スティーヴ・マックイーンが所有した特別なフェラーリ275GTB/4*S NARTスパイダーが出品される!

来る11月、俳優・スティーヴ・マックイーンが新車で乗り、自らの手でメタリックブルーに塗り替えた1967年式フェラーリ275GTB/4*S NARTスパイダーがアメリカ・ニューヨークで開催される、グッディング・クリスティーズのオークションに姿を現す。舞台となるのは、今年初開催となる「レトロモビル・ニューヨーク」だ。マックイーンの没後、長年個人コレクションに収まっていたこの1台が、オークションの場に姿を現すのは今回が初めてとなる。

【画像】マックイーン時代の改造の痕跡をそのまま残す、「唯一無二」のフェラーリ275GTB/4*S NARTスパイダー(写真10点)

275GTB/4*S NARTスパイダーはフェラーリの”正式”モデルではなく、ルイジ・キネッティが営む北米ディーラー向けに生産された限定車である。ルイジ・キネッティはフェラーリ初のル・マン優勝を果たした元レーシングドライバーであり、北米最大規模の正規ディーラーや準ワークスチーム「N.A.R.T.(North American Racing Team)」を率いた人物。

275シリーズには、クーペの275GTBとオープンの275GTSというラインナップが存在していた。しかし1966年、フェラーリ初となる4カムエンジンを積んだクーペ「275GTB/4」が登場した際、それに対応するオープンモデルはラインナップされなかった。

そこでキネッティが275GTB/4の性能を持つオープンカーが欲しいとフェラーリ社に直談判し、カロッツェリア・スカリエッティに架装させて実現した特別注文車がNARTスパイダーである。生産はわずか10台のみ。そもそも275GTB/4自体が高性能かつ希少モデルであるうえ、キネッティ特注モデルであるので275GTB/4*S NARTスパイダーはフェラーリコレクターにとっては垂涎の的。

当該車両は生産6台目(シャシーナンバー10453)で、当初ブルー・セラ(イブニングブルー)で仕上げられた2台のうちの1台だ。1967年9月に完成し、ルイジ・キネッティ・モーターズを経てハリウッド・スポーツカーズからマックイーンの手に渡った。

納車後まもなく、マックイーンは自らダークメタリックブルーへ再塗装し、シートの縫製パターンまで変更するなど随所に手を加えている。パシフィック・コースト・ハイウェイでの事故修復を経て、1971年にJ・デヴィッド・コフのコレクションへ、1986年には現オーナーのもとへと渡った後40年間、そのままの状態で保存されてきた。マッチングナンバーのエンジンとトランスアクスル、オリジナルのスカリエッティ製ボディ、そしてマックイーン時代の改造の痕跡をそのまま残す、まさに「唯一無二」の一台である。

1996年にロックフェラーセンターでのルイ・ヴィトン・クラシックに、2003年にはノーフォークのクライスラー美術館での展覧会に出品されたシャシーナンバー10453だが、オークションに登場するのは今回が初となる。なお、同オークションでは1965年式フェラーリ275GTB(推定225万〜250万ドル)、1963年式フェラーリ250GTルッソ(推定140万〜160万ドル)といったスカリエッティ・ボディの名車も出品予定だ。

このオークションの舞台となるレトロモビル・ニューヨーク(11月19日から22日まで、マンハッタンのジャビッツ・センターで開催)は、フランス・パリで1976年に始まったクラシックカーの祭典「レトロモビル」、初めての海外開催である。本家のレトロモビルはパリのポルト・ド・ヴェルサイユ展示場で毎年開催され、来場者は5日間で12万人を超える。半世紀近い歴史のなかで、フランス国外での開催は一度もなかった。

会場では100年以上にわたる自動車史を彩る希少車両の展示、自動車業界の偉人や物語を掘り下げるキュレーション展示、レストレーションの技を見せるワークショップ、そして格式高いオークションや希少パーツ・オートモビリアのフリーマーケットまで、多彩なプログラムが用意されている。レトロモビルは、コンクール・デレガンスでもレースでもラリーでもクラブミーティングでもなく、コレクター、ディーラー、メーカー、レストアラー、アーティスト、ライフスタイルブランドまでもが一堂に会する”世界一刺激的なポップアップガレージ”。

そんなパリ生まれの祭典が、半世紀の時を経て大西洋を渡る。初舞台におけるオークションの目玉のひとつに伝説のスターが愛した、伝説のシャシーナンバー10453を用意できたグッディング・クリスティーズの手腕には脱帽するしかない。気になる予想落札価格は、1,500万~2,000万ドル(約23億~約31億円)と見積もられている。

文:古賀貴司(自動車王国) Words: Takashi KOGA (carkingdom)

All images copyright and courtesy of Gooding & Company, LLC. Photos by Mathieu Heurtault