![横浜FM MF知念慶 [写真]=金田慎平](index_images/index.jpg)
2025年はJ2降格危機に瀕し、2026年の明治安田J1百年構想リーグでもEAST・7位。最終順位は13位に沈んだオリジナル10の名門・横浜F・マリノス。この1年半でスティーブ・ホランド、パトリック・キスノーボ、大島秀夫と3人の指揮官が采配を振るったが、チーム再建の難しさを色濃く感じさせた。
こうした中、クラブはシドニーFCやオークランドFCを率いていたスティーブ・コリカ監督を招聘。選手時代にサンフレッチェ広島でプレーするなど、Jリーグに精通しているオーストラリア人指揮官は、8月7日の2026/27シーズン開幕の鹿島アントラーズ戦に16歳の三井寺眞、法政大学在学中の松村晃助ら若手を抜擢。最終的には3−4で逆転負けを喫したが、一時は昨季の王者・鹿島を凌駕する迫力を見せ、「今季のF・マリノスは違う」という印象を残すことに成功したのである。
続く清水エスパルス戦で初勝利を挙げ、迎えた本拠地・日産スタジアムでのヴィッセル神戸戦。百年構想リーグ王者を迎えたわけだが、大迫勇也、武藤嘉紀、酒井高徳、権田修一といった日本代表経験者が揃って欠場。相手の戦力低下は間違いなく追い風となった。そのアドバンテージを生かし、F・マリノスは開始早々の9分に先制点を奪う。見る者を驚かせる一撃を浴びせたのは、16歳の三井寺だ。天野純のパスを左足の豪快なボレーで決め切るあたりは、ただ者ではない。若武者の1点がチーム全体に大きな活力を与えてくれた。
早い時間帯のリードを90分間守りつつ、勝利へと導いていくマネジメントは非常に難易度の高いタスク。それを託されたのが、鹿島から加入した知念慶だ。古巣・鹿島との開幕戦で3−1のリードを守り切れず、4−3にひっくり返された苦い経験を脳裏に焼き付けられた。「ピッチ内で起きた問題をみんなで喋りながら改善していった」と力を込める。
「鹿島はみんな頭が揃っていたし、自立している選手が多かったので、選手同士で深く話さなくても分かり合っている部分もありましたけど、今のF・マリノスは経験の少ない選手もいたりする。監督からの指示を待つのではなく、自分たちで主体的に頭を揃えていくように話し合えたのがよかったと思います」と新天地で存在感を高めている知念は言う。自らアクションを起こせる環境をあえて選び、赴いたというのが、今回の移籍だ。2023年から2026年夏までの鹿島在籍3年半は、知念にとって大きな飛躍の期間だった。2024年にチームを率いたランコ・ポポヴィッチ監督からボランチにコンバートされ、手探り状態で新たなポジションにトライした結果、デュエル王に輝き、Jリーグベストイレブンにも選ばれるに至ったのだ。
川崎フロンターレ時代に師事した鬼木達監督が2025年に就任してからはボールの出し入れ、縦パスをつける仕事に積極的にチャレンジ。要所要所で起用されたが、序列的には三竿健斗、樋口雄太より下という苦境が続いた。本人としても「このままではいけない」という危機感が強まっていたのだろう。
そんな時、再建に迫られていたF・マリノスからオファーが届いたのだから、やりがいを感じないはずがない。「鹿島は勝つことが日常になっていましたけど、このチームは勝つためにこれからいろんなことをしないといけないチーム。一勝の重みが違うし、自分自身もそういう気持ちで来ているので、パッションというか、熱量を持ってやらないと勝ち点3が取れない。今はいろんなことにチャレンジしています」と本人も神妙な面持ちで語っていた。
自身のマインドの変化が如実に表れたのが、1−0でリードしていた神戸戦終盤のアクションだ。相手に球際で勝った時には両手を高らかと掲げ、後半からコンビを組んだ喜田拓也がボールを奪った際には背中を力強く叩いて喜びを分かち合ったのだ。本人は「頭に血がのぼってたんで、よく覚えていません」と笑ったが、喜田は「僕らが並んだら絶対にやらせないっていうくらいの気迫は必要だし、僕も彼の熱いところが大好き。隣でやっていて熱い思いを感じるんで、本当に素晴らしい選手が来てくれましたよね」としみじみと話していた。
トリコロールのキャプテンにしてみれば、数年前まで相手FWとして対峙していた選手と強力なボランチコンビを組むことになるとは考えもしなかったはずだ。「本当にサッカーは分からないもんですよね」と喜田自身、冗談交じりに笑ったが、同学年のベテラン2人が力を合わせて、F・マリノスを前向きな方向にけん引しているのは間違いない。喜田の発言からも“再建請負人”知念の加入効果の大きさがよく分かるだろう。
神戸を倒し、序盤3試合は2勝1敗。勝ち点6確保というまずまずのスタートを切っている。だが、今後は天皇杯やYBCルヴァンカップも入ってくるため、過密日程を強いられる。ここまでは3試合同じスタメンで戦い、チーム完成度を引き上げることができたが、今後は幅広い戦力を使いながら柔軟な戦いができるように仕向けていかなければいけない。
「やっぱり下からの突き上げは大事だと思いますし、長いシーズンを見ればケガだったり、コンディションが悪くなったりすることもある。いろんな選手が突き上げて戦っていけるようにしたいです」と話す知念は若い選手たちのサポートにも力を尽くす構えだ。F・マリノスの新リーダーとして異彩を放ち始めた背番号14の今後を、我々は興味深く見守るべきだろう。
取材・文=元川悦子
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