品を選びましょうと具体的に伝えています。また過去の運用期間だけでなく、今後いつまで運用されるのかという「信託期間」についても、できるだけ「無期限」のものを選ぶよう伝えています。この2つの観点で絞り込むだけでも、ポッと出の商品や近い将来、償還になるような商品は除外され、長期で運用されうる商品が残るわけです。
ちなみに、運用期間がすでに5年程度あれば、過去の運用成績からその投資信託の実力を確認することもできます。
リーマンショックやコロナショックのような「○○ショック」と呼ばれるような波乱相場。こういった相場は、5年あれば一度くらい何らかの形で起こっているのですが、その時の値動きを見て「日経平均の落ち込みに比べて、結構持ち堪えることができたんだな」といった具合に、下落相場時の底力を推し量ることができるわけです。
運用期間は、決して長ければ長いほうが良いという単純なものではありませんが、少なくとも期待のルーキーより、修羅場をくぐり抜けてきた中堅・ベテラン選手の方が頼りになるとは言えるでしょう。
さて次回は、良い投資信託の選びに欠かせない「基準価額」について勉強していきましょう。
ファイナンシャルアカデミー
お金の教養を身につけるための「総合マネースクール」。2002年の創立以来、東京校・大阪校・ニューヨーク校・WEB受講を通じて19年間で延べ60万人が、貯蓄や家計管理といった生活に身近なお金から、資産運用、キャリア形成、人生と社会を豊かにするお金の使い方までを学んでいる。現在、全くの初心者でも投資の基礎知識をわかりやすく学べる「株式投資スクール体験セミナー」「投資信託スクール体験セミナー」などを無料提供している。