円安や原材料価格の高騰などを背景に、多くの飲食店が人手不足や原価高騰から苦戦を強いられている。そうした中、大手デベロッパーの三井不動産株式会社が、飲食業界の手助けに動き出しているのはご存じだろうか。
三井不動産は2024年、プレミアム冷凍グルメを配送する「mitaseru(ミタセル)」を行う株式会社mitaseru JAPANを設立。その新たな拠点「mitaseru船橋セントラルキッチン」が、千葉県船橋市で7月29日に竣工した。今回は、翌日に開催されたメディア向け内覧ツアーの様子を紹介する。
中小飲食店のレシピを冷凍食品で再現し、冷凍で販売
「mitaseru」では有名飲食店からレシピ提供された料理を専門シェフが手作りし、最新の急速冷凍技術で鮮度を保ったまま配送している。mitaseru JAPANが食材仕入れ・調理・冷凍加工・販売を一括で行い、その売上の一部をレシピ提供店に還元することで、苦境に立つ飲食店や食文化を守ることが目的だ。
今回竣工の新拠点はセントラルキッチン機能と冷凍物流機能の両方を持ち、首都圏のみならずmitaseru全体のフラッグシップとなる。場所はJR京葉線・南船橋駅から徒歩10分ほどの、三井不動産の物流施設「MFLP船橋」の敷地内。壁面の青いアルファベットが目印である。
mitaseru JAPANの代表取締役・松本大輝氏によると、2024年の事業開始以来、mitaseruの会員数は順調に増加しており、2026年度は前年比200%にもなる見込みだ。新拠点では5名のスタッフが調理を担当し、マスク・手袋・帽子・つなぎなどの着用で、異物混入を許さない徹底した衛生管理だ。
提携飲食店はミシュランガイド掲載の超人気店から、知る人ぞ知る穴場店まで数多。三井不動産グループが「東京ミッドタウン」や「コレド室町」などの再開発や、日本橋エリアなどの街づくりを通じて築いてきた、数多くの飲食店とのコネクションが活かされた形だ。参画店舗数もサービス開始時は20店舗、2026年7月時点で57店舗・112商品となり、2030年までに100店舗超えを目指すという。
内覧会では「三代目たいめいけん」のパフォーマンス&試食も
はじめに通されたのは「加熱室」。mitaseruの製品を調理する部屋で、一流の厨房設備や調理器具が部屋全体にそろえられている。ここでは日本橋の有名店「三代目たいめいけん」のオーナーシェフ・茂出木浩司氏によるライブキッチンパフォーマンスが披露された。
三代目たいめいけんは東京・大阪など全国13店舗を展開する人気店。三井不動産と三代目たいめいけんは以前より交流があり、本店のある日本橋地域に貢献したい思いから、チキンライスのレシピを提供したとのこと。mitaseruのチキンライスに被せるオムレツ部分が調理され、溶き卵が茂出木シェフの手でたちまち「ふわとろ半熟」のオムレツに変身する様は、さながら魔法のよう。
次に案内された「充填室」では、作りたての料理を手作業で丁寧・均一に真空パックし、粗熱を取ってブラストチラー(強力な冷風を出す機械)で急速凍結する。中小の飲食店では投資や導入が難しい設備規模でも、一括配備できるのがmitaseruの強みだ。
ここではmitaseru製品の試食会が催され、mitaseruのチキンライスを使用した三代目たいめいけん名物・タンポポオムライスを味わった。オムレツ部分は千葉県産の黄色味が濃い有精卵を使用しており、コクが抜群。卵はトロトロで、チキンライスやケチャップ、黒酢ソースとも絡み合い、格別の味わいだった。
同時に試食したのは「とうふ屋うかい」の新商品、厚揚げ豆腐と牛しぐれ煮。素朴ながら風味豊かで、大豆や和牛の旨みがじわりと染みる。食べて気付いたのは、つけ合わせのほうれん草にシャキシャキした歯ごたえがしっかり残っている点。野菜は普通にチルドすると氷の結晶で組織が破壊され、食感が大きく劣化してしまうことも多い。一部レシピは冷凍向けにチューニングされているが、それを考慮してもmitaseruの高い冷凍技術を感じた。
今後も食文化とライフスタイルのため様々な事業を展開
次の「冷凍保管室」ではマイナス25度の室内で、冷凍商品をケース単位で保管する。内覧時点ではまだ商品を置いていなかったが、そのキャパシティは最大で数千食〜約1万食に及び、今後の需要拡大も見越して広いスペースが設けられている。
最後の「発送センター」では商品を専用ダンボールで包装し、冷凍宅急便で発送する。注文をしてから商品到着までは約1〜2週間。大事なパーティーなどで出す料理をオーダーするときは、日数にやや余裕を持っていた方がいいだろう。
発送センターでは、「mitaseru」の人気商品や新商品も展示されていた。和牛100%ハンバーグ、冷製スープ、担々麺など食欲を誘うものばかり。mitaseruでは冷食の定期便サービスも行っており、「お店でコース料理を食べる体力はないが、お店のような美味しいものは食べたい」といった悩みのある高齢者から好評だ。今後さらに進む高齢化社会にもマッチした事業である。
mitaseru JAPANではフードロス削減と地域支援を目的に「子ども食堂」への支援も開始。三井不動産グループ企業が運営する高齢者向け施設や、MFLP船橋の共用施設「&GATE」内カフェテリアでもmitaseru商品を提供していくとのことだ。「不動産大手が食品業界に進出」というユニークな試みが、将来どのような成果を上げるかが注目される。









