三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)、三菱UFJ銀行、マネーツリーの3社は、ライフステージ総合金融サービス「エムット」の新サービスとして、「金融」と「ウェルネス(健康管理)」を掛け合わせた機能を、「Moneytree」に追加すると発表した。5月に発表された米Googleとの協業の成果として、Google Health API経由でヘルスケア情報をMoneytreeに取り込み、「健康に即したお金の使い方をしているか」など、金融の観点から健康管理が行えるようになる。
実際のサービスは11月中旬以降に提供するが、11月6日からはキャンペーンも実施して、ウェアラブル端末の「Google Fitbit Air」などを1万人に提供し、サービスの利用につなげたい考えだ。
Googleとの提携で健康データを金融データと掛け合わせる
三菱UFJフィナンシャル・グループが進める「エムット」は、同グループの様々な金融・決済サービスなどを連携させてサービスを提供してきた。三菱UFJ銀行の口座開設数は2025年度に100万口座突破して前年同期比1.5倍に、三菱UFJカードの発行枚数は同100万件規模に達して同1.8倍、三菱UFJ eスマート証券の仲介口座開設数は7.8倍、ウェルスナビ預かり資産残高は2.1兆円まで拡大した。MUFG執行役専務リテール・デジタル事業本部長兼グループCDTOの山本忠司氏は、「成果として現れ始めている」とアピールする。
5月のGoogleとの提携では、リテール領域においてAIエージェント、データマーケティング、金融と非金融といった分野において、利用者が「日常や人生の様々な場面でエムットと自然とつながる世界を目指す」(山本氏)としていた。
エムットは金融サービスではあるが、「利用者の日常や人生とつながる」ためには健康や旅行、買い物といった日々の暮らしの中で継続的にアクセスされるサービスへと進化させる必要があると判断した。
そのためには様々なパートナーとの連携が必要で、非金融領域へサービスを拡大していくことで、ユーザーとの接点を広げていくことを目指し、「第一歩として着目したのがウェルネス」だと山本氏は話す。
山本氏は、内閣府の調査で「健康に関心がある人が7割以上」であり、ウェルネスは人生を通じて継続的に関わるテーマだと指摘。「金融もウェルネスも、日々の小さな積み重ねが重要で、将来の安心やその人らしいよりよい選択につながるという意味で、非常に共通点が多い領域」だと言う。
この「金融×ウェルネス」でMUFGは、フェーズ1から4までの段階を追ってサービスを提供していく。フェーズ1では、まずは金融とウェルネスそれぞれの見える化を図る。Google Health APIと連携することで、ウェルネスデータをMoneytreeアプリ上で確認できるようになる。資産管理サービスであるMoneytree上では、様々な銀行やクレジットカード、証券などの金融データをまとめて表示できるが、ここに歩数や移動距離などのウェルネスデータが追加されることになる。
この段階では、Google Fitbit Airといったウェアラブル端末などで取得された歩数、移動距離、消費カロリー、運動(時間・種別)、睡眠(時間)という限定的なウェルネスデータがMoneytree上で確認できるだけだ。ただ、それでも金融データとウェルネスデータを1つのアプリ内で見える化して確認できるという点が新しい。これは11月中旬にリリースする予定。
フェーズ2では、こうして取得した金融とウェルネスのデータからAIがインサイトを提供する。「家計×ウェルネスによって生まれる新たな気づきを提供」としている。例えばスポーツジムの月額会員になったが運動量が増えていない、というデータが得られれば、会費に対してメリットがないので、1週間に1回から始めてはどうか、といった気づきをAIが指摘してくれる、といった具合だ。
逆に、睡眠が短い日々が続いているとコンビニでの消費が多くなったら、それを指摘する、といったこともあり得る。一人一人の状況にあったAIのインサイトが提供されるようになる見込み。2027年度上期にリリース予定だという。
フェーズ3では、日々の行動に応じてエムットポイントが獲得できるなど、インセンティブを提供する。各種クーポンの提供も想定。こうした施策によって日々の行動を促すほか、エムット経済圏へのユーザーの取り込みも図りたい考えだ。
そしてフェーズ4では、エージェンティックコマースを導入する。これは、AIエージェントが家計やウェルネスデータに基づいて、その人に合った商品やサービスを提案するだけでなく、実際の購入までもサポートする。2028年度のリリースを計画する。日々の金融・決済データで興味関心を把握し、健康状態を踏まえた上での提案をするといった具合に、新たな購買体験を提供したい考えだ。
ただし、AIによる提案を常に受けたいユーザーばかりではないこともあり、必要とするときに必要な範囲でAIが支援する、ユーザー自身が主導権を持つ購買体験を目指すという。こうした4つのフェーズを経て、「金融とウェルネスを起点に、前向きな日常や人生を後押ししていくことを構想している」と山本氏は話す。
山本氏は、5月の提携発表以来、約半年でサービスの提供に至った点について、これまでの金融機関としての開発と比べて速いスピードで実現できたと強調する。この背景には、傘下に収めたマネーツリーのフィンテック企業としての開発力があり、テック企業としてスピーディな開発につながったという。
「これまでなら1~2年かかったかもしれない」と山本氏は話したのに対して、マネーツリーの代表取締役Paul Chapman氏は、「もっと速くできたが、慎重に時間をかけた」としており、そうしたテック企業としてのスピード感で今後も開発に取り組む考えを示す。
Moneytreeは資産管理サービスとして、複数の銀行、証券、カードといった情報を集約して表示する。そこに初めて金融サービス以外としてウェルネスデータが取り込まれる形。
Chapman氏は、記録は一方向だけでは意味になりにくいと指摘。食費が4万円だった、歩数が8000歩だった、というのは、事実ではあるが単なる数字であり、それが本人にとっての意味につながったときに人は動くのだと説明する。
Moneytreeで利用するデータ
例えば「疲れた週ほど夜にコンビニに行っている」という組み合わせがあれば、気づきとして生活を変えることにつながるかもしれない、とChapman氏は話す。
Chapman氏は、繰り返しプライバシーに関して言及。金融データを預かるからこそ重要だとして、プライバシー・バイ・デザインの考え方など、信頼を重要視する姿勢を示す。
今回の連携において、金融機関などから取得したデータはMoneytree上だけで扱われてGoogle側には提供されず、Google Health APIから得たデータはMoneytree上でだけ利用されるので三菱UFJ銀行側にも提供されない。
Google Health API経由で取得するデータも最小限にしており、スマートフォン自体は介さず、Moneytreeのサーバーに取得される形になっているという。
銀行への搭載も検討
今回の連携を記念して、MUFG・三菱UFJ銀行は共同キャンペーンも実施する。応募条件を満たした人の中から抽選で1万人にGoogle Fitbit AirとMoneytreeの有料プラン1年分を提供する。
山本氏は、エムットの機能をこれからもさらに強化させて進化させていく考えを示している。2026年度後半にはエムットバンクを開業する予定で、2027年度には共通ID、エムットポイント、ロイヤリティプログラムを提供する。
今回のウェルネスとの連携は、あくまでMoneytreeとの連携でMoneytree利用者の拡大、エムット経済圏への誘導が狙いだが、今後銀行側のアプリへの連携も検討。それが三菱UFJ銀行なのかエムットバンクなのかは未定というが、テック企業との連携ということで、エムットバンクの方が相性がいいだろう、というのが山本氏の考えだった。
















