
開幕から勝率.500と、まずまずの成績で推移する埼玉西武ライオンズ。しかし今季の戦いぶりには、数字だけでは測れない変化がある。悪い流れを引きずらず、自ら良い流れを引き寄せる――その“兆し”が、チームに確かな前進をもたらしている。(文・羽根田)
数字以上に見えた“変化”――悪い流れを断ち切る西武
3・4月を終えて、埼玉西武ライオンズは13勝14敗1分。5月2日終了時点では15勝15敗、勝率.500と、数字だけを見ればまずまずの成績と言えるだろう。
だが、今季の西武を語る上では、数字以上の変化がある。私は、「悪い流れを引きずらなくなったこと」だと感じている。
4月10日、県営大宮球場で行われた一戦。9回2死から、守備で絶対的な信頼を誇る源田壮亮の失策で逆転を許し、敗戦を喫した。一昨年や昨季であれば、このようなミスがチーム全体に影を落とし、そのまま引きずることも少なくなかった。
そして、今季の変化を象徴したのが、翌11日の千葉ロッテマリーンズ戦だ。
切り替える力――西武を象徴した源田の第1打席
[caption id="attachment_224793" align="alignnone" width="530"] 埼玉西武ライオンズの源田壮亮【写真:産経新聞社】[/caption]
満員のスタンドの後押しを受け、初回から試合を動かす。源田の左前安打を起点に、渡部聖弥、アレクサンダー・カナリオの適時打で一挙4得点。試合の主導権を握った。
特筆すべきは、この源田の第1打席だ。前日の悔しさを真正面から受け止め、それをプレーで示した。その姿こそが、今季の西武の変化を裏付けるものだった。
切り替える力。それは長いシーズンを戦う上で、欠かすことのできない要素だ。
続く同17日、敵地エスコンフィールHOKKAIDOでの北海道日本ハムファイターズ戦。西武は直前のカードでオリックス・バファローズに3連敗を喫し、流れは決して良いとは言えなかった。
この日も6回終了時点で2対3のビハインド。重い空気を振り払ったのは、新加入の桑原将志が放った値千金の2ラン。その一打が、試合の流れを一気に引き寄せた。
苦しい局面で、誰が流れを変えるのか。既存戦力に加え、新たな力でそれを成し遂げた。この一戦は、今季の西武の戦い方を象徴していた。
そして4月22日、本拠地での福岡ソフトバンクホークス戦。昨季大きく負け越した相手に対し、攻略の糸口が見え始める。
マウンドに立ったのは、エースの髙橋光成。9回126球、8奪三振1失点。3年ぶりの完投勝利で、チームを2カード連続勝ち越しへと導いた。
苦手としていた相手に、エースが投げ勝つ。その事実は、1勝以上の意味を持つ。ナインに「これで勝てる」という確信をもたらす、強いメッセージだった。
流れを引き寄せるチームへ――西武に生まれた確かな前進
振り返れば、この3試合に共通しているのは、「流れを自分たちで引き寄せた」という点にある。
前日の敗戦を断ち切り、新戦力が停滞を打ち破り、エースが1試合を投げ切る。それぞれのピースが噛み合い始めたとき、チームに変化が生まれる。
まだ完成形ではない。だが、確実に前へ進んでいる証でもある。
そして、今季の西武を語る上で欠かせない存在がいる。今季限りで現役を退く栗山巧だ。チームとしても、その姿を見届けるだけで終わらせるつもりはないだろう。1打席でも多く、勝利の瞬間を共にしたい。歓声に包まれながら、ダイヤモンドを一周する姿を。
お立ち台で、あの笑顔を見るために。
その想いこそが、今の西武が進むべき方向を示している。もちろん、課題は残る。得点力不足や詰めの甘さは、これから向き合うべきテーマだ。
それでも、方向性は見えつつある。
春の終わり、スタンドに吹く風はまだ穏やかだ。歓喜に包まれるには、もう少し時間が必要かもしれない。それでも、この2ヶ月で見えた「兆し」は、決して小さなものではない。
やがて訪れる夏、その先の勝負の秋へ。若き獅子たちは、前を向いている。
【著者プロフィール】
羽中田 (hanakata)
ライター。2001年東京都生まれ。幼少期から埼玉西武ライオンズにまっしぐら。2025年5月より埼玉西武ライオンズの、イベント、試合、選手のインタビューを中心にコラムを寄稿。現在、カフェ店員をしながら執筆活動に励み、年間60試合以上を現地へ足を運ぶ。趣味は、炭坑節を聴きながらカフェモカを飲むこと。
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【了】