手が届く伝説|ヤングタイマーズ・デイズ2026、モンレリー

パリ南郊、エソンヌ県に広がるリナ=モンレリーのオートドロムが、1976年から2007年に生産された通称「ヤングタイマー」たちの舞台となる季節が今年もやってきた。4月18・19日の両日、UTACが主催する「ヤングタイマーズ・デイズ2026」が第15回を迎え、約1800台が伝説の高速バンクに集結した。

【画像】1976年から2007年に生産されたヤングタイマーが一堂に!(写真34点)

今回の目玉のひとつが、ヘリテージ機関「ラヴァンチュール・プジョー・シトロエンDS」がもたらした4台のコンペティションカーだ。なかでもひときわ注目を集めたのが、セバスチャン・ローブが実際に駆ったシトロエン・クサラWRC(2005年仕様)である。2001年にWRC規定で競技デビューを果たしたクサラWRCは、2リッター直噴ターボエンジンに電子制御式フロント・センター・リアデフを組み合わせた4WD駆動系を搭載し、車重1230kgというコンパクトなパッケージに凝縮されていた。ミシュランとの密接な開発関係のもと、アスファルトから雪上・砂利路面まで万能性を発揮したこのマシンは、2003年から2005年にかけてシトロエンに3年連続のコンストラクターズ選手権をもたらし、ローブの2004・2005・2006年ドライバーズタイトルにも貢献した。同型車での通算WRC勝利数は32を数え、そのうち28勝がローブの手によるものだ。

午前11時40分、Citroën SportおよびP.H Sportのオリジナルワークスカラーのスーツに身を包んだデイヴィッド・アンリがスターティンググリッドにクサラWRCをつけた。アンリはPH Sportの共同創業者であり、チーム名の「H」が示すその人だ。1990年に盟友ベルナール・ピアラとともに同チームを立ち上げ、自らドライバー席に座ってラリーを戦った男は、引退後もシャランドレイでシトロエンおよびPSA系ヘリテージ車両の管理・走行を専門とするDavid Henry Compétitionを主宰する。エンジンに火が入ると、2リッターターボ特有のブローオフ音が青空に弾け、観客の視線が一斉にバンクへと向く。「S. Loeb」のネームステッカーとドアパネルの「2005 WRC FIA WORLD RALLY」プレートをそのままに走るワークスマシンの生きた姿に、スタンドの歓声が一際高まった。20分間の走行が終わると、TF1やCanal+のF1中継でフランスに知られた自動車ジャーナリスト、ジャン=ルイ・モンセがマイクを手にアンリを囲み、その感触を観衆に伝えた。

同じコースには、デイヴィッド・プラシュルが駆るプジョー406 V6シルエット(2003/2004年仕様)も加わった。FFSAが2001年に創設したシルエットカテゴリー専用に仕立てられたこのマシンは、ソデモ製3リッターV6縦置きエンジン(300CV/7200rpm)をリアミッドに搭載するFR駆動のレーサーで、エリック・エラリーとヤニック・ダルマスが2003・2004年のフランス選手権シルエットクラスを連覇した。展示車両としては1992年製シトロエンZXヴォルカンと2004年仕様のクサラ グループNも並び、シトロエンのラリー参戦史をコンパクトに俯瞰できる構成となった。一方、ラヴァンチュール・シトロエンのブースの棚には「ルヴュ・テクニク・オートモビル(RTA)」が高く積み上げられ、FFSAの「クープ・ド・フランス・デ・ラリー」公式プログラム集とともに販売されていた。ファクトリーヘリテージ機関の売り場としては何とも渋い品揃えだが、ワークスマシンの雄叫びと古びた紙の匂いが共存するこのブースは、シトロエンが歩んだ競技の歴史がいかに分厚く、いかに裾野が広いかを率直に物語っていた。

イベントの走行プログラムは、排気量と産地によって4つのプラトーに整理されていた。フランス車1600cc以下のプラトーには、ルノー5アルピーヌやルノー・トゥインゴRS、プジョー106、シトロエン・サクソVTSといったフランス製コンパクトが揃い踏みし、ホームストレートに設けられた臨時シケインを一列に駆け抜けた。フランス車1600cc超のプラトーには、プジョー205GTIやプジョー309タルボ・スポールのレーシング仕様、ルノー・クリオ・カップ(初代)などが参加。BTCCの名門ウィリアムズ・ツーリングカー・エンジニアリングが手がけたルノー・ラグナ(1998/99年・ネスカフェ・ブレンド37仕様)もその一員で、アラン・メニューやジェイソン・プラトーが操った往年の英国ツーリングカー選手権の記憶を喚起させた。

フランス車以外のプラトーでは、カストロールTOM'Sカラーのトヨタ・スープラ(#36)が圧倒的な存在感を放った。1997年のJGTC GT500クラスでミハエル・クルム/ペドロ・デ・ラ・ロサのコンビが劇的なタイトルを獲得した際のリバリーそのままに、2JZ-GTE型直列6気筒ツインターボの咆哮をバンクに轟かせた。ホンダS2000、日産200SX(S13型・欧州仕様)、アルファ・ロメオ・アルフェッタGTVラリー仕様、アルピーヌA310といった面々が同じコースを走る光景は、ヤングタイマーズ・デイズならではの多様性を体現していた。

参加者の展示エリアにも見どころは尽きなかった。ルノー5ターボ(1980年)の完璧なコンディション個体、アルファ・ロメオ147 GTAのブッソV6を誇らしげに露わにした2台、HTCCに参戦するホンダ初代シビックのレーシング仕様。国籍も世代も入り混じる顔ぶれが、1924年竣工の高速バンクを背景に並んだ。

会場の別コーナーではルノーの歴史保存プロジェクト「ジ・オリジナルズ」がR21デビュー40周年を記念した特別展示を実施。ジャン・ラニョッティゆかりのマシンをはじめ、ルノー21ターボ・ユーロパカップ(1989年)など通常非公開のレアモデルが揃い踏みした。AP(アミカル・ポリス・エ・パトリモワーヌ)による白黒「ピ」カラーのルノー5やルノー9パトカーの展示、SPHPの要人警護仕様ルノー・ヴェルサティスまで会場に加わり、フランスの自動車文化の多様な断面が一堂に集まった。

1976年から2007年という時代が育んだ自動車文化の豊かさと多様さを、リナ=モンレリーの高速バンクが変わらぬ姿で受け止めた2日間だった。

ヤングタイマーズ・デイズ2026

開催日:2026年4月18日(土)・19日(日)

会場:オートドロム・ド・リナ=モンレリー(Autodrome de Linas-Montlhéry)

写真・文:櫻井朋成 Photography and Words: Tomonari SAKURAI